マシニングセンタは多様な加工法を活用し、さまざまな製品や部品の製造を可能にした工作機械です。多種多様な製品の加工を可能にしているマシニングセンタですが、実際にどのような加工法が使用されているのでしょうか。
そこで本記事ではマシニングセンタの加工法を紹介し、フライス加工との違いや種類、特徴も解説します。
マシニングセンタとは?
回転工具を活用して中ぐりやフライス盤、ねじ立てや穴あけなどの複数の切削加工をたった1台で可能にした工作機械をマシニングセンタといいます。マシニングセンタには、切削工具の自動交換を可能にしたATC(オートツールチェンジャー)が搭載されているので、切削工具の交換に手間がかかりません。
この自動機能により、マシニングセンタは従来の工作機械と比べて大幅な生産性向上に成功しました。近年は自動化に特化したマシニングセンタと最先端のAIやIoTと連携させて、工場自動化を進めるスマートファクトリーが多くの企業で導入されています。
下記にスマートファクトリーに関する記事を添付するので、自社導入時の参考にして下さい。
マシニング加工とは?
マシニングセンタを使用し、製品を切削加工する加工方法をマシニング加工といいます。マシニング加工はフライス加工と同様に回転軸に取り付けられた切削工具の回転・切削により製品を加工する方法です。
ここからはマシニング加工の手順を詳しく解説するので参考にして下さい。
①プログラム作成・転送
マシニング加工では最初に製品の図面を参考に、プログラムを作成して機械に転送します。作成時には製品の形状だけでなく切削方向や回転軸の速度、回転数など細かい点まで設定・入力しなければいけません。
その後に設定・入力したプログラムをマシニングセンタに転送します。
②材料セッティング
工程のプログラム・転送が完了すれば、次に製品となる材料のセッティングを行います。セッティングには専用の固定治具を使用し、加工時の製品のズレを防止しなければいけません。治具などで材料を固定した後は、基準点やXYZ各軸との位置合わせや切削工具の計測などを行います。
さらに運転中のトラブルを予防するため、入念な試運転も行って始業前点検も実施しましょう。また製造業における生産データの可視化を可能にした製造業DXを導入すれば、マシニングセンタへの効率的なデータ転送も可能になります。
下記に製造業DXを詳しく解説した記事を添付するので参考にして下さい。
③加工作業
材料のセッティングが完了すれば、次に実際の加工作業へと進みます。加工作業では最初に荒加工と呼ばれる材料の表面を大まかに切削する加工を行い、その後に中仕上げ加工や仕上げ加工を行うのが一般的な手順です。
フライス加工とは?
別名ミーリング加工とも呼ばれ、複数の切削刃物が取り付けられた円筒形の切削工具が高速回転し、置台などに固定された工作物を加工する加工法をフライス加工といいます。この加工法を導入すれば加工物の表面仕上げや曲面加工が可能なうえに、みぞ削りや穴あけなど多様な加工が可能な点がメリットです。
またフライス加工を導入すれば生産時の不良品が減少したり、仕上がり面を綺麗にできるなどのメリットもあります。ここからは、フライス加工を使用している加工機を1つずつ紹介します。
汎用フライス
汎用フライスは、フライス加工を使用する基本的な機械として多くの企業で導入されてきました。生産における柔軟性が高く、小ロット加工品に適している工作機械です。
NCフライス
NCフライスは従来の手動式の汎用フライスに、NC(数値制御機能)を搭載した工作機械です。製造データの数値制御化により、ヒューマンエラーや生産者の違いによる精度や完成度のブレを解消しました。
マシニング加工とフライス加工の違い
自動工具交換機能の有無が、マシニング加工とフライス加工の違いとして挙げられます。基本的にマシニング加工では切削工具は自動的に交換されますが、フライス加工には搭載されていません。
しかし近年は自動工具交換機能を搭載し、切削加工やフライス加工も可能な複合型NC工作機械のターニングセンタなどの工作機械が開発されています。
マシニングセンタの種類と特徴
マシニングセンタは1台で多用な加工を実現した高機能な工作機械ですが、実際の製造現場ではどのような種類の機械が利用されているのでしょうか。
では下記にマシニングセンタの種類を表記し、それぞれの特徴を詳しく紹介します。
横型マシニングセンタ
切削工具を設置した回転軸と地面が、水平方向に設置されているのが横型マシニングセンタです。加工で発生した切りクズや切り粉は、自動的に下部に落下するので排出の手間がかかりません。
構造上切りクズや切り粉が加工面に堆積しないので、加工面が傷つきにくく高精度な加工が可能です。しかし切削油を塗布してもすぐに下部に落ちてしまい、切削工具が熱を持ちやすいので注意が必要です。
