「AutoCAD入門者が初めに覚えるべきことは何?」と考える方も多いでしょう。設計や製図の現場で広く使われているAutoCADですが、初心者にとっては機能が多すぎて操作方法を覚えるだけでも苦労します。
しかし、基本を押さえ効率的な学習法を取り入れることで、初心者でも短期間でスムーズに使いこなせるようになります。
そこで本記事では、AutoCADの基本操作から効率よく学ぶためのポイントをわかりやすく解説。AutoCADに関する基礎的な知識を網羅できる記事となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
AutoCADとは?
AutoCADとは、Autodesk社が開発した、世界中で使われている2D・3Dの設計・作図用ソフトウェアです。初心者にも扱いやすいことから「CADの登竜門」と呼ばれることもあり、主に以下のような用途で利用されています。
- 2次元図面の作成や表示
- 建築設計(建物の図面)
- 機械設計(製品のパーツ図)
- 土木設計(道路や橋の設計)
特に2D図面を描く際の便利さから、世界で最も人気のあるCADソフトとしてシェアNo.1。AutoCADを使うことで、手書きでは難しい正確な設計や、細かい修正・調整も簡単に行えるため、効率よく高品質な図面を作成することができます。初心者でも基本操作を覚えればすぐに使い始めることができるでしょう。
特徴
AutoCADは2Dと3Dの両方の作図が可能で、設計者は平面図から立体モデルまで幅広く対応できるのが特徴。初心者でも使いやすいため、直感的なインターフェースにより基本操作を短時間で習得できます。
また、拡張性が高く、アドオンソフトを利用することで業務内容に合わせたカスタマイズが可能です。ワークフローの自動化やデータの保存・共有機能も充実しており、作業の効率化もできます。さらに、デスクトップ、タブレット、ブラウザなど多様なプラットフォームからアクセスでき、場所を問わず作業できる点も魅力です。
他のCADソフトとの高い互換性も備えており、データのやり取りもスムーズに行えます。
ライセンス費用
AutoCADソフトは通常ツールの「AutoCAD」と、AutoCADに業種に特化した7つの業種別ツールセットである「AutoCAD Plus」の2種類です。それぞれの費用は以下表を参照ください。
ツール名 | 価格 |
AutoCAD |
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AutoCAD Plus |
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AutoCADとAutoCAD Plusの違いは、機能面と価格にあります。
AutoCADは2D/3Dの基本機能を備えており、図面作成に必要な要素を網羅。一方、AutoCAD Plusは、基本機能に加え「トレース機能」や「共有機能」など業務効率を向上させる高度なツールが追加されています。また、カウント機能やAutodesk Docsへの直接保存機能など、作業を自動化・最適化する機能が強化されている点が特徴です。
無料で使用する方法
AutoCADは条件によって無料で使用することが可能です。詳細については以下の表を参照ください。
無料期間 | 条件 | |
一般・企業向け | 150日間 | 新規登録者対象 |
教育機関 | 無料(1年ごとに更新) | 学生証や研究結果などの提示を求められたときに提出する必要あり |
AutoCADには一般・企業向けの15日間限定の無料体験版があり、期間後は有料版の購入が必要です。そのため、永年無料で使用することはできません。
また、教育機関や学生向けには1年間無料のライセンスが提供され、条件を満たせば毎年更新可能です。学生証の提出は不要ですが、確認時には証明が必要なため、学生以外の不正利用は避けましょう。
AutoCADの「無料版を体験したい」「購入を検討している」という方は以下のリンクからダウンロードできます。
AutoCADをインストールする手順
AutoCADのインストールは難しくありません。以下3つの手順で行ってみましょう。
- ライセンスを購入
- インストール
- 利用を開始する
手順①ライセンスを購入
まず、AutoCADを利用するにはライセンスの購入が必要です。先ほど紹介したサイトへアクセスし、画面右にある「無料体験版ダウンロード」を選びます。
下記画面の必要項目を入力し、利用規約に同意した上でアカウントを作成し、購入手続きを進め、支払いを完了します。企業の場合は企業情報の入力も求められるので注意しましょう。
学生や教育機関向けライセンスを希望する場合は、在籍情報を入力して無料ライセンスを申請します。
手順②インストール
ライセンス購入後、AutoCADをダウンロードします。
