2017年にGoogleはAIファーストに企業方針を変更すると発表し、新部門「Google AI」を創設しました。Googleは、検索エンジンを牽引してきたどのようにAI牽引をするのでしょうか?
今回はGoogle AIについて詳しく解説します。
GoogleAIの部門の特徴をはじめ、開発プロダクトまで理解できるようになるため、ぜひ参考にしてみてください。
Google AIとは
Google AIはAI(人工知能)の研究や開発を専門とする部門です。
2017年にGoogleが開催した会議「Google I/O」にて発表されました。
北京やイスラエルなど世界各地に研究施設を設置し事業拡大しています。
2016年4月にオフィシャルブログにて「This year’s Founders’ Letter」を公開しました。
この手紙には「GoogleはモバイルファーストからAIファーストに企業理念を変える」と書かれており、大きな話題を集めました。そして、現在は「すべての人の役に立てるAIを開発する」という企業理念のもとAIの開発を行っています。
Google AIの目的
GoogleAIは12個の目的を叶えるためにAIを開発しています。
- 最先端の革新的なAI基礎研究をリードしてAI分野に貢献する
- エンジニアリングの発展を目指し、画期的な進歩を遂げる
- 安全に使える最先端のAIインフラストラクチャを構築する
- Google製品にAIを適用して利便性を向上させる
- AIを活用した新しいプロダクトを開発する
- 開発者やパートナーと大規模なAIエコシステムをつくり共同展開を行う
- AIを活用して新たな分野のビジネスを創り出す
- 持続可能な未来を目指して、社会問題をAIで解決していく
- AIを適用できる分野を拡大していく
- AIを安全に利用できる環境を構築していく
- Google社の業務処理能力を上げていく
- Googleの目標を達成する
Google AIのリスク管理
GoogleはAIが誤用や悪用されたり、サイバー攻撃で情報漏洩されたりする恐れがあることを懸念しています。Googleは、AIのリスクを軽減する取り組みに多額の投資をしています。
「Google Cloud Next 2023」では、マルチクラウドとハイブリッド環境での接続性とセキュリティを簡素化できるCross-Cloud Networkを発表しました。
Google AIのプロダクト6選
GoogleAIの代表的なAIプロダクトには、以下のようなものがあります。
リリース日 | サービス名 |
2017年10月 | レンズ |
2018年12月 | 完全自動運転の自動車 |
2023年3月 | Bard |
2023年10月 | フォト(Magic Editor) |
2023年下旬予定 | Assistant with Bard |
2023年下旬予定 | スマートウォッチ※新機能 |
レンズ
Googleレンズは、カメラで撮影したものが何か探索できるアプリです。
AIが搭載されており、撮影した文字を翻訳したり、建物や動物の種類を特定したりできます。
身の回りのものを調べられる便利なアプリとして利用されています。
自動車
Googleのグループ会社のWaymoが自動運転の開発に取り組んでいます。
2016年12月に自動車開発部門として誕生し、2023年2月にロサンゼルスにて完全自動運転のタクシーのテスト運行を開始しました。
同社は24時間365日、いつでもタクシーが呼べるサービスを作り上げようとしています。
Bard
Bardは、対話型AIチャットサービスです。
2023年3月にアメリカとイギリスでリリースされ、5月に日本でリリースされました。
チャットに質問するだけで回答してもらえます。
Bardの大きな特徴はGoogleの大規模言語モデルLaMDAが使用されていることです。
LaMDAは軽量のため、瞬時に質問の回答がもらえます。
また、Google検索結果に紐づいた回答がもらえることが強みです。
そのため、Bardで「この商品を購入したいと思っているけれど、体験談の動画はある?」などの質問ができます。
フォト
Googleフォトはクラウド上に写真を保存できるサービスです。
2023年後半にGoogleフォトに編集機能Magic Editorが搭載される予定となっています。
Magic Editorには生成AIが搭載されており、被写体や背景など簡単に編集できます。
Google Picxelユーザーはより、写真撮影が楽しめるようになりました。
生成AIについて興味がある方は、下記の記事をご覧ください。
アシスタント
Googleアシスタントとは、音声に対する質問に回答してくれるアプリです。
このアプリにもAIが搭載され、画像や動画を理解できるようになりました。
例えば、インスタグラムを見て行きたいホテルを見つけたとします。
