「AIを活用した業務改善に取り組みたいが、何から始めればいいのかわからない」「AI研修を導入したいけれど、内容や費用に見合う効果があるのか不安」と感じている企業担当者は多いでしょう。
実際、AI技術は日々進化しており、活用方法や求められるスキルもさまざまで、適切な研修を選ばなければ「導入しただけで終わってしまう」という失敗も起こり得ます。しかし、それぞれの研修には特徴や対象者、カリキュラム、費用などに違いがあり、自社に最適な研修を選ぶには比較検討が必要です。
そこで本記事では、企業向けにおすすめのAI研修サービス7選を紹介し、費用相場や選び方、助成金の活用方法まで解説します。初めてAI研修を導入する方にもわかりやすくまとめているので、ぜひ参考にしてください。
AI研修が必要な理由・注目される背景
AIの導入が加速する現代において、企業が持続的に成長し続けるためには、AIの仕組みを理解し活用できる人材の存在が必須です。経済産業省の調査によれば、2030年には12.4万人のAI人材が不足すると予測されており、専門人材の確保が難しくなると言われています。
日本ではAIやデータサイエンスを体系的に学べる教育機関が限られており、新卒AI人材は年間300人程度にとどまるとの試算も。こうした背景から、企業が自社で人材を育てることの重要性は日増しに高まっています。AI研修を導入することで、社員がAIの基礎を理解し、業務への応用力を身につけることができ、企業競争力の強化にもつながります。
AI研修は大きく分けて3種類
企業向けAI研修は対象レベルや目的別に大きく以下の3種類に分けられます。
- 基礎研修
- 応用研修
- 実践研修
①基礎研修
基礎研修は、AIに関する知識がまったくない社員でも受講できる内容が中心です。AIとは何か、どのように活用されているのかといった概念的な理解から、Pythonなどのプログラミング言語の初歩的な扱い方、簡単なデータ処理・可視化の方法までを学びます。
また、DXに関する基礎的なリテラシーや、AI活用の事例についても広くカバーされるため、技術職に限らず、総務・営業・企画部門などの非エンジニア職にもおすすめな研修です。企業全体のAIリテラシー向上も期待できるのが魅力です。
②応用研修
すでに基礎的なAI知識を持つ受講者を対象に、より専門的かつ技術的な内容に踏み込んでいます。以下一連のプロセスの学習します。
- 機械学習・深層学習
- アルゴリズムの仕組み
- データ前処理
- 特徴量エンジニアリング
- モデル構築・評価
- チューニング
このレベルの研修は、データ分析担当者やAIエンジニアを目指す社員、すでにデータ活用プロジェクトに関与している実務者におすすめです。
③実践研修
学んだ理論や技術を実際の業務課題にどう活用するかを重視した内容になります。社内の実データや業界特有の課題を題材にしたケーススタディを行い、チームでAIモデルの構築や課題解決策の提案までを行う、いわゆる「PBL」形式が多く採用されています。
AI人材を現場で即戦力として活躍させるための段階であり、知識の定着にとどまらず、「どう使うか」「どう活かすか」という実行力や応用力を身につけるフェーズです。また、プロジェクト伴走型の研修では講師やメンターが実務の進行にあわせて支援を行い、導入効果をより高めることができます。
AI研修の料金体系・費用相場
AI研修にかかる費用は、研修の内容や実施形式、参加人数によって異なります。一般的に、AI研修の料金は以下の要素で決まります。
- 講師料
- 教材費
- 会場費
- 交通費
- システム利用料
企業が研修を外部に委託する場合には、複合して総額が決まります。費用の目安としては、先述した3つの種類を表で紹介します。
項目 | 費用相場 | 概要 |
---|---|---|
基礎研修 | 0〜10万円/人 | 初歩的な考え方やツールの使い方を学ぶ初心者向け |
応用研修 | 5〜20万円/人 | 機械学習や深層学習といった専門的な技術を扱う |
実践研修 | 10〜30万円/人 | 実在データを活用しプロジェクト型で実務に直結した内容を扱う |
