AutoCADの図面作成を効率化するために、レイアウトを設定したいと考える方も多いでしょう。
しかし、設定方法がよくわからずお困りの人も少なくないはずです。
そこでこの記事では、AutoCADのレイアウトを設定する方法や、レイアウトを設定した後によく利用するビューポートの作成方法についてわかりやすくまとめました。位置合わせの方法も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
AutoCADのレイアウトとは?
AutoCADには、図面を表示するページ設定のひとつとして「レイアウト」と呼ばれる機能が搭載されています。
レイアウトは、AutoCADの図面データを印刷物やPDFデータとして出力するときのサイズ決めなどに利用するものであり、業務としてAutoCADの図面を作成する場合に欠かせない機能です。
例えば、A1サイズ、B2サイズなど印刷サイズに合わせて複数のシートが用意されており、図面作成者はモデル空間で作成した図面をレイアウト空間に配置することで、仕事でよく見るきれいに整理された図面を作成できます。
モデル空間やペーパー空間との違い

AutoCADのレイアウトを設定するとき、モデル空間やペーパー空間というキーワードをよく目にします。参考として、レイアウト空間・モデル空間・ペーパー空間の違いを下表にまとめました。
レイアウト空間 | モデル空間 | ペーパー空間 | |
用途 | モデル空間で作成された図面を配置する空間 | 図面データを作成する空間 | レイアウトのなかにありモデル空間から図面を呼び出すビューポートを配置するための空間
※レイアウト空間と同等の意味として扱われることもある |
つまり、モデル空間とレイアウト空間が別々に存在し、レイアウト空間のなかにペーパー空間があるというイメージです。それぞれ示している空間の位置が違うため、操作する前に具体的な名前を把握しておくことをおすすめします。
また、AutoCADでハッチング機能を使いたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
AutoCADのレイアウトでできること
AutoCADのレイアウトを設定すれば、データ出力に向けてさまざまな準備ができます。
参考としてレイアウトでできることを整理しました。
できること | 概要 |
図面配置 | 印刷用のレイアウト画面に作成した図面を配置できる |
印刷時のスケールの設定 | レイアウト画面に配置した図面のスケールを自由に設定して印刷できる |
ビューポートの管理 | レイアウト画面に表示するビューポートを自由に調整できる(サイズ・数・形状) |
テキストや図形の追加 | 説明に利用するテキストや図形をレイアウト上に表示できる |
ページ設定の管理 | 印刷ページごとにレイアウトを設定できる |
中でも頻繁に利用するのがビューポートの設定です。
レイアウト画面にどのような図形を表示させるのか決める機能であり、モデル空間で作成した図面を自由に反映できます。
また、初心者向けのAutoCADの使い方を知りたい方は、以下の記事をチェックしてください。
AutoCADの操作に必要な基礎情報をわかりやすく解説しています。
AutoCADのレイアウトを設定するメリット
AutoCADはレイアウトを設定しなくても図面を作成できます。
そのため、モデル空間だけを利用してAutoCADを操作している人も多いでしょう。
ですが、AutoCADを使った図面作成業務を行う際には、レイアウトを設定しておく方が作業を効率化しやすくなります。参考として、AutoCADでレイアウト設定をする3つのメリットをまとめました。
印刷用紙に合わせて図面を作成できる
あらかじめAutoCADのレイアウトを設定しておけば、印刷時の図面サイズに合わせて設計できます。
例えばA3用紙は横297mm・縦420mmで構成されており、この幅を超えた部分については印刷されません。そのため図枠の限界を把握したうえで作成すべき図面を検討できるようになるのが、AutoCADのレイアウトの魅力です。
完成する図面配置をイメージしながら設計ができるため、図面作成後に微調整や取捨選択をする必要を減らせます。
複数の縮尺に対応したオブジェクトを配置できる
AutoCADのレイアウト機能を活用すれば、わざわざ印刷する際に任意で図面の縮尺を変更する必要がなくなります。
なぜなら、AutoCADの図面を作成するモデル空間、そして図面を配置するレイアウト空間には、それぞれ異なる縮尺に設定できるからです。モデル空間で作成したオブジェクトが大きくても、レイアウト空間に配置すれば、図面データに印刷する図枠内に収められます。