また加工物を横向きに固定するので重量がある製品は固定しにくく、加工中にたわむ危険性があるので大型製品の加工には適していません。
縦型マシニングセンタ
縦型マシニングセンタは、加工物に対して回転軸や切削工具が垂直方向に設置されているのが特徴です。加工軸が縦向きに設置されているので切削油が届きやすく、高精度な切削加工を行うことができます。
また製品を上部から切削するので加工状況の確認が可能で、図面を見ながら加工できるのもメリットです。しかし縦型マシニングセンタは構造上の観点から加工面に切りクズや切り粉が堆積しやすく、こまめに除去しなければいけない点がデメリットといえます。
門型マシニングセンタ
機械全体のフレームが門型の構造で、その門の天井部に主軸が搭載されているのが門型マシニングセンタです。この機械は加工物を設置するテーブルが広いのが特徴で、長尺製品や重量製品の切削加工を得意としています。
5軸制御マシニングセンタ
5軸制御マシニングセンタは複雑な形状の加工を可能にするため、縦横高さの3軸にさらに2軸を追加したマシニングセンタです。切削工具は加工物に対して垂直方向に設置され、一度製品をセッティングすれば同時に5方向からの加工が可能なので、再セットの手間が省けます。
一方で加工軸が多い分プログラミングと制御が困難になる点がデメリットです。
小型マシニングセンタ
30番の主軸を搭載し、タレット式の工具自動交換装置(ATC)を搭載しているマシニングセンタが、小型マシニングセンタです。本来は穴開け加工機として、複数のドリルを搭載した工作機械として生産されていました。
しかしその後の周辺機器の進化や高精度化に伴い、小型マシニングセンタとして多くの製造現場で使用されています。
マシニングセンタ導入のメリット
マシニングセンタは自動工具交換機能を有し、導入すれば生産性向上も可能ですがほかにどのようなメリットがあるのでしょうか。マシニングセンタの主なメリットとして
- コスト削減
- 高精度の加工を実現
- 安全性の向上
などの点が挙げられます。ではそれぞれを詳しく解説するので導入時の参考にして下さい。
コスト削減
コストを削減できるのも、マシニングセンタを導入するメリットの1つです。従来の工作機械での加工では切削工具の交換も必要なうえに、製品完了まで手動で加工を行わなければいけませんでした。
一方のマシニングセンタは工具の自動交換機能を有しているので、工具交換の手間がかかりません。また一度セッティングを行えば加工完了まで付き添う必要もなく、その間はほかの作業に従事できます。
このような観点からもマシニングセンタを活用すれば、生産に関連する人的なコスト削減が可能です。
高精度の加工を実現
マシニングセンタを導入すれば、高精度の加工を実現できる点もメリットです。マシニングセンタは数値制御により加工に関する細かな設定を行い、その後は自動的に加工を行うので手動の際に発生するヒューマンエラーや精度のバラつきも削減できます。
安全性の向上
安全性が向上する点も、マシニングセンタを導入するメリットの1つです。従来の工作機械では鋭い切削工具を交換する際に、作業者が怪我するケースも頻発していました。
一方のマシニングセンタは自動工具交換機能が搭載されているので、工具交換の際に作業者が怪我する心配もありません。
マシニングセンタ使用時の注意点
マシニングセンタを使用する際には、製品の設計段階で加工方法や手順を事前に考慮するのが注意点です。マシニングセンタでは加工時の切削深さや角の付け方によって完成までのランニングコストが変動します。
したがって事前に加工の計画を立てて切削の深さを調整したり、両側からの加工を可能にするなどの綿密な計画を立てれば、生産性を高めることが可能です。
マシニングセンタの優れた機能
マシニングセンタは工具の長さや径を確認して補正を行う、工具調整機能という優れた機能を有しています。この機能を活用すれば、マシニングセンタで使用可能なエンドミルやドリル、リーマなど径の異なる工具を、座標を変えずにそのまま使用可能です。
また従来の工作機械で座標を変えずにサイズの異なる工具を使用すれば、加工の位置ズレが生じていましたが、マシニングセンタを使用すれば位置ズレが発生しません。工具調整機能を使用する際には事前に使用する切削工具の長さや半径など、細かなデータをプログラムしましょう。
マシニングセンタを有効活用しよう
今回はマシニングセンタの加工法を紹介し、フライス加工との違いや種類、特徴も解説しました。マシニングセンタは1台で多用な加工を可能にした優れた工作機械で、効率的に導入すれば自社の生産性を向上させることができます。
しかし多能な機能を有しているだけに、製品に適した加工法を選択しなければ十分な成果を収めることはできません。そこでマシニングセンタ導入時には本記事を参考にして頂き、自社製品に適した加工を選択して有効活用してください。