企業での団体研修では、10〜30人規模で実施されることも多く、総額として数十万円〜百万円以上になることも珍しくありません。研修の期間やサポート体制、カリキュラムの内容によって料金が変わる点は理解しておきましょう。
AI研修おすすめ10選
サービス名 | 受講形式 | 対象者 | 研修内容・特徴 |
DX・AI人材育成研修サービス |
|
新入社員から中堅社員まで幅広く対応 | 企業のDX化やAI導入に直結する実践課題に即したカリキュラムを提案 |
DX人材育成研修 |
|
DX推進担当者・経営層からエンジニア・企画担当まで幅広く対応 | 教材・講師の質が高く、実務直結のケーススタディや実データを使った演習(PBL研修)を重視 |
Techmate |
|
DX/AIプロジェクトに携わるエンジニアや企画担当者、IT部門の実務者向け | 受講者の現場課題に合わせた個別メンタリング(AI技術・開発ノウハウの習得) |
DXリテラシー診断&研修 |
|
全社員(経営層から現場社員まで)向け | 現場課題を想定したワークやテストも実施。全社共通の基礎力底上げが可能 |
AI_STANDARD |
|
エンジニア・データサイエンティストおよび、企画・管理職向け | AIエンジニア講座は機械学習・深層学習を基礎からカバー |
スキルアップAI |
|
経営層やマネジメント層のリテラシー向上から、全社学習まで総合支援 | 全社横断的なDXリテラシー研修から、AI実装を見据えたPBL研修まで幅広いプログラムを提供 |
SIGNATE Cloud |
|
社員のレベルに応じたコースを提供 | 上場企業を中心に多数の企業が導入 |
AI Shift |
|
AI導入をするべきか迷っている企業 | これまでに10,000名以上が受講 |
生成AIマスター講座 |
|
AIのビジネス活用に必要なノウハウを習得したい | 実務に直結するスキルをハンズオン形式で学べる |
AI研修(AI人材育成トレーニング) |
|
研修を受ける時間が限られている | 実際の業務改革や新規ビジネス立案に活かせる実践力が身につく |
①DX・AI人材育成研修サービス
「DX・AI人材育成研修サービス」は、企業ごとの課題に応じてカスタマイズ可能な研修プログラムです。カリキュラム内容は固定せず、事前ヒアリングで必要な研修テーマを決定するため、無駄のない効率的な教育が可能です。
例えば、初心者向けの「AIエンジニア育成講座」では、AIの基礎やPythonのインストール方法から学び、実践的なAIプログラミングができるレベルを目指します。受講後は復習用に262ページに及ぶテキストも用意されています。
②DX人材育成研修
引用:株式会社キカガク
DX人材育成研修は、経済産業省のデジタルスキル標準に準拠し、ビジネス・エンジニア・管理職など多様な人材層に対応したカリキュラムを提供しています。オンライン形式を基本としつつ、社内研修やLMS連携にも対応しており、企業別のニーズに応じた柔軟な設計が可能です。
1,000社以上の導入実績と15万人超の受講者数を誇り、講義後のフォローアップや社内講師育成支援など、自走できる人材育成体制の構築支援も高く評価されています。
③Techmate
引用:株式会社Techmate
Techmateは、課題解決に特化した伴走型のメンターサービスで、受講者は自身のプロジェクトに応じて、DXやAI領域の専門家から60分単位でオンライン相談を受けることができます。カリキュラムは存在せず、内容は完全にカスタム対応となっており、契約期間の縛りがないため、必要なときに必要なサポートを受けられるのが特徴です。
専属カウンセラーの伴走支援や無料体験セッションもあり、エンジニアから企画担当者まで、幅広い実務者層に柔軟に対応しています。
④DXリテラシー診断&研修
引用:AVILEN
