デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業が直面する多くの課題を解決し、新たな価値を創造する鍵です。2024年現在、多数の企業がDXを積極的に推進し、その成果を実感しています。
しかし、企業のDX化を進めようと思っても、どのように進めていくべきかわからないと悩む企業も多いでしょう。
そこで重要になるのが、DX推進に成功した企業の事例を知っておくことです。事例を知っておくことで、自社の場合にどのように進めていけばいいのかのヒントを得られるでしょう。
本記事では、DX推進を成功させた企業の事例を紹介しつつ、DXの基本概念や重要性についても解説します。これらの事例から学べる教訓や、DXを通じて企業がどのように変革を遂げたかについて深掘りしていきましょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
ここでは、DXの概要を解説します。
DXの概要
デジタルトランスフォーメーション、通称DXは、デジタル技術を用いて企業や組織のビジネスモデル、業務プロセス、そして企業文化を根底から変革し、それによって新しい価値を創出し、顧客体験を大幅に向上させるプロセスを指します。
この変革により、企業は市場における競争力を高め、効率性を向上させ、最終的には持続可能な成長を実現することが可能です。
DXは単にテクノロジーの導入に止まらず、そのテクノロジーを活用してビジネスを発展させていくことを目指しています。ここで重要なのは、デジタル化によって生まれるデータを活用し、より迅速に意思決定を行い、顧客ニーズに対応する新たなサービスや製品を創出することです。
なぜ今、DXが重要なのか?
現代のビジネス環境では、技術革新の速度がこれまでになく加速しており、その結果、企業は常に変化に適応し続けなければなりません。
加えて、デジタルを活用する消費者が市場の大きな割合を占めるようになり、彼らはパーソナライズされたサービスや製品、即時性、そして透明性を強く求めています。
このような消費者の期待に応えるためには、企業はデジタル技術を活用し、自身のビジネスモデルを革新する必要があります。さらに、グローバル化が進む中で、世界中の競合との差別化を図るためにもDXは不可欠です。この背景には、技術の進化だけでなく、環境変化、社会の変動、経済のグローバル化など、多様な要因が絡み合っています。
DXの取り組みをしている企業の事例
ここでは、DXの取り組みをしている企業の事例を以下4つ紹介します。
- トヨタシステムズ
- パナソニック
- SBテクノロジー
- シーメンス
トヨタシステムズ
トヨタシステムズは、「デジタルシフト」に挑戦し、トヨタグループをデジタル企業へと変革することを目標としています。これには、「デジタル化」と「レガシーモダナイゼーション」の両面からのアプローチが含まれます。
デジタル化とは、データの共有とデジタル技術の活用で仕事のやり方を変えること、そして新しいビジネス・サービスを生み出すことです。
トヨタシステムズは、これらの目標を達成するために、寄り添い支援、データのオープン化、レガシーモダナイゼーションに注力しています。デジタル化への具体的な取り組みとして、アプリ開発、データ分析、コンサルティングなどが含まれます。
また、トヨタシステムズ独自のクラウドプラットフォームを用いてデータのオープン化を進め、新しいビジネス・サービスの創出を目指しています。さらに、コンテナやマイクロサービスを活用してレガシーな基幹システムを軽く柔軟なシステムへと変革し、デジタル化を実現しているのも特徴です。
トヨタシステムズによるこれらの取り組みは、トヨタ及びトヨタグループが直面する現代の課題に対応し、自動車産業全体を支える会社へと進化するための重要なステップです。そして、これらの努力は、社会課題の解決にも貢献することを目指しています。
(参考:トヨタシステムズのデジタル化の取り組み | トヨタシステムズ)
パナソニック
パナソニック ソリューションテクノロジーは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、日本社会が直面する労働人口減少問題に対してデジタル技術を活用したソリューションを提供し、社会貢献を目指しています。
1988年の創業以来、ITインフラの構築やソフトウェア開発に取り組み、クラウド、セキュリティ、AIソリューションなどの領域でサービスを拡大してきました。
パナソニック ソリューションテクノロジーのミッションは、デジタル技術を駆使して、現場の力を解放し、顧客企業の競争力を高めることです。
企業としては、同社をただのIT企業やシステムインテグレーターではなく、現場知見とデジタル技術を融合させたデジタルソリューション企業と位置づけています。
このアプローチにより、製造業やホワイトカラーの働き方改革など、さまざまなフィールドで顧客に真に価値あるソリューションを提供することを目標にしています。
パナソニック ソリューションテクノロジーのDX取り組みは、デジタルで人を解放し、人の可能性を解き放つことを目指し、社会課題の解決に貢献するとともに、事業成長と働きがいの実現が目的です。
これらの活動を通じて、関わる全ての人々が幸せになる持続的成長を追求しています。
(参考:パナソニックソリューションテクノロジーのDX | パナソニック)
SBテクノロジー
SBテクノロジーは、ソフトバンクグループの中核企業として、ICTサービスの提供を通じて「情報革命で人々を幸せに」という経営理念のもと、社会に新しい価値を提供し続けることを目指しています。