公式サイトの画面右上にある「サインイン」からAutodeskアカウントでログインし、「無償体験版のダウンロード」または購入製品のダウンロードページに移動します。
必要な製品と対応OS(WindowsまたはMac)を選び、ソフトウェアをダウンロードします。その後、インストーラを開き、指示に従ってインストールを進めます。SMS認証や企業情報の入力が必要な場合は忘れずに対応しましょう。
手順③利用を開始する
インストールが完了したら、AutoCADを起動し、ログイン画面でAutodeskアカウントのIDとパスワードを入力します。ライセンスの認証が完了すると、ソフトウェアの利用が可能になります。以下の画面になると利用できるようになっています。
無料体験版の場合は、インストールした日から15日間が利用期間としてカウントされるので、早めに操作を始めましょう。準備が整えば、2Dや3Dの図面作成を開始できます。
入門者が覚えるべきAutoCADの基本操作
まずはAutoCADの入門者が覚えるべき基本操作について紹介します。覚えるべき操作は以下の4つです。
- コマンドの実行方法
- 図形の描き方
- 図形の消し方
- 注釈を入力する
コマンドの実行方法
以下はAutoCADの作図を行う初期操作画面です。画面左の機能一覧から選択すれば機能を使用できますが、作業を効率化するのであればコマンドを使用しましょう。
以下のコマンドは初めに覚えるべき5つです。
コマンド名 | ショートカット | 機能 | 操作方法 |
LINE | L | 直線を作成 | 始点と終点を指定して直線を描く |
Circle | C | 円を作成 | 中心点と半径、または直径を指定して円を描く |
Rectangle | REC | 四角形を作成 | 対角線上の2点を指定して四角形を描く |
Arc | A | 弧を作成 | 中心点、半径、始点と終点、または中心点と2点を指定 |
Polyline | PL | 連続的な線分や曲線を作成 | 頂点を指定し、複数の線分や曲線を連続して描く |
図形の描き方
ここからは図形の描き方について紹介します。先ほど紹介したコマンドを使用して、描いていきましょう。今回は、初期操作画面の下にある「ここにコマンドを入力」に入力していきます。
では、直線を描いていきましょう。まずは「LINE」と入力します。すると1点目を選ぶことになるので、自身が描きたい部分をクリックしましょう。
次に2点目を入力しますが、直線の長さはドラッグで選択または数値を入力することで直線を描くことが可能です。
2点目を入力すると直線を描くことができました。直線を1つ描いても続けて描くことができるため、描いてみましょう。2本の直線の完成です。
図形の消し方
次に図形の削除方法について解説します。今回は事前に四角形を描いておき、消す方法について解説します。
図解を削除する方法は画面左にあるハサミのマーク「トリム」を使用します。コマンドには「TRIM」と入力することが使用することが可能です。
例えば、四角形全てを削除する場合は四角形全てを選択することで削除ができます。また、線など部分的に削除したい場合は、TRIMを選択後、削除したい部分を選択しましょう。実際に上の線だけを選択すると以下のように削除可能です。
注釈を入力する
注釈とは図面に文字を挿入することです。実際に下記円の中に注釈を入れてみましょう。
注釈は「TEXT」と入力することで、文字を入れることが可能です。ここで注意したいのがテキストコマンドを入力すると、すぐに文字を入力できるわけではありません。まずは文字のサイズを選ぶ必要があるのです。
文字のサイズは直線の長さを選ぶ要領でサイズを変更できます。実際に文字を入力した画面が以下になります。
【入門者向け】AutoCADの図面を描く手順
AutoCADでは基本的な操作だけでなく、図面を描く手順も覚えておきましょう。初めは簡単な図面作成からで問題ないため、本記事と同じ手順で作成してみてください。
- レイヤーの設定方法
- 基準線の引き方
- 作図ツールを活用する
- 図面を印刷する
手順①レイヤーの設定方法
まずはレイヤーを設定していきしょう。レイヤーとは、画層とも呼ばれ作図において線の色や太さなどをあらかじめ設定しておくことで、後々複雑な作図になった際、視覚的にわかりやすくしておくために使用します。
レイヤーの設定は画面右で設定できます。自身が見やすい色で設定していきましょう。
今回は赤色の線を設定しました。
レイヤーは作図した際の見やすさが大きく変わるため、レイヤーを設定しておくことがおすすめです。
手順②基準線の引き方
次に基準線を引いていきます。基準線とは構築線とも呼ばれ、作図をする際にどの位置に図形を置くのかなど決める線となるため、必ず設定しておきましょう。構築線は画面右の上部にあります。
