製造業における品質管理は、企業の競争力と信頼性を左右する重要な要素です。特に工場のDX化が加速する現在、従来の品質管理手法にデジタル技術を組み合わせた高度な品質管理システムが求められています。
本記事では、品質管理の基礎知識から実践的なDX活用事例まで、現場で活用できる内容を解説します。QC7つ道具やPDCAサイクルといった基本手法から、AI外観検査やIoTセンサー活用についても詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてください。
品質管理とは?

品質管理とは、生産工程全体を計画・実行・検証・改善する一連の活動です。ただし広義としては、この一連の活動をQM(Quality Management)とし、このうちの検証にあたる部分をQC(Quality Control:品質管理)と表記するのが一般的です。品質管理(QC)の目的は、商品・サービスの品質が顧客の求める基準を満たしているか、問題ないかを検証し、品質を担保することにあります。
QCとQMの違い
QC(Quality Control)・QM(Quality Management)はどちらも「品質管理」と訳されますが、この2つは、商品の品質を向上し担保するための活動全般を指すQMのうちの、品質をチェックし担保する業務をQCと表記するものと認識いただくと良いでしょう。
QMは、原材料の受入れから製造、検査、出荷までを含む一連の品質向上活動全体を指します。同じく品質管理と訳されることの多い QC(Quality Control)は、QMの枠組みの中で、工程内検査や完成品検査など、製品の品質の検証・統制をおこなうことを指しますが、一般的に品質管理=QCと表記されているケースが多いです。
品質管理の三原則
品質管理を効果的に進めるためには、「工程管理」「品質検証」「品質改善」の三原則を押さえる必要があります。以下では、その三原則について詳しく解説します。
工程管理
工程管理とは、不適合品や不具合が発生する前にリスクを特定し、工程設計や作業手順の標準化、教育訓練、設備点検などを通じて未然に防ぐ取り組みです。予防段階で品質異常を抑えることで、後工程や顧客への影響を最小限にできます。
品質検証
品質検証とは、工程内検査や最終検査、抜き取り検査を通じて、不適合品や品質異常を迅速に発見する活動です。定期的な測定・検査データの分析により、異常の早期発見と正確な工程能力評価を行い、問題品の流出を防ぎます。
品質改善
品質改善とは、検出された不具合の原因を特定し、再発防止策を立案・実行する活動のことをいいます。QC7つ道具などの統計的手法を用いて原因分析を行い、PDCAサイクルを回しながら継続的に品質を向上させます。
品質の5要素とQC7つ道具
品質を多面的に評価し、改善策を立案するには、まず「品質の5M」で製品特性を把握し、「QC7つ道具」でデータを分析・可視化することが重要です。ここでは、品質の5MとQC7つ道具について詳しく見ていきましょう。
品質の5M
5Mとは、製造業で必要なフレームワークのことを指します。製品やサービスの価値を向上させ、顧客満足を高めるために重要な要素です。品質の5Mについて分かりやすく解説します。
- Man(人)
- Machine(機械)
- Material(材料)
- Method(方法)
- Measurement(測定)
①Man(人)
Man(人)とは、製造業全般に携わる作業員のことを指します。作業者のスキル、モチベーション、教育、疲労度、配置、シフトなど人的要因を管理します。製造現場では人間が機械を操作し、材料を扱うため、従業員の技術力や意識の維持管理が品質に大きく影響します。
②Machine(機械)
Machine(機械)とは、製造業で使用する機械のことを指します。設備、工具、機械の性能、メンテナンス、レイアウト、稼働状況など機械的な要因を管理します。定期的なメンテナンスで機械が正常に機能しているか確認し、劣化や故障の早期発見が重要です。
③Material(材料)
Material(材料)とは、製造過程で使用する材料のことです。原材料、部品、調達先、品質、在庫管理、トレーサビリティなど材料要因を把握します。材料の調達から製造、管理に至るまでのプロセスを明確に把握することが品質保持に不可欠です。
④Method(方法)
