AutoCADのハッチング機能を使って、特定の範囲を色付けしたい、模様付けしたいと考える方も多いでしょう。しかし、自分のイメージ通りにハッチングできないと悩む人も少なくないはずです。
そこでこの記事では、AutoCADのハッチング機能についてわかりやすくまとめました。
ハッチングの使い方をマスターしたい方は、ぜひ参考にしてください。
AutoCADのハッチング機能とは?
AutoCADで利用できるハッチングとは、特定の範囲に塗りつぶし、斜線、模様を反映する機能です。参考として、ハッチングの使用シーンを以下にまとめました。
- タイルを敷く範囲にタイル模様を反映する
- 地面に土の模様を反映する
- 床の高さをハッチングの斜線の種類で分ける
- 構造物・建築物・設備の断面の位置を視覚的に表示する
つまりハッチング機能は、AutoCADの線や図形だけだとイメージしにくい部分を、わかりやすく表現するために用います。
ちなみにハッチングは表現をわかりやすくするために用いる機能であることから、具体的な表示ルールがありません。CADソフトによって利用できるハッチングのパターンも違うので、まずはAutoCADといった汎用性の高いCADソフトのハッチングに触れてみることをおすすめします。
AutoCADのハッチング機能の起動方法
まずハッチング機能はAutoCADの「ホーム>作成」の右下に表示されています。
機能をクリックすることにより、次の表現を選択可能です。
ハッチングの種類 | 用途 |
ハッチング | 新しくハッチングを表示させたい |
グラデーション | 既存の枠内にグラデーションカラーを設けたい |
境界の作成 | 平面図に土地の境界は院を表示させたい |
上記のなかでも頻繁に利用するが「ハッチング」という項目です。
ハッチングを起動することにより、自由に斜線や模様を挿入できるようになります。
またハッチング機能は、コマンドライン(画面下側)に「HATCH」と入力しても起動が可能です。すばやく起動させたい際には、コマンドラインを活用してみてください。
またAutoCADの概要をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
主な機能や強みを紹介しています。
AutoCADのハッチング機能の構成
AutoCADのハッチング機能の画面は、以下の項目で構成されています。
- 境界
- パターン
- プロパティ
- 原点
- オプション
各項目の用途や使うタイミングをまとめているので、ぜひ全体の機能を理解したうえでハッチング作成に進みましょう。
境界
AutoCADハッチングの「境界」は、閉じられた図形の枠内をクリックするだけで簡単にハッチングを反映できる機能です。
手軽にハッチングを反映できるのはもちろん、上記のようにコマンドラインに表示される「作図」をクリックすれば、任意のハッチング境界を描くことも可能です。
パターン
AutoCADハッチングの「パターン」は、ハッチングとして表示する模様を自由に選択できる機能です。既存のパターンが100種類以上用意されており、ハッチングした部分を選択しながら別の模様に変更するといった使い方ができます。
ハッチングをする際には、パターンの項目を利用することがほとんどです。
プロパティ
AutoCADハッチングの「プロパティ」は、表示したハッチングの情報を調整・設定するための機能です。例えば、次のポイントを変更できます。
- レイヤーの種類
- 透過率
- 角度
- サイズ
例えば、ハッチングの表現を弱めたい場合には透過率を下げて薄くできますし、ハッチングのサイズが小さい場合には倍率を変えるといった使い方が可能です。ハッチングの表現をより良くするために用いる項目だと覚えておきましょう。
原点
AutoCADハッチングの「原点」は、模様の位置合わせのために使う機能です。
ハッチングの模様の始まりの位置(原点)を設定することにより、きれいな見栄えのハッチングを表示できます。
「レンガ模様が中途半端な位置から表示されている」「枠の端で模様が切れている」といった際に利用できるのが特徴です。
オプション
AutoCADハッチングの「オプション」は、表示されたハッチングが自動調整されるように設定する機能です。
同じ図面上で縮尺が異なる図形を載せる場合に活用しやすく、表示するハッチングごとにサイズを調整したり、ほかのハッチングに設定したプロパティを反映したりする際に役立ちます。
AutoCADのハッチング機能の使い方
AutoCADのハッチング機能の使い方を画像付きで紹介します。
ハッチング機能の使い方がわからないとお悩みの方は、AutoCADの操作をマスターする参考にしてください。
