電気製品や自動車をはじめ、さまざまな製品の部品を製造している機械が工作機械です。
工作機械は私たちの生活に必要なあらゆる製品の生産に欠かせないツールで、製造業をはじめさまざまな産業に導入されています。
本記事では国内工作機械メーカーランキングを紹介し、業界の現状や今後の動向も徹底的に分析します。
工作機械とは?
製品の研削や穴あけ加工を施すなど、製品製造のためにさまざまな除去加工を手掛ける機械が工作機械です。工作機械はさまざまな機械部品を製造する観点から「マザーマシン」とも呼ばれ、加工作業の種類によりさまざまな機械が使用されます。
工作機械はガラスや木材、樹脂などの加工にも利用されますが、金属の切削・除去加工に使用されるのが一般的です。
工作機械業界の特徴
工作機械業界の市場の状況は景気の動向に左右されやすいため、景気の先行指標ともいわれています。特に日本の主要産業の1つである自動車メーカーへの工作機械の導入が多いため、自動車業界の業界動向が工作機械の市場にも多大な影響を与えるのが現状です。
近年は大手企業だけでなく、中小企業や街工場などでも労働力不足を解消するために高性能な工作機械を導入するケースも増加しています。
国内工作機械メーカーランキング
自動車産業やIT機器産業の発展に伴い、国内では高い技術を有した工作機械メーカーが市場規模を拡大しています。
ここからは国内工作機械メーカーランキングを下記に表記し、それぞれを詳しく解説するので自社導入時の参考にして下さい。
順位 | メーカー名 | 特徴 |
1位 | ヤマザキマザック株式会社 | 他メーカーが海外に事業展開する以前から海外市場に目をつけ、早い時期からシンガポールやイギリス、中国などの国々に事業シェアを拡大 |
2位 | DMG森精機株式会社 | スタイリッシュなデザインが特徴的で、切削工作機械のシェアは世界最大級 |
3位 | オークマ | 累計販売実績が10,000台を超える門型マシニングセンタは看板商品で、今まで半世紀以上にわたって製造・販売 |
4位 | ファナック | ロボットやロボマシン事業以外にもマシニングセンタ製造・販売など幅広い事業を展開 |
5位 | 株式会社アマダ | プレス加工機やレーザー加工機、パンチング加工機などさまざまな工作機械の製造・販売 |
6位 | 牧野フライス製作所 | 高精度のマシニングセンタをメインに、航空機部品などを製造する工作機械を製造 |
7位 | 株式会社安川電機 | コントローラやインバータ、工作機械をはじめとした産業用ロボット事業などをさらに強化 |
8位 | 株式会社小松製作所 | プレス機などの工作機械の製造・販売を積極的に手掛ける工作機械メーカー |
9位 | シチズンマシナリー | シチズン時計会社の技術を応用して誕生した工作機械であるCincom(シンコム)シリーズが有名 |
10位 | THK株式会社 | 自動車の製造に欠かせないリングボールやロッドエンドなどの自動車部品も製造 |
11位 | 芝浦精機 | 近年注目を集めている3Dプリンターも製造・販売 |
12位 | 株式会社ジェイテクト | 主に航空機部品や農業機械用の部品の製造・販売 |
1位:ヤマザキマザック株式会社
引用:ヤマザキマザック
複合加工機の最大級の市場シェアを誇る工作機械メーカーが、ヤマザキマザック株式会社です。
他メーカーが海外に事業展開する以前から海外市場に目をつけ、早い時期からシンガポールやイギリス、中国などの国々に事業シェアを拡大して成功を収めました。
現在は各種工作機械の製造・販売だけでなく、AIやIoTなどの先進技術を導入した製造業のDX化や、スマートファクトリ―の構築にも注力しています。
2位:DMG森精機株式会社
DMG森精機株式会社は、ドイツの工作機械メーカーであるDMG社と資本業務提携を結んでいる大手工作機械メーカーです。
スタイリッシュなデザインが特徴的で、切削工作機械のシェアは世界最大級を誇っています。
