日本の工場では生産性の低下や業務効率の改善などが課題となっています。これらの課題を解決する手段として注目されているのがloT化です。あらゆるモノをインターネットで繋ぐことでデータの収集が容易になり、課題の解決へと導きます。
しかし、コストや導入リソースの点からloT化に踏み込めない方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、工場のloT化とは・メリットや成功へのポイントを詳しく解説します。工場のloT化を検討している方・課題解決に悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。
工場のloT化とは?
loTとは、身の回りにあるモノがインターネットに繋がることを指します。そして工場のloT化とは、工場の機械や設備にloT機能を持たせることで工場に人手がいなくても様々な業務の自動化を実現しながら、生産性の向上や業務の効率化を目指す取り組みです。
また、工場のloT化は設備や作業者にセンサーを取り付けることでできる工場の「見える化」を実現します。
近年注目を集めているスマート工場やスマートファクトリーを実現するために工場のloT化は必須となり、工場におけるあらゆる業務の効率化や改革を実現できるでしょう。
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loTとAIの違いとは?
loTとAIは言葉自体は違うものの、同じ意味として捉えている方もいるのではないでしょうか?AIとloTの定義については以下の表を参照ください。
総称 | 特徴 | |
loT | モノのインターネット | ・ネットワークで接続された電子機器 ・自律的な行動はできない ・搭載されたセンサーをインターネットを通じて送受信でき、活躍の幅が広がる |
AI | 人工知能 | ・人間の知識を模倣し、学習や理解などの能力を持つ ・自律的な行動が可能 ・学習をすればするほど精度が向上する |
loTとAIはそれぞれが違う特徴を持ちますが、連携をさせることで大きな力を発揮するとして近年はloTとAIの同時導入が進んでいます。
例えば、loTセンサーによる設備のデータを収集を行い、AIで分析を行うことができれば生産効率の向上が実現します。
近年では、loTによる管理もAIによって制御することも可能であり様々な現場で活躍の幅が広がりつつあります。
日本の工場における課題
工場における課題は年々顕在化しており、特に深刻化している課題として挙げられるのが以下の3つです。
- 人手不足
- 国際競争力の低下
- 技術継承問題
人手不足
日本全体における問題として深刻化している人手不足は、少子高齢化が加速する現代の日本で早急な解決は難しいとされています。
特に製造業における人手不足は顕著であり、34歳以下の若年就業者が20年間で約121万人減少しています。
人手不足の状態が続けば、労働環境の悪化・離職率の増加など更に負のサイクルを引き起こすでしょう。根本的な解決の手段が見つからない人手不足問題は、今後別の観点からアプローチしていくことが求められます。
国際競争力の低下
安い人件費で大量生産ができる新興国の出現により、日本の競争力は低下傾向にあります。以前は高品質・高性能な製品で世界の市場でも戦えていましたが、日本では人件費をはじめとする問題が浮き彫りになってくることで生産性や業務の効率化が低下しており、競争に太刀打ちできなくなっているのです。
日本の技術力は優位性を保ってはいますが、今後世界の企業と戦っていくためには、コストをかけずに生産性を向上させるのかが日本の工場における課題と言えるでしょう。
技術継承問題
日本は世界にも負けない技術を有し、成長してきましたがこの技術力を低下させる技術継承が大きな問題となっています。
技術継承問題は人手不足問題が大きな要因といえます。技術を継承したくてもそもそも後継者がいなければ意味がありません。そして技術を持った人間が大企業などに転職することで、技術者がいる企業に偏りが生じ中小企業での技術継承が難しくなっているのです。
こうした技術の偏りは一部の工場でしか生産性を上げることができず、日本全体の工場でみると技術力の低下は顕著になっていくでしょう。
工場をloT化するメリット
ここからは工場をloT化するメリットを3点紹介します。
- 故障やトラブルにおける対応
- ノウハウの蓄積による生産性向上
- 作業工数削減による従業員の負担軽減
また、loTと比較・連携の多いAIを工場に導入する記事も合わせてご覧ください。
年々AIに対する注目度が高まっており、製造業においても「品質の向上」や「業務の自動化」を行うために多くの企業がAIの導入を進めています。 競合他社が続々と工場にAIを導入しているのであれば、業務で遅れをとらないためにも自社でAIの導入を検[…]
故障やトラブルにおける対応
工場をloT化することで、製造機械やトラブルにおける対応を迅速に行うことが可能になります。
工場は24時間稼働していることもあり、機械や設備の老朽化による故障は少なくありません。また、交代制で従業員が出勤していても常に設備全体を確認しておくことは難しいといえます。