そのときに、Googleアシスタントに「このホテルの情報を教えて。また私の誕生日に宿泊できるかも教えて」と質問すれば、知りたい情報を教えてもらえます。
スマートウォッチ
GoogleはスマートウォッチGooglePixelWatchを販売しています。
AIが搭載されており、ユーザーの心拍数を正確に読み取ることができます。
健康デバイスをはじめ、さまざまな用途に利用できることが魅力の商品です。
今後、転倒時の衝撃をキャッチして1分反応がない場合は、ユーザーの位置情報を表示させて救急車を呼ぶという機能が搭載される予定となっています。
Google AIの研究事例
GoogleAIは便利なプロダクトだけでなく、社会問題を解決するための研究を行っています。
グリーンライトプロジェクト
グリーンライトプロジェクトとは、AIを活用して交差点の信号機を最適化し、交通量の流れを改善して排気ガス排出量の削減を目指すプロジェクトです。信号機を最適化し、赤信号での自動車の停止回数を減らすことで、廃棄ガス排出量を最大10%削減していきます。
また、自動車の運転者には交通量が少なく一定の速度で走行できるルートをアナウンスすることで、排気ガスを抑制していきます。
飛行機雲の発生を抑制する研究
飛行機雲は地球温暖化を促進させると言われていますが、飛ぶときに飛行機雲を作るわけではありません。湿気の多いところを飛ぶときに飛行機雲が発生します。
つまり湿気の多いところを予測した上で飛行機を飛ばしていけば、飛行機雲の発生を抑制できます。Googleは衛生画像と飛行機雲をAiに機械学習させ、飛行機雲が発生しないルートを提示し、54%抑制することに成功しました。
洪水予測アラートで人々の安全を確保
気候変動の影響で洪水の自然災害の頻度が増えており、世界で2億5,000万人以上の人が被害を受け、経済損失も招いています。この問題を解決するために、Googleは洪水データやAI予測データを閲覧できるFlood Hubを作り上げ、政府や援助団体、個人に公開しています。
川を流れる水の量と浸水するかどうかを予測できるようになり、人々が洪水に備えられるようになりました。Googleは赤十字社やインクルージョン経済チームなどと連携を取り、自然災害の対策を強化しています。
GoogleはAIを活用して持続可能な地球を実現しようとしています。
このような取り組みもDX推進です。
DX推進について詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。
Google AIの最新情報
GoogleAIはAIファーストの企業理念に沿ってAI分野を牽引しています。
さまざまな取り組みをしているため、最新情報をみておきましょう。
最先端の言語モデル PaLM 2を発表
GoogleはChatGPTに匹敵する大規模言語処理モデルPaLMを発表しました。
PaLMは5,400億のパラメーターが採用されており、他のサービスと比較して処理能力が高いことが魅力です。また、7,800億個のトークンを学習に使用しており、検索エンジンだけでなく、ソーシャルメディアやニュース、書籍などあらゆる情報を読み込んでいます。
大量のデータが学習できるようにTPUV4のプロセッサーを使用しており、精度が高い回答を瞬時に出せることが強みとなっています。
中学生ロボット工学プログラムに1,000万ドルの助成金を寄与
Googleはロボット工学プログラムに興味・関心を持つ学生の育成に注力しています。
米国の30万人の中学生がロボット工学プログラムに参加できるように、1,000万ドルの助成金を提供しています。
また、同社はボランティアイベントなども開催しており、青少年にロボットを学ぶ場などを提供するなど、未来に向けた支援活動をしていることでも有名です。
AI開発に役立つデータセットを提供
GoogleはAI分野を発展させるために、他企業との共同をしていますが、AI開発に役立つデータセットを提供しています。
2018年9月には「Dataset Search」と呼ばれる検索ツールを公開し、研究者が欲しいデータセットにアクセスできるようにしました。
またGoogleも2,500万件以上のデータセットを公開しており、AI開発者やAI研究者を支援しています。
Google AIについてまとめ
Google AIはAIを研究、開発するために立ち上げられた部門です。
2017年にGoogle AI部門が創設されて、Bardやレンズ、アシスタントなど、画期的なサービスを続々と登場しています。
ChatGPTのAPIを活用するサービスが多い中、自社オリジナルの大規模自然言語処理を活用するなど、他社と異なる動きをしていることが魅力です。
この記事では、Google AIの最新プロダクトや研究内容をご紹介しました。
今後、AIを牽引する企業でもあるため「、AIファーストに方針転換したGoogleの動向をよくチェックしておきましょう。