DXリテラシー診断&研修は、30分程度のオンライン診断で社員のDX理解度を可視化し、その結果に応じてカリキュラムを設計する実践型プログラムです。研修では「テスト→動画→ワーク→再テスト」のステップを通じて、基礎から応用まで体系的に学べる仕組みを提供しており、900社超の導入実績があります。
DX推進部門だけでなく、営業・製造・バックオフィス部門を含めた全社員向けに展開でき、eラーニングや集合研修形式で柔軟に対応可能です。
⑤AI_STANDARD
引用:AI_STANDARD
AI_STANDARDは、エンジニアやマネジメント層向けに3ヶ月間でAIプロジェクトを推進できる人材を育成する研修プログラムで、東京大学教授と共同開発した高品質な講座をオンラインで提供しています。
機械学習・深層学習などの技術習得に加え、AIプロジェクトの立案・実行力までを育成対象としており、研修中は講師への質問がチャットで無制限、かつ平均3分以内の迅速な対応が魅力です。大企業120社以上の導入実績があり、実務で使える力を重視しています。
⑥スキルアップAI
引用:スキルアップAI
スキルアップAIは、DXリテラシー教育からPBL形式の実践研修、生成AIやCopilot研修まで網羅した幅広いカリキュラムで、企業のDX人材育成を総合支援します。950社超の導入実績があり、初学者からマネジメント層、上級エンジニアまで、各階層に最適化された研修が用意されています。
研修はオンラインを中心に、必要に応じて集合研修や社内イントラでのeラーニングにも対応しており、実務に直結するスキルを短期間で習得可能です。
⑦SIGNATE Cloud
SIGNATE Cloudは、企業向けにDXリテラシーとデータ活用能力を同時に高めるクラウド型教育プラットフォームで、特許取得済のスキル測定テストをはじめ、Excel・Python講座、ChatGPT研修、分析コンペなどをワンパッケージで提供。
オンライン完結型のため全国拠点に展開しやすく、2025年までに累計1,000社・18万人以上の利用実績を誇ります。社員レベルに応じた講座設計ができ、全社的なデータ活用推進の構築に最適です。
⑧AI Shift
引用:AI Shift
AI Shiftは、法人向けにAI研修サービスを提供しており、これまでに10,000名以上が受講した実績を誇ります。研修内容はAIの基礎知識から、ChatGPTやCopilotなど最新のAIツールの使い方まで幅広く網羅されており、AIを企業で実際に活用するために必要な知識やスキルを体系的に学べる点が特徴です。
eラーニングとワークショップを組み合わせた柔軟な受講形式を採用しているため、受講者は自分のペースで学びつつ、疑問点があればその場で質問ができます。
⑨生成AIマスター講座
「生成AIマスター講座」は、中小企業向けに特化したAI研修プログラムです。現役のエンジニア講師陣が直接指導を行い、AIの基礎からプロンプトエンジニアリング、AIツールの開発まで、実務に直結するスキルをハンズオン形式で学ぶことができます。
特に、生成AIのビジネス活用に必要なノウハウを体系的に習得できる点が特徴で、受講者はAIの仕組みや活用方法を理解した上で、実際に手を動かしてAIを使いこなす力を身につけられます。
⑩AI研修(AI人材育成トレーニング)
引用:トレノケート株式会社
「AI研修(AI人材育成トレーニング)」は、ビジネス部門・IT部門の両方に向けて幅広いAI教育プログラムを提供している点が強みです。AIの基礎知識や生成AIのビジネス活用、AI開発・運用力の向上、データ分析や機械学習、G検定などの資格対策まで、コースが用意されており、受講者のレベルや目的に応じて最適な研修が選べます。
また、AIの活用に不可欠なセキュリティやリスク管理、具体的な業務改善の事例などもカバーしており、単なる知識習得にとどまらず、実際の業務改革や新規ビジネス立案に活かせる実践力が身につく点も魅力です。
AI研修の選び方
企業が自社に合ったAI研修を選定する際には以下3つのポイントが重要です。
- 対象者レベルの幅
- 習得できる技術
- 内製化支援の有無
①対象者レベルの幅
