多くの企業がDX推進を掲げ、競争社会で生き残るために試行錯誤しています。その中でも、特に「自社でのDX人材の育成が重要である」と捉えている企業は多いでしょう。
しかし、「どのデジタルスキルが必要なのか」「育成のための具体的なステップがわからない」と悩みを抱える企業は少なくありません。
また、企業ごとにDX人材育成における課題点も異なるため、「どれが自社にとっての最適解が見つからない」と悩むことも。そこで本記事では、「DX人材育成に成功した企業事例」や「DX人材育成のための4ステップ」など、企業に適した研修の見極め方やポイントを解説します。
DX人材育成が企業に必要な理由と背景

これからの企業にとって、DX人材育成が必要不可欠であるのは間違いありません。ここでは、なぜDX人材育成が必要なのかの理由と背景を説明します。経済産業省のDXレポートでは、「2025年の壁」と称してDX人材育成が必要な理由を大きく3つ挙げています。
| 少子高齢化 | 少子高齢化に加えて、2025年以降は75歳以上の団塊世代のエンジニアの大量引退 |
| 急速なIT技術の進化 | IT進化スピードが早すぎて、DX人材の育成が追いつかない |
| 旧システムの全体的見直しが必要 | 2025年以降に旧システムが限界に近づき、保守が困難に。新しいシステム導入がなければ、デジタル競争で敗者になる可能性がある |
このようにさまざまな背景があり、DX人材育成が早急に必要と考えられています。
2025年の壁とは
2025年の壁とは、先述した3つの課題を解決できない場合、DXが実現できないだけでなく、最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるというものです。

出典:経済産業省|DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
DX推進をしなかった場合、優秀なDX人材を外注して、一時的に対処できたとしても、労働人口の減少や社会全体でのDX化のあおりで、今後は外注だけに頼るのは困難になります。そのため、事業内容や企業理念を熟知している社員をDX人材として育成することが、競争社会で生き残るために必須なのです。
DX人材の指針について
DX人材を育成するべきといわれても「何を基準にしたらいい?」「何を目指すべき?」と悩む方は多いでしょう。そこで参考にしたいのが「デジタルスキル標準」です。
デジタルスキル標準とは、経済産業省がDX推進を担う人材の役割やスキルを定義したガイドラインです。このガイドラインを活用して、「自社に必要な人材像」を明確化し、DX人材育成を進めるよう促しています。
デジタルスキル標準は以下2種類に分類されます。

「DXリテラシー標準」では、全てのビジネスパーソンが備えるべきスキルを定義。一方、「DX推進スキル標準」では、DXを推進する人材をカテゴリー別に分類し、必要なスキルを明記しています。このガイドラインはDX推進の指針として参考になります。
しかし、実際は企業ごとに経営課題やDX推進度が異なるため、戦略的に改革するには、オリジナルの人材育成プログラムが必須と考えられるでしょう。
DX人材育成における企業の課題
ここからは、DX人材育成における企業の課題を紐解いていきましょう。なお下記3つの課題は、DX人材育成でよくぶつかる企業課題になります。
- どのスキルを優先的に育成すべきか理解できていない
- スキルレベルの見える化ができていない
- 学んだスキルが実務に反映されない
①どのスキルを優先的に育成すべきか理解できていない
どのスキルを優先的に育成すべきかは、まず「どんな経営課題が企業にあり、どう解決すべきか」を正しく把握する必要があります。なぜなら、表面的なデジタル化では根本的な経営課題は解決できず、一時的なしのぎにしかならないからです。
まず、あなたの企業にとって、「どのような経営課題」を抱えているかを具体的に洗い出しましょう。
- 収益性の向上
- 新規事業開発
- 従業員の働き方満足度
- 業務プロセスの効率化
上記の項目を軸に、「企業の理想の姿」と「現状」とのギャップを穴埋めしていく作業が最優先になります。この作業を通して「〇〇の経営課題を解決するために、このスキルが必要」と判断できれば、育成すべきスキルの優先度も自ずとクリアになります。
②スキルレベルの見える化ができていない
どのスキルを優先的に育成すべきかクリアになった次は、社員のスキルレベルの見える化をしましょう。「見える化ができない」とお困りの場合は、スキルマップの活用がおすすめです。スキルマップとは、各社員のスキルやレベルを可視化した一覧表です。
スキルマップの活用で社員一人ひとりのスキルの現在地点がわかったり、育成前と育成後で比較できたりと、DX人材育成計画に役立ちます。スキルマップに基づき、どの程度のデジタルレベルをもつ社員を「いつまでに?」「何人必要か?」「DX人材育成計画の規模の調整」といった具体的な未来計画も可能になります。
DX人材のスキルマップについては以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
③学んだスキルが実務に反映されない
せっかくデジタルスキルを習得しても、「実務に反映されていない」と感じるケースは意外と多いです。この原因は、「スキルを学ぶ人材」と「実際の業務内容」がリンクしていない場合によく起こります。
たとえば、以下の内容が挙げられます。
- 専門的なデータ分析を学んだ社員がデータにアクセスしない部署に配属
- 古いシステム利用のままで、新しいデジタルスキルが発揮できない
- スキルを学んだ社員の成長をサポートする体制が不十分
学んだスキルを実際の業務内容で携われる人事配置や、学んだ社員をサポートする体制を整えることで初めて実務に反映されるのです。
DX人材育成のための企業がするべき4つのステップ