Method(方法)とは、作業全般のことを指します。作業手順、標準作業、生産形態、マニュアル、プロセスなど方法要因を評価します。製造プロセスを安定化させると、同じ条件下で毎回同じ結果を得ることが可能です。
⑤Measurement(測定)
Measurement(測定)とは、製造の精度を高める方法を指します。検査方法、測定機器、データ取得、品質確認、計測精度などを管理します。品質管理では検査や測定を通じて生産プロセスや製品から不良部分を早期発見することが重要です。
QC7つ道具の概要
品質管理において、データを効果的に分析し、問題解決を図るための基本的なツールがQC7つ道具です。以下、それぞれのツールについて詳しく解説いたします。
| QC7つ道具 | 何がわかるか | 使用する5M要素 |
| ①ヒストグラム | データの分布状況、ばらつき | 機械/測定 |
| ②管理図 | 工程の安定性、異常の兆候 | 機械/測定 |
| ③パレート図 | 要因別発生頻度の優先順位 | 人/機械/材料/方法 |
| ④散布図 | 2変数間の相関関係 | 測定 |
| ⑤特性要因図(フィッシュボーン) | 根本原因の体系的整理 | すべて |
| ⑥チェックシート | 異常発生の記録・発生場所 | 人/方法/測定 |
| ⑦グラフ | 属性別のばらつき・傾向 | 人/機械/方法 |
①ヒストグラム
ヒストグラムは、測定データが存在する範囲をいくつかの区間に分けて度数を棒グラフで表示する手法です。工程のばらつき状態を視覚的に把握するために使用され、データの分布の特徴を明確に示します。
②管理図
管理図は、時間の経過とともに測定された工程の特性値をプロットし、工程の安定性とばらつきを監視するツールです。製造工程が統計的に管理された状態にあるかを判断する基本的な手法です。
③パレート図
パレート図は、問題の発生度合いや原因を多い順に棒グラフで表示し、累積割合を折れ線グラフで重ねて表現したものです。重要な問題を特定して改善の優先順位を決定するために使用されます。
④散布図
散布図は、対になった2つの特性値を横軸(x)と縦軸(y)にプロットして作成する図です。2つの変数間の相関関係を視覚的に把握し、因果関係の存在を探るために使用されます。
⑤特性要因図(フィッシュボーン)
特性要因図は、問題(特性)に対する原因(要因)を魚の骨のような図形で体系的に整理する手法です。問題の根本的な原因を漏れなく、分析するために使用されます。チーム全体での原因究明に有効で、見落としがちな要因の発見に役立ちます。
⑥チェックシート
チェックシートは、特定の情報やデータを効率的に収集・記録するための用紙や表です。誰でも簡単にデータを収集でき、後の分析活動の基盤となる重要なツールです。
⑦グラフ
グラフは、データの傾向や変化を視覚的に表現する基本的なツールです。時系列特性や数値の大小関係を把握し、データの特徴を明確に示すために使用されます。
品質管理に求められるスキルと適性

品質管理の仕事は、検査だけではなく、データを分析、改善策を導きだし、実行することが求められます。ここでは、品質管理に求められるスキルや適性を解説します。
- 品質管理に向いている人の特徴
- 必要なスキルセット
- 資格取得ガイド
品質管理に向いている人の特徴
品質管理担当者には、データや現場の状況を的確に分析し、問題の根本原因を論理的に導き出す能力が求められます。
また、製造や設計、購買、出荷など、多くの部署と協力していくので、高いコミュニケーション力も必要です。問題解決や改善を継続的に行うために、粘り強く取り組む意欲や忍耐力も求められます。
必要なスキルセット
以下の表は、品質管理を行うために必要なスキルと、それを身につけるのにかかるおおよその期間、そしてスキルの具体的な内容を示しています。
| スキル | 取得期間 | スキルの内容 |
| 統計・データ分析 | 3~6ヶ月 | QC7つ道具の使い方、管理図やヒストグラムの作成、統計ソフトの操作能力 |
| 品質規格・標準知識 | 1~2ヶ月 | ISO9001などの品質マネジメント規格やJIS規格、社内規定の理解 |
| 問題解決の手法 | 2~4ヶ月 | QCストーリー、5W1H、特性要因図などを活用した原因分析の方法 |
| IT活用能力 | 3~6ヶ月 | IoTセンサー設定、品質管理システム、BIツールの操作・活用 |
下記では、loTのメリットや具体例についてまとめているので、ぜひ参考にしてください。
品質管理スキルの証明・スキルアップができる資格
