主にプラスチック樹脂を材料にして色々なものを作れる3Dプリンターの種類は非常に多いですが、大抵は使い方が共通しています。今回は基本的な使い方から高度なテクニックまで、詳しく解説していきます。
3Dプリンターの基本的な使い方の流れ
基本的な使い方の流れは、ほとんどの3Dプリンターで共通しています。その使い方を、ステップごとに確認していきましょう。
- 3Dモデルをスライス
- 3Dプリンターをセッティング
- 3Dプリンターを稼働
- 必要であれば後処理
3Dモデルをスライス
3Dプリンターを使用するためにはまず、3DCADソフトや3DCGソフトで作った3Dモデルを用意します。その3Dモデルはスライスソフトで輪切り状にしなければなりません。
輪切り状になったデータを元に3Dプリンターは造形を行います。スライスソフトは3Dプリンターに付属している場合がほとんどなので、3Dモデルのデータを読み込ませましょう。
3Dプリンターをセッティング
3Dプリンターを使うためには、まず材料を用意しなければなりません。熱溶解積層方式の場合はフィラメントの取り付け、光造形は容器に液体レジンを溜めるといった作業が必要です。
そしてノズルやレーザーの位置・造形を行うプラットフォームの角度などを調整します。そのようなセッティングが終わって初めて、3Dプリンターは使える状態になります。
データを用いて3Dプリンターを稼働
セッティングが完了したら、スライスされた3Dモデルのデータを3Dプリンターに送ります。送り方は、無線通信やフラッシュメモリなど、3Dプリンターによって多種多様です。データに問題なければそのまま3Dプリンターを稼働させ、後は待つだけで問題ありません。
必要であれば後処理を行う
開始から数時間が経過すると造形が完了します。大抵の場合は、土台となっているサポート材の除去や、表面に付着した液体の洗浄などの後処理が必要になるでしょう。熱溶解積層方式は表面の層が凹凸となって残りやすく、粉末固着方式は表面が粉でザラザラした質感になりやすいため、見た目を良くするためには研磨の作業も必要となります。
3Dプリンターの基本的な使い方を詳しく知りたい方には、こちらの動画もおすすめです。
3Dプリンターを使った高度なテクニック
3Dプリンターは、知識や技術力があれば高度な使い方も可能です。具体的にどういった使い方ができるのか、例をいくつか紹介していきます。
複数の材料を組み合わせる
3Dプリンターは基本的に、ひとつのモデルに対してひとつの材料しか使えません。ただし熱溶解積層方式の3Dプリンターは、テクニック次第で複数の材料を組み合わせることができます。
造形の途中であえて稼働を止め、別のフィラメントに交換することで、途中から色や質感が変わるモデルができ上がります。稼働途中でフィラメントを交換すると、ノズルが詰まるリスクがあるため、高い技術力が求められるテクニックです。
パーツごとに造形して巨大なモデルを作る
3Dプリンターは、一度に造形できるサイズの上限が決まっているため、上限の中に収まるよう3Dモデルの大きさを工夫しなければなりません。しかし3Dモデルを分割して複数のパーツに分けた場合、サイズ上限よりも大きなものを作ることはできます。パーツごとに造形した後で組み立てる形です。
パーツの組み立ては、接着剤やネジなどを使用しても問題ありません。パズルのようにパーツ同士が噛み合う構造にすることも可能ですが、複雑な3Dモデルを作り3Dモデルに忠実な造形を行う技術力が求められます。
他の部品と組み合わせる部品を作る
3Dプリンターで作ったパーツは、パーツ同士を組み合わせる他に、他の部品と組み合わせるという使い方も可能です。ギターのボディ部分やバイクのパーツなどが、実際に3Dプリンターで作られています。
すでに用意されている部品に合ったパーツを作らなければならないので、高い3Dモデリングの技術が必要です。造形前後の調整もしっかり行わなければいけません。上級者向けの使い方ですが、実際にできるようになれば、3Dプリンターの使える範囲が大幅に広くなるでしょう。
3Dプリンターを使用する際のコツ
3Dプリンターには造形中にモデルが壊れてしまったり、おかしな形で造形されるなど、失敗してしまうリスクがあります。そのため3Dプリンターを使用する場合は、造形を成功させることが何よりも大事です。
造形には時間がかかるので、なるべく造形時間を完了させることも考えなければなりません。どうすれば成功率を高め、造形時間を短縮できるのか、コツを紹介します。
造形の位置や向きを工夫する
スライスソフトで3Dプリンター用の輪切りデータを作る際には、造形を行う位置と向きを調整することができます。その位置と向きを工夫することが、失敗のリスクを下げるためのコツです。なるべく安定した状態で造形を行えば、造形途中で倒れることはないでしょう。
