近年は製造現場にIoTやAIを導入し、工場自動化を図るスマートファクトリーが多くの企業で普及しています。そこで本記事ではスマートファクトリー化に欠かせない製造業向けプラットフォームであるFIELD systemを詳しく解説し、価格やメリット、導入事例を紹介します。
FIELD systemとは
製造現場における作業効率・生産性向上を図るために開発された、製造業向けオープンプラットフォームをFIELD systemといいます。FIELD systemにはサーバーのメーカーや製造年度に関係なく接続が可能で、生産設備や製造設備などの細かなデータ管理や共有が可能です。
さらに搭載された人工知能やエッジコンピューティング技術を合成し、機械学習機能を備えることもできます。FIELD systemの主な特徴を下記に表記します。
- 生産ラインや工程全体の最速化を実現
- アプリケーションと現場機械の効率的な連動が可能
- 高いスキルをデジタル化して自動化への組み込みが可能
FIELD systemの価格
FIELD systemを利用する際には、産業オープンミドルウェアの「ORiN」と連携するためコンバータが必要です。代表的なコンバータとして挙げられるのが、FIELD systemとの連携を可能にした、「ORiN on FIELD」(14万9,800円:税抜)です。このコンバータはFIELD system Storeでの購入が可能で、250社以上の各社FA機器から収集したデータとFIELD systemのアプリケーションと連動させることができます。
ほかにもデンソーウェ―ブが開発したORiNを介し、FIELD systemが収集したデータを参照する機能であるORiNゲートウェイが年間29,800円(税抜)で販売されています。下記に両者の機能や価格を簡単に表記するので参考にして下さい。
価格 | 特徴 | |
ORiN on FIELD | 149,800円(税抜) | 250社以上のFA機器との連動が可能 |
ORiNゲートウェイ | 年間29,800円(税抜) | FIELD systemが収集したデータを参照可能 |
FIELD systemを導入する目的
FIELD systemを導入する主な目的として挙げられるのが、工場自動化です、FIELD systemは生産ラインの複雑なシステムを制御するため、各工程を繋いで可視化するIoT化を主な目的としています。
さらにIoT化した制御機能による、効率的なスマートファクトリー化がFIELD systemの真の目的です。現在は国内の大手自動車メーカーや部品加工メーカー、工作機械メーカーなども積極的な導入を進めています。
工場自動化やスマートファクトリーに関してさらに知りたい方は、下記の記事を参考にして下さい。
FIELD systemを導入するメリット
FIELD systemを導入すれば生産ライン全体の作業効率が向上し、生産性を高めることができますが具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからはFIELD systemを導入するメリットを紹介します。
効率的な外部開発を実現できる
効率的な外部開発を実現できるのも、FIELD systemを導入するメリットの1つです。FIELD systemではコンバータ開発者やアプリケーション開発者など、さまざまな人がアプリケーションを自由に開発できます。
またFIELD systemの開発企業である「ファナック」が運営するECサイト「FIELD system Store」では、アプリなどをオンラインで購入することも可能です。オンラインストアで気になるアプリがあれば簡単に購入可能なので、自由なアプリケーション開発が促進されます。
このように共通のプラットフォームを活用し、開発者以外も効率的な外部開発ができるのもFIELD systemの特徴です。
深層学習が可能
深層学習を可能にして、人工知能を活用できるのもFIELD systemのメリットです。深層学習とは抽出したデータから必要な部分のみを自動的に取得し、実際にアウトプットする形式を意味します。
従来開発されていた機械やロボットは人間が設計したルールやプログラムだけに従い、淡々と作業をこなすだけでした。一方の深層学習は自らルールや流れを学習し、熟練者のスキルや取得や工程調整、設備・機械の保全などの自動化を可能にしています。
多様なデータを一元管理できる
FIELD systemを導入すれば、多様なデータの一元管理が可能になります。FIELD systemでは現場の機器とクラウドの中間層であるフォグや、機器とより近いレイヤーを活用して大量のデータ処理を実現しました。
この機能によりリアルタイムな情報処理が可能になり、多様なデータも一元管理可能になる点もメリットです。このような観点からも、FIELD systemはエッジ、フォグ、クラウドの3種類のレイヤーの活用で最速の情報管理を実現し、多様なデータを一元管理しています。
高度な分析を実現
高度な分析を実現できるのも、FIELD systemを導入するメリットの1つです。システム内には高度なAIが搭載されており、生産現場で効率的に活用可能なアプリケーションを外部開発できます。
下記にFIELD systemが搭載している分析機能を表記します。
- 曖昧な事象を明確に分析して明示が可能
- 熟練者のスキル分析とデジタル化を実現
- 人間では困難な多次元の分析が可能
- リアルタイム性の高い分析を実現
高精度の制御システム
FIELD systemを導入すれば、高精度の制御が可能になります。FIELD systemでは前述の高度な分析により各機器を制御し、熟練者の持つ高度なスキルをデジタル化することが可能です。