AutoCADをより効率よく、高精度に使いこなせるCADエンジニアを目指すなら、自動化スキルを習得することもおすすめです。基礎的なスクリプトでの自動化だけでなく、LISPを使った自動化も学べる以下のセミナーもあります。
枠内にハッチングを挿入する
作成した図面の範囲にハッチングを挿入したい場合には、まず閉じられている図形を準備しなければなりません。参考としてAutoCADの「ホーム>作成>四角形」から四角形の図形を準備してみました。
続いて「ホーム>作成>ハッチング」を選択し、ハッチングの画面を開いたら「パターン」の項目から挿入したいハッチングの模様をクリックしましょう。
あとは上記のように、四角形の枠を左クリックするだけでハッチングの模様が表示されます。
ハッチングは、図形と別のグループにまとめられているため、挿入後は自由に変更・削除が可能です。
任意の範囲にハッチングを挿入する
図形の枠を関係ない範囲にハッチングを挿入したいこともあるでしょう。
その際には、AutoCADハッチング機能の「パターン」にあるデザインを選んだ後に「コマンドライン(画面下側)>作図」を選ぶことで任意の範囲にハッチングを挿入できます。
例えば、四角形の左上側にだけハッチングを設けたい場合には、以下に示すオレンジ色の枠の位置をクリックすることにより、外側にハッチングの挿入が可能です。
「構造物の外側を土の表現にしたい」「複雑な図形なので自分でハッチングしたい」という際に役立ちます。
ハッチングの線の間隔を調整する
ハッチングの模様が細かすぎて線の表示が見えなくなった場合には「プロパティ>倍率」から、ハッチングの表示サイズを変更するのがおすすめです。
基本的にハッチングの倍率は1.00として設定されています。
よってこの値を大きくしてあげればハッチングのサイズが大きくできます。
上画像のハッチングは、サイズを1.5倍に変更しました。
見た目の印象が変わるほか、印刷でもしっかりとハッチングの模様が表示されるようになります。
ハッチングを中抜きする
図形の内側をハッチングする際に、ロの字型のように中心だけハッチングせずに表示させたい方もいるでしょう。その際には「オプション>島検出」の機能が役立ちます。
AutoCADのハッチングに搭載された島検出は、複数の図形が組み合わさっているとき、内側に表示されている図形の範囲を除いてハッチングを表示できる便利な機能です。参考として、以下のように2つの四角形を挿入してみました。
ここに「パターン」からハッチングの図形を挿入してみると、内側の四角形までしかハッチングが表示されなくなります。あとは内側の四角形を削除すれば、中抜きの完成です。
また島検出は、上画像のように円形など、異なる図形であっても反映されます。
島検出の機能は最初から標準設定になっているので、ぜひ複数の図形を並べた状態でハッチングをしてみてください。
またAutoCADの他の機能の使い方を詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
インストール方法や基本ツールの使い方を解説しています。
AutoCADで自分好みのハッチングパターンを設定する
AutoCADにあらかじめ搭載されているハッチングパターンではなく、自身が任意で設定したハッチングを挿入したいと考えていないでしょうか。もし自分好みのハッチングパターンを設定したいなら、上画像のようにテキストファイルを使って自作するのがおすすめです。
まず、テキストファイルに数字を羅列することによって、自由なハッチングパターンを用意できます。以下に示す順番で数字を入力していくことで簡単にパターンの準備が可能です。
- 描く線の角度
- 原点のX,Y 座標
- 0の変位-X
- 任意の値の変位-Y
また、AutoCADでハッチングを自作する手順を以下にまとめました。
- テキストファイルを用意し「〇〇.pat」という拡張子に変更する
- 挿入したいパターンの模様を数値として入力する
- AutoCADの「オプション>ファイル>サポートファイルの検索パス」からデータを追加する
これで新たなパターンが追加されます。
自由にパターンを作成できるので、普段からよく使うパターンを準備してみてはいかがでしょうか。
AutoCADのハッチングについてよくある質問
AutoCADのハッチングについてよくある質問をまとめました。
AutoCADのハッチングについてまとめ
AutoCADのハッチングは、図面や図形を見やすくするために欠かせない機能です。
業務でも利用頻度の高い機能ですので、AutoCADを利用している方、これから利用しようと考えている方は、本記事の情報を参考にしてみてください。
手軽にハッチングを挿入できるのはもちろん、豊富なハッチングのパターンを自由に利用できます。