NC工作機械はマシニングセンタのような人の手での設定ではなく、「NCプログラム」と呼ばれるプログラムで動作設定されています。NCプログラムは自動化を促進する優れたツールなので、自社生産ラインへの導入を検討している企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回はマシニングセンタでは見られないNCプログラムを解説し、CNCプログラムとの違いや構成要素、コードの種類も紹介します。
NCプログラムとは？
マシニングセンタではなく、主にNC工作機械で使用されている加工プログラムをNCプログラムといいます。NC工作機械に対し、加工物をどのような形状に加工するか指令を出す機関として開発されている機関です。
NCプログラムでは「コード」と呼ばれるデータをNC工作機械に入力し、加工できる位置に機械を稼働させて切削手順や条件、切削工具の自動交換のタイミングなどを入力します。これらのデータを読み込んだNC工作機械は、データ化された情報に基づいて高効率・高精度な製品加工が可能です。
現在の製造業では、NCプログラムをはじめとした生産における多様なデータを検出するための、製造業DXが各方面で急速的に進んでいます。下記に製造業DXを詳しく解説した記事を添付するので参考にして下さい。
CNCプログラムとは？
マシニングセンタやNC工作機械ではなく、CNC工作機械の加工データを設定するプログラムを、CNCプログラムといいます。CNCプログラムではコンピューター制御により加工データを検出・最適化が可能なので、近年はNCプログラムにより数値制御を行うNC工作機械や、マシニングセンタよりも導入率が高いです。
CNCプログラムではCNCプログラミングソフトウェアを使用すれば、加工法を簡単にコード化できます。
NCプログラムとCNCプログラムの違いを解説
NCプログラムとCNCプログラムの違いは、端的にいえば制御装置の違いです。前述のようにNCプログラムは電子回路による制御を行い、コード化した加工や工程を入力して製品を加工します。
一方のCNCプログラムはコンピューターによる制御を行い、従来のマシニングセンタやNCプログラムに比べてより複雑な形状の製品加工が可能になりました。
NCプログラムの構成要素
NCプログラムを正しく活用し、生産性を向上させるためにも構成要素を把握しなければいけません。そこでここからは、NCプログラムの構成要素を下記に表記し、それぞれを詳しく解説します。
| 構成要素 | 特徴 |
| 表示制御部 | 入力インターフェースやキースイッチ、キーボードなどの入力インターフェース画面で構成されている部分 |
| 数値表示部 | 表示制御部に入力された数値をもとにNCプログラムの演算処理を行う部分 |
| シーケンス制御部 | 工作機械内の制御機器やセンサーなどの管理・制御を行う部分 |
| サーボ制御部 | 数値演算部の指令に基づき、ATCや工作機械の主軸やテーブルなどを動かすサーボモータを制御 |
表示制御部
入力インターフェースやキースイッチ、キーボードなどの入力インターフェース画面で構成されている部分が表示制御部です。この部分を介してオペレーターはさまざまなNCプログラムを機械に入力し、加工を開始します。
近年ではタッチパネル形式の表示制御部で構成された工作機械も多いです。
数値演算部
NC装置の頭脳的な部分で、表示制御部に入力された数値をもとにNCプログラムの演算処理を行う部分を数値表示部といいます。この部分で演算処理したデータはサーボ制御部とシーケンス部に加工情報として伝達されます。
数値演算部の中には同工場内の設備との情報共有機能を有したものもあり、他設備の生産状況の確認も可能です。
シーケンス制御部
シーケンス制御部は工作機械内の制御機器やセンサーなどの管理・制御を行う部分です。PLC（Programmable Logic Controller）と同様の高い制御機能を有しています。
サーボ制御部
サーボ制御部は、NC工作機械の回転方向・速度を制御するサーボモータの管理を行う部分です。この部分は数値演算部の指令に基づき、ATCや工作機械の主軸やテーブルなどを動かすサーボモータの制御を行います。
サーボモータには高精度のセンサーが多数設置され、そのセンサーを介してモータの各種情報が制御部に伝達されて高精度な加工を実現しています。
NCプログラムのコードの種類を紹介
NC工作機械はNCプログラムで管理・制御された各コードの入力により、精度の高い生産を進めます。ではNCプログラムのコードには
- Mコード
- Gコード
- Sコード
などの種類があり、それぞれで機能が異なります。ではそれぞれのコードの機能を詳しく解説します。
Mコード
NC工作機械の主軸以外の補助装置をサポートするためのコードで、補助的機能と呼ばれているコードがMコードです。このコードはGコード同様に「M＋数字2桁」で表記され、切削工具の交換やチャックの開閉、主軸の回転などをはじめとした加工作業のサポートを指令します。
Gコード