重心が高い向きで造形を行うと、支えるためのサポート材が必要になります。サポート材のコストを抑え、造形後にサポート材を取り除く手間を省きたいのであれば、重心が低い向きにしましょう。
中身をなるべく空洞にする
3Dプリンターで立体的なモデルを作る際に中を全部材料で埋めてしまうと、造形時間が長くコストも高くなるため、表に出ない内側はなるべく空洞になるように工夫しましょう。内部を全部材料で埋めなくても、骨組みのような構造にすれば耐久力は高められます。3Dプリンターで使える内部構造は数多くのパターンがあるため、色々と試してみると良いでしょう。
造形スピードや層の厚みを考える
3Dプリンターは造形スピードが速ければ速いほど、完成までの時間が短くなります。スライスソフトで輪切りをする際、層のひとつひとつを厚くすれば時間短縮ができるでしょう。
しかし造形スピードを上げるために層を厚くすると失敗するリスクが高くなり、造形後の質感が荒くなります。そのことを把握した上で、造形時間や精度・失敗のリスクを考えながら、速さと厚みを調整しましょう。
3Dプリンターの使い方のコツはこちらの記事でも紹介しています。
3Dプリンターの主な種類
自分に合った3Dプリンターを使うためには、種類や特徴もひと通り確認していきましょう。家庭向けと企業向けを合わせた3Dプリンターの種類は非常に豊富です。
種類 | 特徴 |
熱溶解積層方式 |
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光造形方式 |
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インクジェット方式 |
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粉末燃結方式 |
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粉末固着方式 |
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熱溶解積層方式
プラスチック樹脂でできたフィラメントという細長い材料を使って、造形を行う3Dプリンターです。フィラメントを熱で溶かして、ノズルから出しながら造形をするという仕組みになっています。一般的な3Dプリンターとして大勢の人がイメージするのは、この熱溶解積層方式ではないでしょうか。
熱溶解積層方式は構造がシンプルなので、家庭向けと企業向けを問わず数多くの製品が市販されています。リーズナブルな製品が多いため、個人で3Dプリンターを使うための入門モデルとして選ばれる方も多いでしょう。
光造形方式
液体状になっているプラスチック樹脂に、紫外線を照射させて造形を行う3Dプリンター。紫外線で硬化する性質を持つ、レジンプラスチックが主な材料です。方式が複数あるので製品の数は多く、低価格帯の製品も多いため、家庭向けとしても使用されます。
- DLP型:プロジェクターを使って面で照射
- LCD型:プロジェクターの代わりにLEDを使用
- SLA型:レーザーを使い、面ではなく点で硬化させる
インクジェット方式
液体上のプラスチック樹脂を、インクジェットプリンターのように吹き付けて造形を行う種類です。吹き付けた後に紫外線で硬化させるので、光造形方式のひとつとして扱われることもあります。
一度に使用できるプラスチック樹脂の種類は非常に豊富で、カラフルな造形に向いています。そのため、後で行う彩色作業の負担を減らすために、使用されることが多いです。複雑な仕組みとなっているため、価格は高めであり、主に企業で使用されるものと考えておきましょう。
粉末燃結方式
粉末状になっている材料にレーザーを照射させて、造形をしていく3Dプリンターです。熱で溶かして固めるため、耐久力の高いモデルができ上がります。
プラスチックだけでなく、金属材料を使えるものも少なくありません。元々は企業向けの高価格帯3Dプリンターですが、プラスチックだけを溶かす低価格帯モデルも、新しいものが次々と作られています。
粉末固着方式
粉末燃結方式と同じように粉末の材料を使用しますが、レーザーではなく接着剤で固めていくのが特徴です。異なる色の粉末を工夫して配置すれば、カラフルな造形を行えるというメリットがあります。ただ、全体的に価格が高いため、主に企業で使用されるものだと考えた方が良いです。
3Dプリンターの相場や選び方を知りたい方には、こちらの記事がおすすめです。
3Dプリンターは使い方次第で可能性が広がる
3Dプリンターの基本的な使い方や使用する際のコツは、ある程度共通しています。そのため、基礎として早めに学んでおいた方が良いでしょう。
同じ3Dプリンターであっても、使い方次第で造形物のクオリティは高くなり、作れるものの種類も広がります。高度なテクニックも学んで色々なものを作れるようになりましょう。