下記にFIELD systemにおける制御システムの目的を表記します。
- 高い精度で制御する
- 効率的な制御を行う
- 安全的な制御を手掛ける
- 熟練者のような制御を行う
FIELD system導入事例を紹介
現在は自社の生産効率を高め、市場での価値を高めるためにFIELD systemを導入する企業も多く見受けられます。では実際に行われたFIELD system導入事例を紹介します。
株式会社神崎高級工機製作所の事例
ヤンマーのグループ企業で、主に工作機械や歯車、油圧の基盤技術を中心とした製品を開発しているのが株式会社神崎高級工機製作所です。同社は製品生産ラインの停止が頻発しており、その都度リアルタイムで停止理由などを特定できる機能がありませんでした。
その結果として具体的な設備停止理由の特定ができず、定期的な設備停止を余儀なくされていました。そこでFIELD systemを導入し、設備停止理由を即座に把握可能にすることで設備停止時の対応を簡略化して稼働率を70%から90%に向上させました。
また多様な情報管理にも頭を抱えていましたが、FIELD systemの導入により、メーカーが異なるCNCやPCLから有力な情報のみの一元管理に成功した事例です。
ナブテスコ株式会社の事例
ナブテスコ株式会社は、2003年に行われたナブコと帝人製機が油圧機器事業の提携により、企業価値の増大を目的として設立されました。同社は人の手による生産ラインのデータ集計方法に限界を感じ、より効率的なデータ集計方法が無いか模索していました。
また従来までの方法では、生産ラインの稼働データを正確に把握することができず、生産性を高めることができませんでした。そこでFIELD systemを導入してPMA-Monitorのアンドン機能を活用したところ、工場の稼働状況の効率的なデータ集計が実現されました。
さらに工場の稼働データをスピーディーに把握することで、PDCAサイクルの展開も早まって10%の生産性向上データが検出された事例です。
株式会社前田精密製作所の事例
1901年に神戸市にて時計の修理や改造から創業を開始し、現在は精密機械部品や精密小型歯車の製造・販売を手掛けているのが株式会社前田精密製作所です。同社では設備の運転時間のデータ収集を従業員が手作業で行っており、データ取集に時間がかかるうえに正確なデータが検出されませんでした。
また古くてEthernetに接続できない重要な設備もあり、以前からIoT化を進めたいと考えていました。そこでFIELD systemを導入したところ早めのデータ検出が可能になり、管理者が運転時間のデータをスピーディーに把握してダウンタイムが減少しました。
また変圧器を活用して、古い設備のデータをFIELD systemに収集した成功事例です。
ヤンマーパワーテクノロジー株式会社の事例
ヤンマーパワーテクノロジー株式会社は、ヤンマー株式会社エンジン事業本部が2020年4月に社名変更した会社です。同社は設備データの明確な検出ができず、効率的なPDCAサイクルを回すことができませんでした。
また長期的な保全計画を立てるためのスピーディーなデータ検出ができず、効率的なデータ検出方法を模索していました。そこでFIELD systemを導入することで迅速な設備データ検出が実現され、効率的な設備保全計画を立てることが可能になりました。
また明確な設備データの検出も実現され、生産性の向上に成功した事例です。
TRAFIME社の事例
TRAFIME社は世界各国の自動車関連企業に、機械加工部品や精密プレス加工部品を提供しているイタリアの企業です。同社は生産ラインや設備の稼働状況を明確に把握するためにFIELD systemを導入しました。
その結果としてさまざまなアプリケーションでデータを検出・活用が可能になり、効率的な運営を実現しました。
「FIELD system」の課題
近年はアプリストアが産業用IoTとして注目を集めており、FIELD systemもそのIoTの中の1つとして誕生しました。そしてさまざまな業務効率化や問題解決のため、産業用IoTの導入は益々増加しています。
FIELD systemにおいても、その流れに伴うアプリケーションの開発が今後の課題として挙げられるのが現状です。FIELD systemのアプリケーション数はほかの産業用IoTに比べて少なく、今後は協力パートナーやアプリの増大も大きな課題として挙げられます。
「FIELD system」の今後の動向
FIELD systemは2017年のリリース以来、さまざまな製造業で導入され多大な成果を収めてきました。そして今後の動向として挙げられるのが、生産ラインの導入だけでなく企業全体の運営を管理できる機能の導入が求められています。
またFIELD systemを開発したファナック社は「つながる・見える・考える・動かす」などのコンセプトを体現できるアプリの開発を目指しており、今後はさらにユーザーのニーズに沿ったアプリ開発が求められているのが現状です。
FIELD systemで効率的な自動化を実現しよう
現在は多くの企業が自社の生産性向上や設備・生産状況を把握するため、さまざまな産業用IoTの導入を進めているのが現状です。明確に自社の生産状況を把握することができなければ、今後の対策を立案することもできず経営状況の立て直しも困難になります。
そこで画期的な産業用IoTであるFIELD systemを導入すれば、必要なデータのみをスピーディーに検出可能になり、効率的な施策を練ることも可能です。自社の生産性を高めて健全な運営を行うためにも、FIELD systemを導入して効率的な自動化を実現してください。
また下記の記事ではFIELD system同様、生産性を高めるために重要な製造業のDXを解説していますので参考にして下さい。