5軸加工機や5軸マシニングセンタ、NC旋盤などさまざまな工作機械を製造・販売しているのもDMG森精機株式会社の特徴です。
3位:オークマ
船舶や航空機などに用いられる、大型部品製造用の工作機械の製造・販売に特化した工作機械メーカーがオークマです。
特に累計販売実績が10,000台を超える門型マシニングセンタは看板商品で、今まで半世紀以上にわたって製造・販売し続けています。
また門型マシニングセンタのほかにも、複合加工機や5軸マシニングセンタなど幅広い製品の製造・販売を手掛けているのも特徴的です。
4位:ファナック
引用:ファナック株式会社
ファナック株式会社は、NC装置製造のトップシェアを誇る企業です。
NC装置に特化している観点から、工場自動化を進めたい企業にはおすすめの工作機械メーカーともいえます。国内工作機械売上ランキングでは常に上位に位置しており、ロボットやロボマシン事業以外にもマシニングセンタ製造・販売など幅広い事業を展開している工作機械メーカーです。
5位:株式会社アマダ
板金加工機で国内の70%以上のシェアを占めている工作機械メーカーが、株式会社アマダです。
赤と黒で統一されたデザインが特徴的で、プレス加工機やレーザー加工機、パンチング加工機などさまざまな工作機械の製造・販売を手掛けています。
アマダの売上高の60%以上は海外からの売上で、特にアジア圏や欧米などに事業シェアを拡大しているのも特徴的です。
6位:牧野フライス製作所
引用:牧野フライス製作所
牧野フライス製作所は読んで字のごとく、フライス盤の製造・販売に特化した工作機械メーカーの1つです。
高精度のマシニングセンタをメインに、航空機部品などを製造する工作機械を製造しています。
世界的な事業シェアを確保しており、ドイツやアメリカ、シンガポールや中国など幅広いエリアで事業展開しています。
7位:株式会社安川電機
引用:安川電機
1915年の創業開始以来、モーターの製造・製造オートメ―ション化を経て、現在は工作機械などのメカトロニクス事業を積極的に手掛けているのが株式会社安川電機です。
自社で提唱しているコンセプトであるi3-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)に基づき、コントローラやインバータ、工作機械をはじめとした産業用ロボット事業などをさらに強化しています。
8位:株式会社小松製作所
引用:小松製作所
株式会社小松製作所は重機のほかにも、プレス機などの工作機械の製造・販売を積極的に手掛ける工作機械メーカーです。
特に板金加工に特化したメーカーで、プラズマ加工機やレーザー加工機など幅広い製品を取り扱っています。またプレス機の製造にも特化しており、多岐に渡る製造現場での対応が可能です。
9位:シチズンマシナリー
高級時計ブランドであるシチズン時計株式会社の子会社で、CNC自動旋盤の世界トップシェアを誇る工作機械メーカーがシチズンマシナリーです。
シチズン時計会社の技術を応用して誕生した工作機械であるCincom(シンコム)シリーズが有名で、さまざまな製造現場に優れたNC制御技術を提供しています。
10位:THK株式会社
引用:THK株式会社
THK株式会社はボールスプラインやLMガイド、ボールねじやLMガイドアクチュエータなどの機械部品の製造・販売を手掛ける工作機械メーカーです。
そのほかにも自動車の製造に欠かせないリングボールやロッドエンドなどの自動車部品も製造しています。
11位:芝浦精機
引用:芝浦精機
押出成型機や射出成型機、ダイカストマシンや航空機の大型部品の製造を可能にしている工作機械メーカーが芝浦精機です。
同社は近年注目を集めている3Dプリンターも製造・販売しています。
12位:株式会社ジェイテクト
引用:株式会社ジェイテクト
株式会社ジェイテクトは研削盤やマシニングセンタなど、幅広い工作機械を製造・販売している工作機械メーカーです。
主に航空機部品や農業機械用の部品の製造・販売を手掛けています。
またトヨタ自動車の子会社としても有名で、自動車向けの部品製造用の工作機械も製造しています。