しかし、loTセンサーを使用すれば24時間見張ることが可能であり故障やトラブルが起これば登録しているデバイスなどに通知を送る設定も可能です。生産性を落とすことなく稼働させることができます。
ノウハウの蓄積による生産性向上
工場におけるloT化で特に注目を集めているのが「データの収集」です。
日々の生産性・業務効率などデータを収集し分析・改善を行うことで生産性の向上が可能になります。従来は生産設備に表示される計器類の指標を従業員が確認・記録を行いますが、工数がかなりかかるうえにノウハウの蓄積に時間がかかり生産性の向上に時間が必要でした。
loTセンサーによりデータ収集を常に行いパソコンに記録した情報を送信、AIによる分析を行えば一連の工数を削減できるだけでなく、これまでデータ収集に配置していた人材のリソース確保も可能になります。
作業工数削減による従業員の負担軽減
工場における人材不足は少なからず働いている従業員への負担を大きくすることになります。特に労働時間の超過は製造業に限らず多くの現場で問題になっています。労働時間の超過は非効率的であるとされ、従業員の負担になり疲労を溜めてしまい、生産性の低下・離職率の増加を招きます。
工場のloT化は従業員の負担を0にすることはできませんが、loTで代替できる業務のリソースは削減することが可能です。
工場をloT化するデメリット
工場をloT化する際はメリットと同時にデメリットも存在します。ここでは以下3つのデメリットを紹介します。
- 設備費用がかかる
- セキュリティ強化の対策
- loT化に精通する人材不足
設備費用がかかる
loTを導入するには初期費用をはじめ、保守・運用費、loTを管理する従業員の人件費など発生します。工場の規模やloTの性能により値段は変わってきますが、大規模になれば数億円と費用がかかることもあります。
設備費用を抑えるのであれば、loTセンサーだけの設置を行う企業もありますが、用途や導入目的によっては全く効果がないケースもあります。loTを導入する際は費用対効果を十分に精査することが重要です。
セキュリティ強化の対策
loTを導入するうえで、セキュリティの対策は必須と言えます。
loTはインターネットを介して用いるため、セキュリティが低下することでサイバー攻撃を受ける可能性も0ではありません。サイバー攻撃を受けることで設備の機能停止や自社・顧客情報の流出の恐れもあります。顧客情報の流出は会社の信用が落ちるだけでなく、倒産の危険性も否定できません。
工場をloT化する際は従来使用していた機器を整備し、セキュリティ対策を万全に行いましょう。
loT化に精通する人材不足
loT化を行うためには、loTの保守・運用ができる人材を配置しなければいけません。
loTも時には故障やトラブルを起こすこともあり、すぐに対応できる人材を配置していなければ工場全体で稼働が止まってしまいます。
また、loT化に精通する人がいなければ外部に委託することも可能ですが、委託料などそれなりのコストがかかるでしょう。
社内にloTに精通する人がいない場合は、社内で教育を行うのか・外部に委託するのかを十分に検討しましょう。
工場のloT化を成功させるポイント
工場のloT化は導入をしても、効果的に使用できなければ意味がありません。そこで、工場のloT化を成功させるポイントを2つ紹介します。
- 課題・目的を明確にする
- スモールスタートを意識する
課題・目的を明確にする
工場のloT化を成功させるには、工場の課題・導入する目的を明確にしましょう。工場内の各設備・製造機器の稼働状況・在庫状況・従業員の業務負担度などを調べます。
調査した問題をloTでどう解決していくのかを明確にします。例えば「従業員の負担が全体的に大きい」という問題が見つかった場合には、どの業務を削減できれば従業員の負担を軽減できるのか精査します。精査した業務をもとにloTで解決することができるのかを確認し、できるのであれば導入に向けて費用対効果など確認していきます。
「他の企業が成功しているから」といった理由・目的がなくloTを導入することは失敗へと繋がるため、避けましょう。
スモールスタートを意識する
工場のloT化で失敗する要因として、初めから設備全体をloT化することが挙げられます。loT化するときは一部の設備や機器で検証を行い、なれてきたらloT化の規模を大きくしていきましょう。
初めから設備全体に導入すると、「トラブルが発生した時に適切な対処ができない」「収集するデータが多すぎて従業員の負担を増やしている」など問題が発生します。
優先的に解決したい問題・設備エラーが多いなど順位をつけて順次導入を行っていきましょう。
工場のloT化は必須になる
loTは多くの工場で導入が進んでおり、いずれは工場のloT化が必須になってくるでしょう。なぜなら、市場の競争が激化していけばloT化による生産性向上や業務の効率化で企業間に差が出てくるためです。
また、自社でもloT化を検討しているが「導入方法がわからない」「教育体制が整っていない」など悩みを抱える方もいるのではないでしょうか?
loTに関する基礎知識から工場のloT化を詳しく学びたいという方はセミナー受講を検討してみてもいいかもしれません。
