マシニングセンタは穴開けや平面削りなど多様な機能を持ち、近年はさまざまな製造現場で使用されています。多機能なマシニングセンタですがその機能性の高さから操作が難しく、技能習熟までにはある程度の経験と時間が必要です。
本記事ではマシニングセンタの難しい点を紹介し、長所や短所、向いている人やおすすめの資格を紹介します。
マシニングセンタとは?
自動で切削工具を交換する機能であるATC(Automatic Tool Changer)を有し、平面削りや穴あけなどの加工を1台で完結できる工作機械をマシニングセンタといいます。従来の工作機械では切削工具の交換は機械を制止しなければいけませんでしたが、マシニングセンタはATCによる自動交換が可能です。
切削工具の自動交換が可能になり、従来よりも生産時間が短縮されて作業効率も向上しました。
マシニングセンタの難しい点は
マシニングセンタは多様な加工を可能にする優れた工作機械ですが、実際の操作や作業ではどのような点が難しいのでしょうか。ではマシニングセンタの難しい点を詳しく解説します。
図面の解読
図面の解読も、マシニングセンタの作業の難しい点の1つです。マシニングセンタ初心者のほとんどが最初は図面を読み取れず、製品の完成図をイメージできないといわれています。
図面を見る際には立体的な完成図をイメージするだけでなく、なぜその寸法で設定されているかを考慮しなければいけません。その後に原点やクランプ方法を選定し、製品の材質や交差の指示を行って切削工具を選択します。
特に最初は同一図面で鏡写しに制作を行うRLが困難で、慣れない間は穴開け位置の確認に時間がかかるケースが多いです。
測定作業
マシニングセンタでは、測定も難しい作業の1つとして認識されています。マシニングセンタでは精密な部品を製作することも多いので、場合によっては1,000分の1㎜級の精度が必要とされるケースも多いです。
そこで重要視されるのが高度な測定技術で、多種多様な測定工具を使いこなすための経験が重要視されます。マシニングセンタでの作業を効率化させるためにもハイトゲージやシリンダーゲージ、マイクロメーターなどをはじめとした測定工具のスキルを向上させなければいけません。
仕上げ作業
仕上げ作業もマシニングセンタの中で難しい作業の1つです。加工した製品に傷があればクレームの対象になるうえに、顧客の信頼性も低くなるので外観を整える仕上げ作業は重要視されています。
一方でマシニングセンタでの作業は、作業的な観点からも傷がつきやすい作業であるのが現状です。特に仕上げ時のバリ取り時のミスで傷が付くケースも多く、慣れない間は些細なミスで製品を傷つけてしまいます。中でもアルミ製品は傷つきやすい材質なので、細心の注意を払って仕上げ作業を行わなければいけません。
マシニングセンタの長所
マシニングセンタは機能性に富んだ工作機械で、さまざまな長所があるので多様な産業への導入が進んでいるのが現状です。
ではマシニングセンタの長所を詳しく解説します。
量産加工が可能
量産加工が可能な点も、マシニングセンタの長所の1つです。CAMを使用して加工プログラミングを設定すれば、その後は自動的に高精度な同一商品を生産し続けてくれます。
また複雑な形状の製品でもプログラム設定さえ完了すれば、後は機械が自動生産してくれる点もメリットです。このような観点からも、マシニングセンタは高精度な製品の量産加工に最適ともいえます。
製品データのデジタル化を実現した製造業DXを導入してマシニングセンタと連携させれば、生産性を向上させることが可能です。下記に製造業DXに関する記事を添付するので参考にして下さい。
高い繰り返し精度
マシニングセンタの長所の1つに挙げられるのが、高い繰り返し精度です。フライス盤や旋盤などの工作機械は、人間の手で操作するためヒューマンエラーによるミスや数値のズレなどが発生します。
一方のマシニングセンタはコンピュータによる自動制御により加工作業を行うため、安定した高い繰り返し精度での生産が可能です。マシニングセンタは自動制御型の工作機械なので、現在各産業への導入が進んでいるスマートファクトリーにおいても有効活用できます。
下記にスマートファクトリーに関する記事を添付するので参考にして下さい。
工具の自動交換が可能
工具を自動交換できる点も、マシニングセンタの長所の1つです。従来の工作機械は切削工具の交換が必要で、交換作業の度に機械を停止させなければいけませんでした。
一方のマシニングセンタは、機械が切削工具交換のタイミングを計測して自動的に交換してくれます。その結果として、作業時間が短縮されると同時に切削工具交換に手間がかからず、生産性が向上します。
マシニングセンタの短所
マシニングセンタには多くの長所があるのと同様に、当然ながら短所もあります。マシニングセンタの短所には
- 分厚く深い製品の加工ができない
- 加工状況を確認しにくい
- 真円度が旋盤に比べて低い
- 加工プログラムが複雑
- 多額の導入コストがかかる
などの点が挙げられます。ではそれぞれを詳しく解説します。
分厚く深い製品の加工ができない
分厚く深い製品の加工ができない点も、マシニングセンタの短所の1つです。マシニングセンタは切削工具と加工物が直接的に接触して加工を行うので、分厚く深みのある製品を加工すればすぐに工具が擦り減ります。
したがって分厚い製品の加工には適していません。
加工状況を確認しにくい
マシニングセンタは、製品の加工状況を確認できない点も短所の1つです。従来の手動式の工作機械は手作業なので、目の前の加工物をすぐに確認できました。