AI研修を選ぶ際は、自社の受講対象者のレベルに合ったカリキュラムが用意されているかを確認しましょう。たとえば、AIの概念を初めて学ぶ新入社員や非エンジニア職向けには、用語解説や活用事例などを中心とした基礎的な研修が適しています。
一方、すでに一定のITスキルを持つ中堅社員やデータ分析担当者には、機械学習やPython実装などを含む実践的な内容が求められます。マネジメント層や経営層に対しては、技術的な細部よりもAI導入の意思決定や戦略策定に役立つ研修が効果的です。このように、初心者から実務担当者、意思決定層まで幅広くカバーする内容を揃えているかどうかは、研修効果を最大化するうえで判断基準となります。
社員のレベルや部署ごとに研修を実施するなら「ビジネス向けAI完全攻略セミナー」
「ビジネス向けAI完全攻略セミナー」は、AIの基礎知識から応用的なAI作成技術までを集中的に学べる短期集中型の講座であり、AI未経験者でも実務で活用できるスキルを最速で身につけられる点が特徴です。
カリキュラムはAIの基本概念や活用事例、機械学習・ディープラーニングの理論といった基礎から、クレジットカード審査や画像認識AIの作成など実践的な応用課題まで幅広く網羅しており、AIモデルの作成・運用に必要なデータや設定項目、機械学習アルゴリズムの特徴、外部データやアプリの活用方法なども学べます。
セミナー名 | ビジネス向けAI完全攻略セミナー |
---|---|
運営元 | ProSkilll(プロスキル) |
価格(税込) | 35,200円〜 |
開催期間 | 1日間 |
受講形式 | 対面(東京)・ライブウェビナー・eラーニング |
②習得できる技術
AI研修を選ぶ際には、どのような技術スキルを習得できるかを明確に確認することが必須です。単なるAIの概要や用語の解説にとどまらず、実際の業務に活かせる技術がどこまで含まれているかを確認しましょう。
また、近年ではChatGPTや生成AI、ノーコードAIツールの活用方法など、新しい分野にも対応できるかどうかも注目すべきポイントです。研修によっては、演習課題やハンズオンを通じて、理論だけでなく「使いこなす力」を養う設計がされているものもあり、学んだ技術を業務に直結させやすくなっています。
③内製化支援の有無
AI研修の効果を一過性のものにせず、継続的な成長につなげるためには「内製化支援」があるかどうかも選定ポイントです。内製化支援とは、外部研修に頼らず自社内でAI教育やプロジェクト推進を回せる体制を整えるための仕組みやサービスのことで、たとえば社内講師を育成するトレーナーズトレーニングや、サポートなどが含まれます。
仕組みが整っていれば、研修後も社内で自走しながら人材育成を継続でき、研修の成果を組織全体へ浸透させやすくなります。
AI研修費用削減できる助成金活用術
企業研修にかかる費用を抑えるためには、国の人材開発支援助成金などを活用するのがおすすめです。AI研修では、条件を満たせば費用を助成してもらえる制度があります。主な助成金制度として、厚生労働省の「人材育成支援コース」と「事業展開等リスキリング支援コース」があります。いずれも有期社員やパートタイム社員も対象となります。 活用手順は以下の通りです。
- 研修計画の策定
- 計画届の提出
- 研修の実施
- 支給申請
- 助成金受給
助成金申請は要件が厳しいため、専門家の支援を受ける企業も多くあります。なお、その他「キャリア形成促進助成金」なども同様の目的で利用できる場合がありますので、補助制度の条件を確認するとよいでしょう。
AI研修についてのまとめ
AI研修は、DX推進やAI人材不足対策として企業にとって重要になっています。基礎・応用・実践の各レベルに応じた研修タイプがあり、コースによって対象者や形式が異なるため、自社の目的に合わせて最適なプログラムを選ぶことが重要です。
研修費用については、助成金を活用することで軽減できる可能性があります。今回ご紹介した各研修サービスは特徴も料金も異なりますので、内容や費用、サポート体制を比較検討し、自社のDX・AI戦略に合致した研修プランを設計するとよいでしょう。