工作機械業界の現状と今後の動向
2018年から2020年にかけて新型コロナウイルスや日米貿易摩擦などの影響を受け、工作機械の市場規模は縮小傾向にありました。
その後の2021年以降は新型コロナウイルスの影響が弱まり、その動向に伴って多くの企業が工作機械への投資を強化しました。
特に自動車関連や半導体関連事業への工作機械の導入が増加しているのが現状です。
さらに近年急速的に加速する半導体の需要増加により、工作機械の製造が間に合わない状況が続いています。
工作機械やCAMソフトを扱える人材の需要はどんどん増えているので、年収を上げたい人はCAMの講座を受けるのもおすすめです。
景気の先行指数とも呼ばれる工作機械業界の指標
工作機械は設備投資の中でも優先的に投資される観点から、景気の先行指数とも呼ばれています。したがって工作機械の需要が増えれば景気が上向きになり、需要が減少すれば景気は下向きになる傾向が強いです。
工作機械業界における過去の市場規模の推移を計測すると、一定のサイクルで増減を繰り返しています。具体的には2016年から2018年には市場規模は増加し、2018年から2020年にかけては市場規模が減少するなど、2年周期で増加と減少を繰り返しているのが現状です。
工作機械業界で進む自動化・省人化・5G
工作機械業界ではより生産性を高めるため、ITやIoTなどの先進技術を導入し製造業におけるDX化やスマートファクトリ―を導入する企業も多く見受けられます。
では工作機械業界内で進んでいる自動化や省人化や、5Gをはじめとした先進技術を解説します。
また下記に工作機械の自動化も実現している、製造業DXに関する記事も添付しますので参考にして下さい。
IoTの導入
近年の工作機械業界では、生産現場の生産性向上のためにIoTなどのIT技術を導入するケースが多いです。従来の日本の工作機械業界は高い精度や技術を有する反面ITシステムへの馴染みが浅く、海外企業に比べて業務管理効率で劣っています。
そこで業務・管理効率を向上できるIoTを導入することで、現場の工作機械の連携が高まるうえに効率的なデータ活用が可能になりました。
その結果として生産性・管理作業の効率化や、生産プロセスの効率化、メンテナンスコストの削減も可能になりました。
スマートファクトリーと5Gへの移行
工作機械業界では生産性向上のためのスマートファクトリーや、5Gへの移行が推進されています。スマートファクトリーとは生産現場の製造ラインや工作機械にインターネットを接続し、効率的なデータ検出などを実現した生産性の高い工場を意味します。
一方の5Gとは第世代移動通信システムの略称で、この機能には
- 高速大容量
- 高信頼・低遅延
- 多数同時接続
などの特徴があり、生産現場での機械の遠隔制御や各種データの高速転送、センサーによる生産データの的確な検出などの効果が期待されているのが現状です。
下記にスマートファクトリ―を詳しく解説した記事を添付しますので、導入時の参考にして下さい。
工作機械自動化の推進
従来の工作機械は機械への指令やセッティング、作動開始など全ての作業を人力で行っていました。
一方現在は慢性的な人員不足や熟練者の退職、コストダウンや作業時間短縮などを目指す観点から、工作機械の自動化の動向が推進されています。
工作機械を自動化すれば、人件費削減や生産性向上などのメリットがありますが、導入に多額の費用がかかるので中小企業では導入が遅れているのが現状です。
自社製品の生産に最適な工作機械メーカーを選ぼう
本記事では工作機械業界の現状や動向を解説し、国内工作機械メーカーランキングも紹介しました。
自社製品の生産性を高めるためにも製品の特徴を把握し、特性に適した工作機械を選択しなければいけません。また現在はさまざまなメーカーが独自の技術を駆使して高精度の工作機械を製造しており、選択が難しいのが現状です。
そこで工作機械メーカー選びに迷った際にはぜひ本記事を参考にして頂き、自社製品の生産に適した工作機械を選択してください。