DX人材育成における課題を踏まえた上で、具体的なDX人材育成の4つのステップを紹介します。
- DX人材のモデルを明確にする
- DXリテラシーを全社員で共有する
- 現場で役立つスキルを磨く
- 実務への適用・定着を実施する
①DX人材のモデルを明確にする
やみくもにDX推進を掲げるだけでは、挫折する危険性は高いです。ステップ1では、企業の経営課題をどう解決するかを見極め、DX育成するモデルを明確化しましょう。
具体的には、以下のように明確化します。
- マーケティング関連の課題解決なら、AIデータ活用できるデータサイエンティスト
- デジタル技術を活かしたサービス向上を目指すなら、ソフトウェアエンジニア
経営課題と企業戦略にあう「DX人材育成モデルのゴール」をはっきり定めてからスタートしましょう。
②DXリテラシーを全社員で共有する
ある特定の社員のみをDX育成しても、成功にはつながりません。ステップ2では、DXリテラシーを企業の全社員で共有する仕組み作りが大切です。なぜなら、企業の中には「めんどくさい」などの理由で前向きに捉えていない社員もいるでしょう。
デジタル活用による効率化で「給与アップ」や「残業の削減」といったメリットを示し、「自分ごと」として捉えてもらう必要があります。
「自分にメリットがない」と感じると、人は自発的に動きません。メリットを提示した上で、eラーニングなど手軽に学べるツールで全社員のDXリテラシーを向上させるのです。この取組により、企業全体でDXを推進する土台を築いていきましょう。
③現場で役立つスキルを磨く
より実務に直結する体験をさせ、実践レベルで使えるスキルまで引き上げましょう。そのために、ステップ3では体験型ワークショップの活用が有効です。ワークショップで手を動かし、「どのように仕事に活かせるか」のイメージが膨らむと、社員の学習意欲も同時に高められます。
以下はワークショップの参考例です。
- ビジネスデータ分析
- プログラミング
- 生成AIを活用した価値創出
- Webデザイン
学んだスキルや職種に応じた多様なワークショップを取り揃えるのが望ましいでしょう。
④実務への適用・定着を実施する
せっかく学んでも、定着しなければ水の泡です。最後のステップでは、学んだスキルを実務に活かし、定着させる体制としてOJTを取り入れましょう。OJTの場としては、まず小規模なプロジェクトを担当してもらうのがおすすめです。メンターのサポート付きで、小さくスタートさせてあげることで実践力と本人の自信を高められます。
そして徐々に、小さなプロジェクトから大きなプロジェクトを任せ、一人でも対応可能なレベルまで成長を促しましょう。こうすることで、実務とスキルがより深く結びつき、定着します。
DX人材育成に成功した企業事例7選

