現代の製造業ではネットワーク活用により生産性を高められるIoTが重要視されますが、その製造業のIoTで活用できるのが、オペレーティングプラットフォームであるMindSphereです。
では、MindSphereは具体的にどのようなシステムなのか、機能や使い方などを確認していきましょう。
製造業向けプラットフォームのMindSphere
引用:SIEMENS
MindSphereとはドイツに拠点を置くシーメンス社が提供する、製造業に向けたIoTのプラットフォームのことで、製造に関する様々なデータをリアルタイムで収集できます。
データを分析し、様々な形で事業に活用することが可能です。
クラウドベースである点が大きな特徴で、インターネット環境を通じて使用する形となります。
当然データの収集もオンライン形式です。
MindSphereについてはこちらの動画でも紹介されています。
MindSphereを利用するメリットとは
MindSphereには数多くのメリットがあります。
具体的にどういったメリットがあるのか、特に重要なものを紹介していきます。
導入が容易
製造業でIoT環境を導入する場合、サーバーの設置や機械との有線接続など様々なハードルがあります。MindSphereであれば、そういったことを気にせずに済みます。
クラウドタイプなのでサーバーを設置する必要がなく、オンライン環境でデータを収集するため有線接続も不要です。
クラウド用のモジュールや、外部制御装置であるPLC機器を使用すれば、オンライン環境に対応していない機械でもIoT化が可能です。IoT化のために機械を新調したり、対応しできない機械を省いたIoT環境を構築するといったことにはなりません。
拡張性が高い
MindSphereはデータ収集から分析までを一貫して行うことができますが、MindSphere内で完結する必要はありません。状況に応じてAWSなどの外部ツールと組み合わせることができます。
MindSphereをベースに自社開発をしたり、デバイスを使い分けたりするといったことも可能です。そのような拡張性の高さもMindSphereの大きなメリットといえるでしょう。
充実したサポート
MindSphereは全てワンストップで提供されています。
データ収集やモジュールの設置・データ分析など色々な内容に分かれていますが、その一部機能が外部に任せてあるということはありません。そのため使用していく上で疑問に思った点や不明な部分がある場合は、シーメンス社に問い合わせると解決できるでしょう。
オンラインでアップデートできる
IoT化した後も新しい環境に対応するためにアップデートは欠かせません。
クラウドベースのMindSphereは、そのアップデートをオンラインで行なえ、選択するプラン次第では自動アップデートも可能です。
アップデートの度に専門スタッフを手配したり、工場の稼働をストップさせたりする必要はありません。
MindSphereで行えるDXについて詳しく知りたい方には、こちらの記事がおすすめです。
MindSphereが持つ主な機能
MindSphereには製造業データに関する様々な機能が備わっています。
具体的にどのような機能があり、どういったことができるのかを解説します。
機能 | 特徴 |
データの収集 |
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データ収集の設定 |
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収集データの分析 |
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アプリケーションの作成 |
|
データの収集機能
MindSphereの基本となるのはデータの収集機能です。
製造業で使用する様々な機械に備わっているセンサを使ってデータを集めます。
クラウドに対応していない機械でも、工夫次第で特に問題なくIoT環境に組み込めるため、製造業に関するデータを全てMindSphereで管理するということもできます。
対応できるクラウド環境は幅広く、海外のような特殊な環境でも対応しやすいです。
遠く離れた場所にある工場のデータを一元管理するという使い方もできます。
データ収集の設定機能
MindSphereではどのような形でデータを収集するのか、細かく設定できる機能が備わっています。工場で使用する機械ごとに分類したり、データを収集する頻度を変えたりすることは、決して難しくありません。生産性の向上やトラブルの予防など、幅広い目的で使えるでしょう。
収集したデータの分析機能
MindSphereはただデータを収集するだけでなく、収集したデータを分析する機能も備わっています。あらかじめ設定していればデータ収集から分析までを自動で行え、分析結果はグラフなどで見える化されるため、人が手を加える必要がありません。
データを出力できるため、より高度な分析機能を持った専用ツールと併用することも可能です。
アプリケーションの作成機能
MindSphereにはAPI連携機能とツール開発機能も備わっているため、アプリケーション開発のプラットフォームとして使用することも可能です。技術力さえあれば、MindSphereで標準装備されているものとは違う形で分析をするアプリケーションを開発できます。
MindSphereと独自の技術を連携させ、機能性を拡張した分析も不可能ではありません。
コードなしでも開発ができる機能も備わっているため、プログラミングに関する高度な技術力は必須ではないです。
MindSphereの基本的な使い方
MindSphereの基本的な使い方や手順を紹介します。
MindSphereの基本的な使い方は、データを定義付けした後、モニタリングや分析を行うという流れです。大量のデータを取り扱うため、まずはそのデータをアセット単位で定義付けしなければなりません。
工場機械に関するもの・制御を行うPLCに関するもの・データを取りまとめるゲートウェイに関するものなど、アセットの種類は複数あります。IoT環境がどのようなアセットで構成されるのかを定義付けることで、MindSphereはデータの収集や分類ができるようになります。
厳密にはアセットの中でタイプごとに分かれ、タイプ内でより細かな単位であるアスペクトに分かれる構図です。そうしてデータが定義付けされたら、モニタリングができるようになります。
使い方の手順
使い方の具体的な手順を紹介します。
親アセットを作成
データをアセットで定義付けするためにはまず、中心となるアセットを作成しましょう。
他のアセットを内包するアセットであり、親アセットやエージェントアセットと呼ばれます。
- MindSphereのランチパッド画面からAsset Managerを開く
- 「Create Asset」を選択する
- タイプを選択し親アセットを完成させる
- クラウドとの中継を行うゲートウェイのコードと結びつける
環境に応じたアセットを設定
親アセットができれば、そこに内包されるアセットを作成していきましょう。
Asset Managerを使用する点は変わらず、アスペクト作成後にタイプを選択するという形になります。工場機械のアセットであれば、不良回数や温度などのアスペクトが必要になるでしょう。
タイプはMindSphere側で用意されているものを使っても良いですし、自ら新しく作成することも可能です。同様の内容で種類のみが異なるアセットが必要な場合、作成時にタイプを選択するだけで同じものを用意できます。必要なアセットを用意できれば、データの定義付けは完了です。
Fleet Managerでモニタリング
MindSphereで収集したデータは高度な分析などにも使えますが、最も基本的なモニタリングではFleet Managerを使用します。MindSphereのランチパッドにあるツールでアセットを選択することで、データの内容を把握可能です。データは数値だけでなく見やすいグラフ形式にも変えられます。
製造業のIoT化を進めやすいMindSphere
製造業でIoT化を進めたいけれども、導入が複雑・技術的なハードルが高いなどの理由で断念してしまう企業は珍しくありません。
しかしMindSphereであれば、比較的容易にIoT化ができる可能性があります。
MindSphereがどのようなシステムなのかをひと通り把握して、導入を前向きに考えてみると良いでしょう。