今回はX線とY線に基準線を引きました。基準線は始点と通過点で設定するため、自身が描きやすいように基準線を描いていきましょう。
手順③作図ツールを活用する
ここまできたら実際に作図を行っていきます。X軸とY軸の交差する点を基準に長方形を入力してみましょう。通常の図面を描く方法と同じになります。
今回は基準線を赤で記載しているため、長方形は黄色で作図してみました。
手順④図面を印刷する
上記の要領で作図を行っていけば最後は図面を印刷していきましょう。下記画像のプリントマークから印刷しましょう。
作図した図面を印刷した方が良い理由には、、画面上では見落としやすい細部や誤差を実際の縮尺で確認でき、正確な寸法や配置を把握しやすくなるからです。作図をするごとに印刷を行い、確認してみましょう。
以下の記事では、基本操作について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
AutoCADの操作を効率的に学習する方法
AutoCADの操作を効率的に学習する方法として、以下3つが挙げられます。
- 参考書を利用して体系的に学ぶ
- 公式動画を活用して無料で学習
- セミナーや講座を受講して短期間で学ぶ
方法①参考書を利用して体系的に学ぶ
AutoCADの操作を効率的に学ぶためには、参考書を利用して体系的に学ぶ方法があります。
参考書は、初心者でも理解しやすい基礎的な内容から応用的な操作まで段階的に学べる構成になっていることが多く、自分のペースで進められるのが特徴。特に、図解が多い参考書は視覚的に理解しやすくおすすめです。
ただし、最新バージョンに対応していないものや書籍を読んでも操作に慣れない場合もあるため、実際に手を動かしながら進めることが重要です。また、参考書は初期費用が発生しますが、一度購入すれば繰り返し利用できるため、長期的な学習に適しています。
ここでは、おすすめの参考書を2つ紹介します。
はじめて学ぶAutoCAD 2025 作図・操作ガイド
引用:Amazon
「はじめて学ぶAutoCAD 2025 作図・操作ガイド」は、初心者向けの定番入門書で、学校や専門学校でも採用されているロングセラーです。AutoCAD2025を使い、基本操作や作図を無理なく学べる構成で、線や円の描き方から編集、画層管理、文字入力、印刷まで幅広く網羅。練習問題を通じて手を動かしながら習得し、効率的な作業や応用力を身につけられます。
AutoCADの他のバージョンにも対応しているのも魅力の1つです。
著書名 | はじめて学ぶAutoCAD 2025 作図・操作ガイド |
出版社 | ソーテック社 |
価格 | 2,728円(税込) |
発売日 | 2024/06/07 |
はじめてのAutoCAD 2025/2024 作図と修正の操作がわかる本
引用:Amazon
「はじめてのAutoCAD 2025/2024 作図と修正の操作がわかる本」は、AutoCAD歴20年超えのインストラクターが執筆した本当にAutoCADで使用できる操作だけを集約した参考書です。
4つのステップで構成されており、基本操作→練習問題→ステップアップ問題→総合演習で学習できます。学習を進めるごとに知識が身についているか練習問題を行うことで、知識やスキルを定着させることが可能です。
著書名 | はじめてのAutoCAD 2025/2024 作図と修正の操作がわかる本 |
出版社 | ソシム |
価格 | 2,860円(税込) |
発売日 | 2024/05/27 |
方法②公式動画を活用して無料で学習
引用:Autodesk
AutoCADの操作を無料で効率的に学ぶには、公式動画を活用するのも1つの手段です。
公式動画は、基本操作から応用技術まで段階的に解説され、初心者にとってわかりやすい内容になっています。動画は実際の操作画面を見ながら学べるため、文字や図解だけでは理解しづらい操作手順やポイントも視覚的に把握できます。さらに、再生速度を調整して繰り返し復習することで、苦手な部分を重点的に克服することも可能です。
しかし、初歩的な内容がほとんどであるため、中・上級者には物足りないと感じるかもしれません。それでも、費用をかけずに始められる利点は大きいといえます。
方法③セミナーや講座を受講して短期間で学ぶ
AutoCADの操作を短期間で効率よく学びたい場合は、セミナーや講座を受講する方法がおすすめ。専門の講師による直接指導が受けられ、実務に即した内容や最新の活用事例が紹介されます。
また、講座の中で質問や相談ができるため、つまずきやすいポイントもその場で解消できます。一方で、受講料が高額になりやすく、自分のペースで進められない可能性も。ただし、短期間で必要なスキルを集中して身につけたい場合には、コストパフォーマンスの高い方法といえます。