品質管理の専門性を高め、キャリアアップを図るうえで有効な資格を紹介します。各資格は実務で活かせる知識とスキルを体系的に学べるため、現場での信頼性向上や昇進にも役立ちます。
品質管理検定(QC検定)
品質管理検定は、品質管理の基礎から統計的手法まで幅広く学べる民間検定で、3級から1級までの級別試験があります。
3級では品質管理の基本用語やQC7つ道具の理解、2級では管理図やパレート図などの実践手法、1級では統計学や品質工学を用いた高度な分析力が問われます。合格を通じて品質管理に必要な理論と実践力を証明できます。
ISO内部監査員
ISO内部監査員は、ISO9001などの品質マネジメントシステムが規格要求を満たしているかを社内で監査する役割を担います。内部監査の計画立案から監査実施、報告書作成、是正措置フォローまで一連のプロセスを学び、組織の品質活動を客観的に評価・改善する能力を身につけられます。
その他関連資格
品質管理の業務領域をさらに広げるためには、以下の資格も有効です。
| 資格名 | 主な効果・学習内容 |
| 統計検定 | データ分析力を客観的に証明し、統計的手法の理解を深めます |
| 品質保証技術者 | 製品の信頼性評価や試験設計手法を体系的に学べる資格です |
| 安全衛生管理者 | 品質と安全性を両立させる現場運営能力を強化し、法令遵守を含む管理体制を構築します |
品質管理の実践とDX化

品質管理を現場で確実に機能させ、さらにDXを通じて高度化するには、従来の手法をデジタル技術と組み合わせて運用することが重要です。ここでは、PDCAサイクルによる継続的改善の進め方と、工場DXが実現する新たな品質管理手法を紹介します。
- PDCAサイクルによる継続的改善
- 工場DXで実現する品質管理
PDCAサイクルによる継続的改善
PDCAサイクルは、品質管理における継続的改善の基本フレームワークです。PDCAサイクルについて詳しく解説します。
- 計画(Plan)
- 実行(Do)
- 評価(Check)
- 改善(Action)
①計画(Plan)
品質目標を設定し、不適合発生のリスクや改善ポイントを洗い出します。データ分析やQC7つ道具を活用して重点課題を明確化し、具体的な対策案を立案します。
②実行(Do)
計画した対策を工程に適用します。作業手順書やチェックリストを整備し、作業者教育を徹底することで、標準化された品質管理活動を実行します。
③評価(Check)
対策実施後の工程データや検査結果を集計・分析し、目標達成度や効果を検証します。管理図やパレート図などで可視化し、問題点や改善余地を特定します。
④改善(Action)
評価結果をもとに、必要に応じて手順や設備、教育内容を見直します。改善策を標準作業に組み込み、次のPDCAサイクルへとつなげます。
工場DXで実現する品質管理
IoTやAIを活用したDX技術は、リアルタイム監視と高度なデータ分析を可能にし、品質管理を次のステージへと導きます。
- IoT・センサーによるリアルタイム監視
- AI画像検査の導入事例
- データ一元管理と可視化プラットフォーム
①IoT・センサーによるリアルタイム監視
各工程や設備に温度・振動・圧力センサーを設置し、稼働状況や環境データをリアルタイムで収集します。異常予兆を早期に検出し、即時アラートで迅速な対処を実現します。
②AI画像検査の導入事例
高解像度カメラとAIアルゴリズムを組み合わせ、外観検査を自動化させます。人の目では見落としがちな微細なキズや欠陥も高精度で検出し、検査時間の短縮と品質安定性の両立を図ります。
③データ一元管理と可視化プラットフォーム
生産・検査・保守など複数システムのデータをクラウド上に統合し、ソフトウェアを利用して可視化させます。工程ごとの品質指標をリアルタイムで把握でき、経営層から現場まで一貫した意思決定を支援します。
下記では向上にAIを導入するメリットについて紹介しています。ぜひ参考にしてください。
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品質管理についてのまとめ
品質管理は、基礎手法からDX技術までを組み合わせることで、製品品質の安定化と継続的な改善を実現します。
QC7つ道具やPDCAサイクルを活用し、IoT・AIによるリアルタイム監視やデータ一元管理で異常をすぐに検出可能です。現場とデジタル技術を融合させ、価値創造につながる品質管理を目指しましょう。