現在の製造業を支える産業機械の1つがマシニングセンタで、横型や縦型、門型や5軸など多様な機種が製造されています。その中でも横型・縦型のマシニングセンタは、製造業をはじめさまざまな分野への導入が進んでいるのが現状です。
そこで本記事では横型マシニングセンタを詳しく解説し、縦型との違いや導入のメリットやデメリットを紹介します。
横型マシニングセンタとは?
横型マシニングセンタは加工物を横向きに切削加工する工作機械を指します。横型マシニングセンタは自動的に加工面を設定してくれるので、高精度な加工が可能です。
切削で発生する切りクズや切り粉なども加工面に堆積せず、下部に落下するので加工面を傷つける心配もありません。
縦型マシニングセンタとは?
縦型マシニングセンタは、加工物に対して垂直に取り付けられた回転軸に切削工具を取り付け、垂直方向に切削加工します。縦型マシニングセンタは固定テーブルに加工物を設置できるので、固定用の治具も使いやすい点もメリットです。
また構造的に省スペースで設置できるので、小規模の工場でも簡単に導入できます。縦型マシニングセンタは加工物を上部から加工するため、加工面が広い多品種小ロットの生産や金型加工などに最適の工作機械です。
横型と縦型のマシニングセンタの違いを解説
縦型と横型マシニングセンタでは
- 加工方向の違い
- 構造的な違い
- 加工精度の違い
- 製品のセッティングの違い
- コスト面の違い
- 設置面積の違い
などの点が異なります。ではそれぞれの違いを詳しく解説するので導入時の参考にして下さい。
加工方向の違い
最初に挙げられるのが加工方向の違いです。前述のように縦型は加工物を上部から加工し、横型は横向きに加工します。
加工方向が違えば当然ながら加工物を置く方向も異なり、縦型は加工物を機械に対して水平に設置しますが、横型は垂直に設置します。
構造的な違い
前述のように縦型のマシニングセンタは、加工物に対して垂直方向に取り付けられた加工軸に切削工具が取り付けられています。一方の横型マシニングセンタは切削工具が地面に対して水平に取り付けられ、加工物に対して水平方向に研削加工を行います。
加工精度の違い
加工精度の高さの違いも、縦型と横型の相違点です。縦型と横型のマシニングセンタの加工精度の違いはメーカーによっても異なり、どちらの精度が高いかは一概には判定できません。
縦型マシニングセンタは構造上切削油が切削工具に届きやすく、一方の横型マシニングセンタは加工面切りクズや切り粉が加工面に堆積しません。このような精度に関するメリットを検討し、自社製品の加工に適したマシニングセンタを選びましょう。
近年の製造業においては、加工精度を高めるためにデータをデジタル化して検証する製造業DXが急速的に進んでいます。下記に製造業DXを詳しく解説した記事を添付するので参考にして下さい。
製品のセッティング効率の違い
製品のセッティング効率に関しては、横型よりも縦型マシニングセンタの方が簡単です。縦型では水平方向に設置されたテーブルに、製品を設置するだけなので手間がかかりません。
特にテーブルが低い縦型マシニングセンタであるほど、簡単に製品設置が可能です。またさらに縦型は、製品を固定できる治具をしやすい点もメリットといえます。
コスト面の違い
横型マシニングセンタに比べて縦型は簡単な構造のため、横型よりも安く購入できます。
設置面積の違い
縦型と横型では、設置面積も異なります。縦型マシニングセンタは加工物に対して回転軸が垂直方向に設置され、上から下向きに加工するので広めの加工スペースを必要としません。
一方の横型は地面に対して加工物が水平方向に設置され、横向きに加工するので広めのスペースが必要です。
横型マシニングセンタの種類と構造を紹介
現在は多様なユーザーのニーズに応えるため、高精度・高機能な横型マシニングセンタが研究・開発されています。では横型マシニングセンタの種類と構造を紹介します。
横型マシニングセンタの種類
横型マシニングセンタは、切削工具を設置する回転軸である「シャンク」の大きさで30・40・50・60番に分類されます。下記に各番号の加工用途を紹介するので参考にして下さい。
- 30番:アルミダイキャスト製品などの非鉄金属や小物部品の加工など
- 40番:鉄製品やアルミ鋳物、大型ダイキャスト製品の加工など
- 50番:金型や金型部品、大型鉄製品の加工など
- 60番:建築鉄鋼部品や船舶部品など
一般的にシャンク径が大きいほど剛性が強いうえに大型切削工具を設置できるので、大型製品や鉄鋼製品などの加工にも対応できます。
横型マシニングセンタの構造
前述のように横型は地面に対して回転軸が水平方向に設置され、横向きに加工します。水平方向に加工するので、切削加工で発生する切りクズや切り粉は加工面に堆積しません。
横型マシニングセンタでは、加工中に反対の加工治具での加工物の脱着を可能にした、パレットチェンジャーを活用すればよりスムーズな作業が可能です。近年はパレットチェンジャーでの加工物の脱着を手動ではなく、スマートファクトリーによる自動化を行って全自動化を図る企業も増えています。
