近年、急速な発展を遂げているAIは人々の生活を豊かにする一方で、人間より効率良く業務ができるとして仕事を奪われる脅威となる存在になっています。その1つがCADオペレーターです。
実際にCAD操作には単純作業もあるため代替される候補の1つにあがっていますが、単純作業だけでなくコミュニケーション能力や創造力も必要になります。本当にCADオペレーターはAIによって仕事を奪われるのでしょうか?
本記事ではCADオペレーターの将来性やAIに仕事を奪われないためにできることを詳しく解説します。
CADオペレーターとは
CADとは「Computer-Aided Design(コンピューター支援設計)」の略称です。コンピューターを使用して設計・デザインを行います。
まずはCADオペレーターの仕事内容や役割について紹介します。
主な仕事内容
CADオペレーターは設計士やデザイナーの指示を受けCADを操作して、建設・土木・機械・電気製品などの図面を作成します。一般的に設計業務の補助を行い、自ら設計をすることはありません。
主な仕事内容は、CAD図面をコンピュータで編集・修正・トレースなどを行います。CADを操作できるだけでなく図面を見て理解したり、設計士やデザイナーの指示を聞き、的確に作業を行なう能力が求められます。
あらゆる「ものづくり」の現場で必要とされるCADオペレーターの多くは建設業や製造業に従事しています。
CADオペレーターの役割
CADオペレーターは設計士と混同されることもありますが、役割が異なります。設計士や建築物や機械の仕様を設計し、CADオペレーターはその設計図を整える役割を担っています。
能力やスキルが高いCADオペレーターは設計士と設計の仕様を考えたり、改善の提案を行なうこともあります。CADオペレーターの役割はあくまでも設計の補助ですが、建築物や機械に関する専門的な知識を学ぶことで、設計士やデザイナーへキャリアアップを目指す方もいます。
AIの発展でCADオペレーターの仕事はなくなる?
AIの発展でCADオペレーターの仕事がなくなる確率は低いでしょう。ただし、分担して業務を行なう可能性は高いと言えます。
AIは創造性や協調性が必要ない定型業務を得意としています。そのため、図面作成やトレース作業はAIで代替できる可能性が高いと言えます。
一方で、CADオペレーターは設計士からの口頭での指示や急な設計変更に対応するケースもあります。AIは人間の気持ちや意図を汲み取って反映する能力は備えていません。こういった作業はまだまだ人間がやるべきです。
昨今のCADオペレーターはCAD操作できるだけでは、生き残っていくことが難しく需要も減少傾向になります。CADオペレーターが生き残っていくためにはCAD操作プラスアルファの能力やスキルを身につける必要があります。
AIができるCADオペレーター業務
AIに代替できるCADオペレーターの業務について以下2点を解説します。
- 図面修正
- トレース作業
図面修正
図面は一度入力して終わりではありません。制作する建築物や機械の精度を上げるために何度も図面の微修正を行なっていきます。こうした図面の修正はAIによっても十分対応が可能です。
もちろん、大きな修正内容や急な図面の変更においてAIは対応できません。今後のAIの発展次第では図面の大幅な修正にも対応できると予測されています。
トレース作業
設計士やデザイナーが手書きで描いた設計図を2DCADや3DCADに敷き写すトレース作業もAIによって代替できる業務と言われています。図面修正やトレース作業はコミュニケーションが必要になるものの、現代のAIが間取り図をもとにトレース作業をすることは実際に可能です。
トレース作業がすぐに不要となることはありませんが、将来的にはAIに代替される可能性が高いでしょう。
AIができないCADオペレーター業務
ここからはAIに代替できないCADオペレーターの業務について解説します。
設計作業
設計作業は「創造性」や他者のイメージを的確に汲み取る「コミュニケーション能力」が必要な業務であり、AIに代替される可能性は低いと言えます。
設計作業は何度も綿密な打ち合わせや交渉を行い、環境などを配慮して設計作業を行います。正確な設計作業をするには細かい緻密な作業ができる能力が必要です。
同じものを何個も大量に作成するのであればAIでも十分に可能ですが、1つ1つの条件が異なる設計作業はパターン化ができず人間が行なう方が効率が良いと言えます。
AIが流行る中CADオペレーターとして生き残るために必要なスキル
CADオペレーターとして生き残るためには、さらに能力やスキルを磨き身につける必要があります。ここでは以下3点を解説します。
- 設計力を磨く
- AIの分析を行う
- 3次元CADの知識を身につける
設計力を磨く