この理念に基づき、SBテクノロジーは「日本企業の競争力を高めるクラウドコンサル&サービスカンパニー」となることが長期的な目標です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の実践を通じて、業務効率化やコスト削減を超えた生産性向上の改革に取り組んでいます。SBテクノロジーにおけるDXは、クラウドやAI、IoTなどの先端技術を活用して事業の変革を行い、企業価値を高めることです。
また、お客様が抱える様々な課題をICTサービスで解決し、豊かな情報化社会の実現に貢献していきたいとしています。
2013年度からは3年ごとに中期経営計画を策定し、クラウドやセキュリティ領域を中心に成長を目指しています。2022年度から始まる新中期経営計画では、「顧客のDXを支援するセキュリティ&運用サービスの提供」「顧客の変革を実現するデータを活用した共創型DXの推進」「DX人材の育成・創出のためのコンサルティング&IT教育」の3つの重点テーマをもとに活動中です。
ほかにも、セキュアなクラウド基盤の提供、データ活用によるビジネス変革、デジタル技術を活用する人材の育成という3つの力が、DX実現のために重要だとSBテクノロジーは考えています。
これらの取り組みを通じて、お客様のDX実現に貢献し、サプライチェーン全体のサイバーセキュリティ対策の強化など、社会全体の情報セキュリティ向上にも寄与しています。
また、テレワークの導入やオンラインコミュニケーション環境の構築など、DX推進に向けた環境整備の取り組みも進めているところです。
これらの取り組みは、SBテクノロジーが多様な働き方と挑める環境で先進技術と創造性を磨きながら、社会に新しい価値を提供し続ける企業を目指す上での重要なステップです。
シーメンス
シーメンスは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、消費財業界において製品の迅速な市場投入と品質・安全性の維持を可能にするソリューションを提供しています。
特に、食品および消費財業界は、多様化する消費者ニーズに対応し、品質と安全性を維持しながら製品を速やかに市場に投入していかなければなりません。
DXソリューションを活用することで、シーメンスは食品および消費財業界のお客様が俊敏性と生産性を向上させ、製品の品質保証と安全性の維持をどのように実現したかを示します。
具体的には、Opcenter RD&Lと呼ばれるCPR業界特化型PLMシステムを通じて、配合とレシピ開発を包括的にサポートします。
これにより、競争力のある製品を生み出すための研究開発から配合設計、製造プロセス設計までの一連の開発業務を効率化し、高度な経験とノウハウに基づく人的管理を実現可能です。
また、工場のデジタルツインの活用により、工場計画における様々な課題に対処します。デジタルツインについては、下記の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
デジタルツインを用いることで、工場全体をデジタルで表現し、ライン稼働の見える化、生産量増加への改善、コミュニケーションの活性化などのメリットを享受できます。
このアプローチにより、対象が巨大であるために生じる計画の進行中の問題を解決し、より効果的な工場運営を実現していけるのです。
シーメンスのDX取り組みは、消費財業界における製品開発と工場運営の課題に対して、デジタル技術を駆使した革新的な解決策を提供します。
これにより、消費財メーカーは迅速な市場投入と品質・安全性の維持を両立させることが可能となり、将来のビジネス変革に向けた強固な基盤を築けるでしょう。
(参考:デジタル・トランスフォーメーション(DX)の取り組みと活用事例のご紹介 | シーメンズ)
また、下記では製造業のDXについても解説しています。
DXのメリットとデメリット
以下は、デジタルトランスフォーメーション(DX)のメリットとデメリットを一つの観点からまとめた表です。
この表では、業務効率、コスト、ビジネスモデル、顧客体験、市場対応、データ活用という6つの観点から、DXが企業にもたらすメリットとそれに伴うデメリットを比較しています。
観点 | メリット | デメリット |
業務効率 | 業務プロセスの効率化と自動化 | 初期導入における高コスト |
コスト | 運用コストの削減 | 短期間のコスト増大 |
ビジネスモデル | 新しいビジネスチャンスの創出 | 従来のビジネスモデルへの適応困難 |
顧客体験 | カスタマイズされたサービス提供による顧客満足度の向上 | 顧客データ管理の複雑化 |
市場対応 | 迅速な市場への適応と反応 | 競争激化による市場での差別化困難 |
データ活用 | 意思決定の迅速化と精度の向上 | データセキュリティとプライバシー保護の課題 |
この表を通して、DXの推進は企業に多くのメリットをもたらす一方で、初期投資の大きさ、セキュリティリスクの増加、組織文化の変革などの課題にも直面することが理解できます。
したがって、DXを成功させるためには、これらのメリットを最大限に活かしつつ、デメリットに効果的に対処するバランスの取れた戦略が必要です。
まとめ
本記事では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の先進企業であるいくつかの企業の事例を紹介しました。
事例の企業は、テクノロジーを活用して業務の効率化、コスト削減、生産性の向上を図るだけでなく、新たなビジネスモデルの創出や競争力の強化にも積極的に取り組んでいます。
これらの事例を参考に、DXにおける最新のトレンドや技術の進化を常に注視し、自社のビジネスモデルや業務プロセスの見直しを検討することが重要です。そのためには、企業内でDX人材を育成していかなければなりません。
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