下記にスマートファクトチーを詳しく解説した記事を添付するので参考にして下さい。
横型マシニングセンタのメリット
横型マシニングセンタは高い機能性を有した工作機械で、さまざまな企業への導入が進んでいます。では横型のメリットを解説します。
加工面に切りクズや切り粉が堆積しない
加工面に切りクズや切り粉が堆積しない点も、横型マシニングセンタを導入するメリットです。横型マシニングセンタは構造的な観点から加工時に切りクズや切り粉が下部に落下し、加工面に堆積しないので加工精度を高めることができます。
特に金型キャビティの加工では縦型マシニングセンタでは切りくずの除去が困難ですが、横型なら簡単な除去が可能です。
剛性が高い
横型マシニングセンタは複雑な構造で構成され、剛性が高いのもメリットです。縦型マシニングセンタでは加工できない大型製品や、自動車のエンジンシリンダーをはじめとした重量物も加工できます。
耐震性に優れている
耐震性に優れている点も、横型マシニングセンタのメリットです。横型マシニングセンタは複雑かつ精巧に設計されているので、静動的荷重下でも動的荷重下でも同程度の耐震性を保持できます。
横型マシニングセンタのデメリット
横型マシニングセンタは高機能な工作機械ですが、メリットと同様にデメリットも発生します。では横型マシニングセンタのデメリットを紹介します。
加工面に切削油が届きにくい
横型マシニングセンタでは、加工面に切削油が届きにくい点もデメリットの1つです。加工物が切削工具と水平状態で設置され、冷却用の切削油が落下しやすいので加工面に届きにくい構造になっています。
切削油が切削工具に届きにくいので、工具の早期劣化などに繋がるケースも多いです。
加工面の広い製品には不向き
加工面が広い製品を加工しにくい点も、横型のデメリットです。製品と切削工具が水平に設置されているので、重量があるうえに加工面が広い製品を加工する際には、振動による力が固定治具のクランプ力を超える場合があります。
振動による力で加工中に製品がクランプから外れれば、機械の故障や災害にも繋がりかねません。一方の縦型マシニングセンタは、テーブルに製品を据え置いて設置するだけなので重量に関係なく設置・固定できます。
多額のコストがかかる
横型マシニングセンタは、縦型マシニングセンタよりもコストがかかる点もデメリットです。横型マシニングセンタは縦型マシニングセンタよりも複雑で精巧な構造で作られているため、購入時に多額のコストがかかります。
しかしパレットチェンジャーをはじめとした多様な機能を有しており、大量生産を前提とした導入にはおすすめです。一方で多品種少量生産するのであれば、縦型マシニングセンタがおすすめといえます。
おすすめの横型マシニングセンタメーカー3社を紹介
高機能で大量生産に適した横型マシニングセンタですが、実際にどのようなメーカーで製造・販売されているのでしょうか。下記におすすめの横型マシニングセンターメーカーの特徴を表記し、それぞれ詳しく解説するので自社導入時の参考にして下さい。
メーカー | 特徴 |
ヤマザキマザック株式会社 | CNC旋盤やレーザー加工機、複合加工機や5軸加工機、ハイブリッド加工機までさまざまな工作機械を製造・販売 |
エンシュウ株式会社 | IoTとの連携による生産自動化をトータルサポートしてくれる工作機械メーカー |
キタムラ機械株式会社 | マシニングセンタの開発や製造・販売、FA関連機器の開発や製造販売、製造業関連のソフトウェアなどを開発 |
ヤマザキマザック株式会社
横型マシニングセンタのほかにもCNC旋盤やレーザー加工機、複合加工機や5軸加工機、ハイブリッド加工機までさまざまな工作機械を製造・販売している工作機械メーカーがヤマザキマザック株式会社です。パレットサイズ口400㎜から1250㎜の範囲内の、多品種少量生産から量産生産まで対応可能な横型マシニングセンタを製造・販売しています。
エンシュウ株式会社
エンシュウ株式会社はマシニングセンタやレーザー加工機の製造・販売のほかに、IoTとの連携による生産自動化をトータルサポートしてくれる工作機械メーカーです。横型マシニングセンタにおいては、高速化による加工時間の短縮と消費電力の削減に成功した「GE30H」や「JE50S」などの優れた製品を開発しています。
キタムラ機械株式会社
マシニングセンタの開発や製造・販売、FA関連機器の開発や製造販売、製造業関連のソフトウェアなどの開発を手掛けている工作機械メーカーがキタムラ機械株式会社です。近年は「Mycenter-HX300iG/400」をはじめとした、高い生産能力を有した横型マシニングセンタを多数開発しています。
横型マシニングセンタを有効活用しよう!
今回は横型マシニングセンタを詳しく解説し、縦型との違いや導入のメリットやデメリットを紹介しました。横型マシニングセンタを導入すれば自社製造ラインの生産性を高め、作業時間や工程の短縮などさまざまなメリットを得ることができます。
今後自社の生産性を高め、収益性を高めるためにも本記事を参考に自社生産に適した横型マシニングセンタを選択・導入してください。