前述した通りAIは過去のデータや情報を参考に設計をすることは可能ですが、前例のない構成などは設計できません。CADオペレーターの中には図面の修正やトレース作業だけを担う方もいますが、設計もこなすCADオペレーターは多くありません。
CAD設計のスキルは難易度が高く独学ではハードルが高いですが、専門学校や講座で学習をすれば十分身につけることができるスキルです。
AIの分析を行う
CADオペレーターとして生き残っていくうえでAIの分析は必須と言えます。AIの得意・不得意な業務を見極め不得意な業務のスキルを磨いていきましょう。
例えば、AIは膨大なデータを管理することに長けています。そのため過去の設計をデータから抜き取り図面に書き起こすことや単純作業の正確性やスピードはAIに勝つことは難しいと言えます。一方で、AIはこれまでの事例にない新しいものを作り出すことはできません。
革新的なアイデアや斬新な発想は人間でないとできません。ただ技術力を磨くだけでなく日常の生活においてもアンテナを張っておき自身の感性を磨きましょう。
3次元CADの知識を身につける
3次元CADは3DCADとも呼ばれ、紙で行なっていた2次元図面をコンピュータ上で3次元に拡張したものです。XYZ軸を基準とした立体的なモデルを作成し製図を行います。
3次元CADは複雑であることからAIによって代替が難しいとされています。今後CADオペレーターとして生き残っていくためには3次元CADのスキルを身につけることが重要です。
3次元CADのスキルを身につけたいという方は下記サービスの受講を検討してみてはいがでしょうか。
AIが流行る中CADオペレータで生き残るために必要な資格
CADオペレータとして生き残るためにはスキルを身につけるだけでなく、自身のスキルを証明する資格を取得することも重要です。
ここからは特に取得しておきたい資格を4つ紹介します。
対象 | |
3次元CAD利用技術者試験 | 2級:誰でも受験可能 準1級:2級合格が必須 1級:2級合格が必須 |
機械・プラント製図技能検定試験 | 3級:初級技能者程度 2級:中級技能者程度 1級:上級技能者程度 特級:管理者または監督者程度 |
3次元設計能力検定 | CADに関する知識があれば誰でも可能 |
CADデザインマスター認定試験 | CADに関する知識があれば誰でも可能 |
3次元CAD利用技術者試験
3次元CAD利用技術者試験は、一般社団法人コンピュータ教育振興協会が主催するCADの検定試験です。3次元CADを利用する知識や技能を証明することができます。
難易度別に2級・準1級・1級があり、準1級と1級を受けるためには2級を合格しておく必要があります。また、2次元CAD利用技術者試験もありますがAIによって代替される可能性があるため、3次元の取得がおすすめです。
機械・プラント製図技能検定試験
機械・プラント製図技能検定試験はJIS規格に基づいて図面を作成する能力を証明できる検定です。国家資格でもあるため、CAD資格の中でも特に取得しておきたいと言えます。
また、難易度は3級〜1級までがあり3級は誰でも受験可能ですが、2級は2年以上の実務経験、1級は7年以上の実務経験が必要です。レベルの高い試験ではありますが取得することでCADオペレーターとしての価値を十分に示すことができます。
3次元設計能力検定
3次元設計能力検定は、特定非営利法人3次元設計能力検定協会が主催する資格試験です。3次元のCADオペレーション能力や機械設計の基礎的能力を測る試験です。
試験には3つのコースがあり「3次元CADコース」「図面作成コース」「プロ設計者コース」があります。
製造業で特に重要となる資格でありCADオペレーターとして活躍するのであれば3次元設計能力検定、特に「3次元CADコース」はCADのオペレーター向けであり取得しておきたい資格と言えます。
CADデザインマスター認定試験
CADデザインマスターとは、日本デザインプランナー協会が主催している資格です。一定のCAD知識があれば誰でも受験をすることが可能で、AutoCADやJWCADなどのCADに関する技術を身につけ証明することができます。
また、CADの資格は製造業や建築業界に特化している資格が多いですが、CADデザインマスターは色々な場面・業種でスキルの証明をすることができます。
AIの発展でCADオペレーターの競争は激しくなる
本記事ではCADオペレーターの将来性や代替される可能性のある仕事など詳しく解説しました。
CADオペレーターの競争はAIの発展により今後激しくなると言われています。なぜならAIによってCADオペレーターが行なう業務が少なくなるからです。CADオペレーターとして生き残っていくためには、AIにはできないスキルや能力を身につける必要があります。
ぜひ本記事を参考に様々なスキルや資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。