一方のマシニングセンタは工作部が全て扉やカバーで囲まれているので、加工状況の確認ができません。また一度プログラム設定すれば生産完了まで自動運転を行うため、トラブルが発生してもそのまま運転を続けます。
真円度が旋盤と比べて低い
真円度が旋盤と比較して低い点も、マシニングセンタの短所です。マシニングセンタは加工軸を高速回転させ、切削工具を加工物に接触させて加工を行うので必然的に熱が発生します。
熱が発生すれば加工部に塗布された切削油の蒸発も早くなって加工精度が低くなり、結果的に加工軸への負担が増加して旋盤に比べて真円度が劣るのが現状です。また真円度が低くなれば加工時の主軸にブレが生じ、工具破損などの危険性も高まります。
加工プログラムが複雑
マシニングセンタは加工プログラムが複雑な点も短所の1つです。マシニングセンタは加工プログラムさえ入力すれば、完了まで自動的に加工してくれます。
しかしプログラムが非常に複雑で、作成・設定に時間がかかるケースが多いです。したがって一度のプログラムによる大量生産には最適ですが、個別生産では毎回プログラム設定しなければいけないのであまり向いていません。
多額の導入コストがかかる
多額の導入コストがかかる点も、マシニングセンタの短所の1つです。マシニングセンタだけでなく、工作機械の導入は全般的に多額のコストがかかります。
特にマシニングセンタはATC(自動工具取り換え機能)が搭載されている分、ほかの工作機械よりもコストが高めです。
マシニングセンタに向いている人の特徴
マシニングセンタは高機能な工作機械ですが、習熟には地道な努力が必要なので実際に取り組むなら自分の特性が適しているか把握するのもおすすめです。そこでここからは、マシニングセンタに向いている人の特徴を紹介します。
メカやロボットが好き
メカやロボットが好きな点も、マシニングセンタに向いている特徴の1つです。マシニングセンタでの加工は、基本的に機械を操作します。
メカやロボットが好きであれば自分の思うように機器を動かせるようになりたいと感じ、その思いがスキルアップへと繋がります。自分の入力ひとつで機械が作動し、理想的な製品ができた時に喜びを感じることも可能です。
ものづくりが好き
マシニングセンタでの仕事は、ものづくりが好きな人にも向いています。マシニングセンタでは機械を使用し、さまざまな部品や製品を製造します。
ものづくりが好きな人であれば、機械を使って思うような製品ができた時に大きな喜びとやりがいを感じることも可能です。
細かな作業が得意
細かな作業が得意な点も、マシニングセンタに向いている人の特徴の1つです。前述のようにマシニングセンタでは製品次第で1,000分の1㎜など、細かい調整が必要な場合もあるので、大雑把な人よりも細かな作業を得意としている人に向いています。
細かな作業が得意な人であれば、製品加工に必要な細かなデータ検出も地道にこなすことも可能です。
数字に強い
マシニングセンタは、数字に強い人にも向いています。マシニングセンタの業務は単純に機械を動かすだけでなく、図面の数値を正確に読み解く力が必要だからです。
また読解した数値を機械に入力する際には、三角関数をはじめとした複雑な計算式を使用しなければいけないので、数字に強くなければ効率的な作業ができません。
マシニングセンタ関連のおすすめの資格を紹介
マシニングセンタは専門的な知識やスキルが必要で難しい仕事ですが、特定の資格を取得すればキャリアアップに繋げることができます。ではマシニングセンタ関連のおすすめの資格を下記に表記し、それぞれを詳しく解説するので参考にして下さい。
資格の種類 | 特徴 |
CAD利用技術試験 | 2次元CAD利用者技術試験では主に図面、3次元CAD利用技術者試験では立体モデルを作成 |
機械加工技能士 | 難易度が高い順に1級、2級、3級とレベルがわけられ、それぞれで内容が異なる |
CAD利用技術者試験
建築やマシニングセンタのような機械加工の設計で使用するツールである、CADシステムに関するスキルや知識を評価する試験をCAD利用技術試験といいます。試験は
- 2次元CAD利用技術者試験(基礎、2級、1級)
- 3次元CAD利用技術者試験(2級、準1級、1級)
など部門別に行われます。また短期間での3次元CAD利用者技術試験合格を目指すのであれば、株式会社VOSTが提供する、「3次元CAD利用者技術試験2級対策講座」がおすすめです。
この講座はパソコンやスマホ、タブレットなどをお持ちであればいつでも視聴できるので効率的に学習を進めることができます。CAD初心者向けに講座を組んでいるうえに、わずか8時間の講座でCADの実務的なスキルを身につけることも可能です。
価格も27,500円(税込)とお手頃なうえに、申込後1年間はいつでも視聴可能なのでぜひご利用ください。こちらをクリックすればすぐに申し込み可能です。
機械加工技能士
マシニングセンタを取り扱う際の技術力を証明するための資格が、機械加工技能士です。機械加工技能士は各職種で学科・実地の試験が行われ、試験に合格すれば技能士としての証明書が発行されます。
尚この資格では難易度が高い順に1級、2級、3級とレベルがわけられ、それぞれで内容が異なる点も特徴的です。
マシニングセンタをマスターして自己価値を高めよう
今回はマシニングセンタの難しい点を紹介し、長所や短所、向いている人やおすすめの資格を紹介しました。本記事でも紹介したようにマシニングセンタの操作は難しい部分も多く、スキルの取得には時間と手間がかかります。
しかし現在の製造業においてマシニングセンタは無くてはならない存在で、スキルを取得すれば仕事探しで困ることもありません。さらに高い技術や資格を取得すれば、昇給にも繋がるのでマシニングセンタをマスターして自己価値を高めて下さい。