GコードはNCプログラミングの準備機能と呼ばれ、製品加工条件や工程を管理するコードの1つです。前述のMコード同様に「G＋数字2桁」で動作パターンが設定されます。Gコードは00～99まで存在し、種類によって制御が細かく異なりますが、同じコードでもメーカー次第で機能が異なる場合もあります。
Sコード
主に主軸の回転速度を制御するコードで、M・Gコード同様にアルファベットと数字で形成されるコードがSコードです。表記される数字は2～4桁で速度の単位を表しています。
NCプログラムに最適なソフトウェアを紹介
NC工作機械をNCプログラミングで自動運転する場合や、CNCプログラム作成にはCAD・CAMと呼ばれる専用のソフトウェアが必要です。ではNCプログラムに最適といわれる、CADとCAMを詳しく解説します。
CAD
CADは英語の「Computer Aided Design」（コンピューター支援設計）の略称で、一般的には設計用のデータや図面作成時に利用されます。以前は設計データも手描きで作成されていましたが、現在は簡単に製図・修正ができるCADが頻繁に利用されています。
また仕上がり確認が簡単にできる3次元CADと呼ばれるツールを導入すれば、複雑な加工である3次元加工も可能です。
CAM
英語の「Computer Aided Manufacturing」という言葉の略称で、製造支援を意味するという意味を持つソフトウェアがCAMです。CADで作成したデータは設計や図面に関するデータなので、入力可能な形式に変換しなければ製品加工できません。
そこでCADで作成したデータをプログラム変換するソフトウェアであるCAMを使用し、NC工作機械への入力を進めます。このような観点からも、CAMはCADで作成されたデータをもとに加工工程や工具の選定など製品加工に関する詳細を決めるツールともいえます。
特に近年は高機能な加工シミュレーションが搭載されているCAMも多く、複雑な製品でも高精度の加工を可能にしているのが現状です。
NCプログラムのメリット
自社生産工程にNCプログラムを導入すれば、生産性向上や製品加工精度の向上などさまざまなメリットを得ることができますが、ほかにどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。ここからはNCプログラムのメリットを紹介するので、自社導入時の参考にして下さい。
品質の安定化
製品の品質を安定化させられる点も、NCプログラムのメリットです。従来の工作機械のように手動操作で加工を行えば、人的ミスやヒューマンエラーが発生し、品質に「ブレ」が生じるケースもあります。
一方でNCプログラムにより自動作業を行えば、人的ミスやヒューマンエラーを予防した安定生産が可能です。生産にブレが出ない観点から、NCプログラムはIoTの導入により生産データを管理し、工場自動化を可能にしたスマートファクトリーにも最適といえます。
下記に効率的な生産体制を可能にした、スマートファクトリーに関する記事を添付しますので参考にして下さい。
生産性向上
NCプログラムを活用すれば、生産性を向上できるのもメリットの1つです。NCプログラムでは、マシニングセンタのような製品のセッティングや切削工具の取り換えも不要で、一度セッティングを行えば全て自動で加工してくれます。
そしてNCが加工作業を手掛けている間に、ほかの複数の機械も稼働できるので生産性が向上して、作業効率を高めることも可能です。またNCプログラムは加工速度の調整もできるので、生産管理や加工時間の管理効率の向上にも繋がります。
加工精度の向上
加工精度を向上できる点も、NCプログラミングを導入するメリットの1つです。NC工作機械は2軸や3軸の同時制御が可能なうえに、R加工や斜めの形状の加工も可能で、製品の向きを変える必要もありません。
特にNCフライス盤やマシニングセンタは、穴開けやねじ切り、面加工など複数の加工を1つの機械で行えるので省スペース化が可能です。また工程ごとに製品を運ぶ手間も省けるので、作業にかかる労力も軽減できます。
安全性の向上
NCプログラムを導入すれば、生産における安全性を向上に繋がる点もメリットです。従来の手動式の工作機械では飛散した切りクズや切り粉が飛散して目に混入したり、機械に手指を巻き込まれて負傷する災害なども多発していました。
一方で近年のNC工作機械は、一度プログラムを設定すればオペレーターは手作業をすることはないので、機械に巻き込まれる心配もありません。また近年製造されているNC工作機械は扉が付いているものがほとんどなので、切削加工で発生した切りクズや切り粉が外部に飛散しないので安心して作業できます。
NCプログラムを活用して生産性を高めよう
今回はマシニングセンタでは見られないNCプログラムを解説し、CNCプログラムとの違いや構成要素、コードの種類も紹介しました。NCプログラムを活用してNC工作機械で製品加工を行えば、生産ラインの自動化も可能なうえに製品の精度を高めることもできます。
生産ラインの自動化に成功すれば、人件費の削減にも繋がって自社の収益性を高めることも可能です。今後自社生産ラインの生産性を高めるためにも、本記事を参考にして効率的にNCプログラムを導入してください。