ここからは、DX人材育成に成功した企業事例を7社紹介します。それぞれの企業の課題や成功の秘訣を参考にしましょう。
| 企業名 | 企業課題 | 施策 |
| SGホールディング |
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| 味の素 |
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| ブリジストン |
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| 大成建設 |
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| ワコール |
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| 富士フイルム |
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| 第一三共 |
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SGホールディングス株式会社
SGホールディングスでは、サービスの開発や効率化を目指し、システム開発に注力していましたが、自社DX人材不足のため、外部ベンターに委託していました。そのため、自社の希望が通りにくいなど「自由がきかない」という問題がありました。
そこで、「HIKYAKU LABO」と題したオープンイノベーションを開始し、スタートアップ企業とのDX企画で新しい価値創造を推進。自社DX人材育成においては、AI、データ分析、ロボティクスなどの専門人材の育成に成功し、2020年度で8名だった専門人材数が約13倍に増加しています。
味の素株式会社
味の素では、原材料費の高騰や円安によるコスト増加に左右されない付加価値商品の開発が課題でした。また、世界34カ国に事業展開しているため、システムやデ ータ統合に関しても歴史的な課題に。
そこで、マーケティング力や加工技術力の向上のため「ビジネスDX人財育成コース」を設置します。抜本的な問題解決だけでなく、データ活用の利便性や最適コストを実現するために、「デジタル活用研修プログラム」を導入しました。
その成果として、2020〜2023年の4年間で社員の70%以上(約2,200 名)が初級認定を取得。活用事例を共有できるAI・ローコードツールのコミュニティも設け、個人の活用も積極的に支援しています。
株式会社ブリヂストン
ブリヂストンでは、競争優位の獲得や、生産性の向上ができる高度なデジタル人材の育成が課題でしたが、「ブリヂストン×東北大学共創ラボ」「デジタル100 日研修」の活用で、商品の開発に大きく貢献。独自のシミュレーション技術やデジタルを組み合わせ、プレミアムタイヤの最適化も達成しました。
新入社員研修プログラムでは、約2か月間におよぶデジタル研修でプログラミング習得を推進しており、さらなるDX人材育成の強化にも取り組んでいます。
大成建設株式会社
大成建設では、人手不足による長時間労働や建設資材価格の高騰、競争激化による低採算工事の受注などが課題に。解決策の一つとして、「人材が競争社会で優位性を発揮できる根源である」と認識し、DX戦略の一環として「デジタル人材戦略」を立案します。
AIやロボットとの連携によって、原価低減・工期短縮を図る取り組みを推進しました。その結果、2025年3月期の決算説明会では、グループ売上高が対前期比で大幅改善したと発表しています。
株式会社ワコールホールディングス
ワコールでは、個人のお客さま対応に物理的な限界があり、デジタル技術の活用をもって、この課題を越えることを目標にしています。そのため、社内にDX戦略委員会を設置。事業成長に欠かせないDX人材育成や、労働生産性向上を目指すITリテラシーオンライン学習ツールを導入しました。
その結果、成果の一部として、IT部門やEC部門などが社内横断でDX戦略を実現する体制を整えることに成功しました。これらの取組により生まれた新サービス・3D計測サービスでは、体験者数27万人超を達成しています。
富士フイルムホールディングス株式会社
富士フイルムでは、写真フィルムの需要減少という経営課題がありました。課題脱却に向けて、2021年にDXビジョンを制定。生成AIなど最新のデジタル技術を取り入れ、ビジネスモデルを変革する経営戦略を掲げます。
CEOをプログラムディレクターとした「All-Fujifilm DX推進プログラム」を設置。 現場主導のDXにも注力し、トップダウンとボトムアップの両輪でDXを推進しています。
その結果、在庫管理の精度を大幅に改善し、コミュニケーション工数では、従来より10分の1まで軽減することに成功しています。コスト大幅削減など大きな成果を出しました。
第一三共株式会社
第一三共では、グローバル市場での競争力強化や自社開発の継続的な売上拡大を維持するためにグローバルDXを設置。
DX人材育成において、企業オリジナルの4区分DXスキルと5段階レベルを定義し、計画的な人材育成を実施しました。2025年度末までに、ITパスポート取得1,000名を目標としていましたが、すでに2,448名が合格しています。
さらに、DX推進を支える基盤として、メタバースの活用やデータ分析による業務効率化に積極的に取り組みました。これらの技術を用いた結果、組織全体の生産性の向上に貢献しています。
同社に限らずIT関連職で新卒採用者に受験させる企業も多い、ITパスポート。DX人材育成の一環として取り入れるなら、短期集中でITパスポート試験対策できるセミナーの受講もおすすめです。知識がないと理解しずらいITテクノロジやITストラテジ対策も、ポイントを抑えて効率よく学べます。
| セミナー名 | ITパスポート試験対策セミナー |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 0円(無料キャンペーン中) |
| 開催期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京)・ライブウェビナー・eラーニング |
DX人材育成事例については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
企業のDX人材育成なら「DX研修・人材育成サービス」

「DX研修・人材育成サービス」は、企業のDX推進を本質的に支援するために設計された4ステップのプログラムを軸に、短期集中から中長期的な育成まで柔軟に対応できます。
初期段階ではDXスキルの可視化を行い、自社の現状を把握した上で課題を特定。その後、教育体制の構築からハンズオン研修、ワークショップによる実践力強化まで、一貫して実務に活かせるスキル育成を目指します。製造業・建築業に精通したコンサルタントが対応しており、現場の業務と並行してスキルを習得できる点が強みです。
DX人材育成の企業事例についてのまとめ
実際にDX人材育成に成功した企業事例を含め、自社に適した研修の見極め方を解説しました。DX人材育成の成功のポイントは主に「企業の経営課題の明確化」「課題解決のために必要なデジタルスキルの選定」「業務と連動した実践的な人材育成方法」です。
これからの競争社会で戦略的に優位性を確立するには、DX人材育成がポイントになるのは間違いありません。本記事を参考に、あなたの企業に適したDX人材育成の取り組みに役立ててください。