ここではおすすめのセミナーを3つ紹介します。
Proskilll AutoCAD基礎セミナー講習
Proskilllが運営する「AutoCAD基礎セミナー講習」は、AutoCADを2日間でマスターできる集中講座です。会場受講、ライブウェビナー、eラーニングの3形式があり、基本操作から応用まで実務で使える技術を習得可能。
講座では、作図補助機能や編集、注釈、テンプレート活用などを学び、オリジナル教材が配布されるため復習も可能です。東京、名古屋、大阪、福岡で開催され、オンライン形式も選べるため、いつでもどこでも学習が可能です。
受講形式 | 会場/ライブウェビナー/eラーニング |
料金 |
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会場住所 |
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日建学院 Auto-CAD入門Webコース
引用:日建学院
日建学院のAuto-CAD入門Webコースは、初心者が短期間で基本操作を習得し、自信を持って使えるようになることを目的としています。無料体験版のインストールから作図練習まで進み、映像講義の要点をまとめたサブテキストや作図練習ファイルを使用して学習可能。
講師はオートデスク認定インストラクターが担当し、初心者から上級者まで幅広く指導しています。
受講形式 | Web |
料金 |
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会場住所 | なし |
ReCADemy AUTOCAD 入門講座
引用:ReCADemy
ReCADemyが運営するAUTOCAD入門講座は、初心者が基本操作を学び、実務で必要な作図や修正コマンドを習得する内容です。簡単な機械図面や平面図の作図を通じて、AutoCADの概念や機能を理解し、次のステップに進む基礎を構築します。
即戦力を目指したカリキュラム内容で講座を受講することで実務レベルのAutoCADスキルを身につけられるでしょう。
受講形式 | eラーニング |
料金 |
|
会場住所 | なし |
以下の記事では、おすすめのセミナーについて詳しく紹介していますので「他のセミナーも見てみたい」という方は是非ご覧ください。
AutoCADを学習する上での注意点
AutoCADを学習する上での注意点は以下の3つです。
- 動作環境や対応OSを確認する
- 実際に作図を行う
- 学習方法は併用する
動作環境や対応OSを確認する
AutoCADを学習する際には、事前に自分のパソコンがソフトの動作環境を満たしているか確認することが重要です。対応OSや必要なスペックを調べ、推奨されるメモリ容量やグラフィック性能を備えているかをチェックしましょう。
また、AutoCADには複数のバージョンがあるため、自分が学習に使うバージョンに適したインストール手順を確認することも大切です。不適切な環境で使用すると、動作が不安定になり、学習効率が下がる恐れがあります。事前準備を怠らず、快適な環境で学習を進めることがスムーズなスキル習得につながります。
実際に作図を行う
AutoCADを効率よく学ぶには、ただ講義を受けたり参考書を読むだけでなく、自分で実際に作図を行うことが必要です。基礎操作を学んだら、簡単な図面を繰り返し作成することで画面操作やコマンドの使い方に慣れていきます。
例えば、機械図面や建築の平面図など、具体的なテーマを決めて練習すると実践的なスキルが身につくでしょう。試行錯誤する中で失敗を経験しながら学ぶことで、課題の解決力やスムーズな操作が身につきます。
学習方法は併用する
AutoCADの学習では、テキストや動画、実践問題を組み合わせて多角的に学ぶのが効果的です。一つの教材に頼ると、理解できない箇所があった際に知識が偏ってしまう可能性も。複数の方法を併用することで必要な知識を補うことが重要です。
例えば、講義で全体像をつかみ、テキストでコマンドの詳細を学び、作図演習でスキルを実践的に深めるという流れが効果的です。また、オンライン講座など積極的に参加することで、より知識は身につきやすくなるでしょう。
AutoCADの入門におけるよくある質問
最後はAutoCADの入門者向けによくある質問をまとめています。
AutoCAD入門についてのまとめ
本記事では、AutoCAD入門者向けに基礎知識、インストール方法、画像を使用した操作方法、学習方法について網羅的に解説しました。AutoCADは世界でもトップシェアを誇るソフトであるため、使用できれば就職や転職において有利となるでしょう。
AutoCADを短期間で効率的に学習したい方はにはProskilllの「AutoCAD基礎セミナー講習」がおすすめです。実務レベルまで身につけたいという方は受講を検討してみてください。