図面ひとつずつの縮尺調整をする必要がなくなるため「右上には1:100の平面図を置く」「左下に1:250の断面図を置く」など、1枚の図面に複数の縮尺を設定できるのが魅力です。
図形の拡大図を一緒に配置できる
AutoCADのレイアウト機能を使えば、同じ図面の全体図・拡大図をまとめて表示できるのがメリットです。
例えばモデル空間だけで図面を作成・印刷した場合、対象となる図面とは別に、新しい図面をコピペして掲載しなければなりません。しかし後から図面の修正が出た場合には、それぞれの図面を修正する手間が発生します。
対してAutoCADのレイアウトを使えば、モデル空間で作成した図面を複数のビューポートに分けて表示できるのが魅力です。
「全体図と拡大図をまとめて表示したい」という場合に役立つ機能であるほか、モデル空間の図面をひとつ修正するだけで、ほかのレイアウト空間全体の図面を自動で修正できれます。
AutoCADのレイアウトを設定する手順
AutoCADのレイアウトを設定する手順について、作成手順・設定手順をそれぞれまとめました。
レイアウトを用意し、実際に図面を作成するまでの手順になるため、ぜひ参考にしてください。
AutoCADのレイアウトを新規作成する
AutoCADでレイアウトを設定する際はまず、AutoCADの画面下側にある「モデル」と書かれた項目をクリックし「ペーパー」に変更してください。すると、AutoCADのリボンに「レイアウト」が追加されます。
レイアウトが表示されたら、左側に表示されている新規作成をクリックしましょう。
次に画面下側のコマンドラインに作成するレイアウトの名前を決める項目が表示されます。
ここでは「新規レイアウト」という名前を設定しました。
すると、画面左下の「モデル」のタブとは別に項目が表示されました。
AutoCADのレイアウトを設定する
「レイアウトリボン>レイアウト>ページ設定」から新規レイアウトを選択し、修正のボタンをクリックしてください。すると以下のポップアップが表示されます。
また、レイアウトの設定では用紙のサイズや印刷の縮尺などを設定します。
参考として、A3用紙、縮尺1:100、図面の方向を横に設定したらOKを押して保存しました。
この設定により、ワークスペースに表示される図枠が変化します。
最新版のAutoCADでは、あらかじめ図枠が設定されていますが、追加で新しいレイアウトを設定したい場合には、紹介した手順で追加してみてください。
レイアウトのビューポートを作成する方法
AutoCADのレイアウトでよく利用するのがビューポートです。
ビューポートは、モデル空間でつくったオブジェクト(図形や線など)を印刷枠に反映する機能であり、1つのレイアウトに複数のビューポートを挿入できます。
参考として、AutoCAD上にビューポートを作成する手順をまとめました。
ビューポート用のレイヤーを作成する
まずは、ビューポートを反映するために新しいレイヤーを作成してください。
ビューポートはほかの図面作成レイヤーと混ぜないことが大切です。
同じレイヤーで管理すると、誤って削除する恐れがあるため、必ず専用のレイヤーを準備しましょう。
ビューポートを作成する
今回は、AutoCADのモデル空間で作成した上記の画像をレイアウトに表示したいと思います。
まずビューポートは「レイアウト>レイアウトビューポート>矩形」から作成できます。
矩形のボタンをクリックしたら、ワークスペース上で始点・終点を選んで上画像と同じ枠を作成してください。すると、モデル空間で作成された図面が枠内に表示されます。
ビューポート内の表示オブジェクトは、枠内をダブルクリックすることで位置を移動できます。
表示させたいオブジェクトだけにビューポートの枠を揃えることも可能ですので、微調整しながら表示画面を変更してみてください。
同じオブジェクトを複数表示する
レイアウトのビューポートを活用すれば、オブジェクトの全体・オブジェクトの一部というように拡大画面を掲載することも可能です。まず既存のビューポートを選択したら「右クリック>複写」を使って、ビューポートをコピーしてください。
同じオブジェクトを映したビューポートが作成されるため、後は枠内をダブルクリックしてスクロールで縮尺を変更するだけです。簡単な工程で上画像のように、縮尺が違う同じオブジェクトを表示できるので「一部だけ表示したい部分がある」という場合にもうまく対応できます。
また、AutoCADのレイアウトといった知識を身に付けたいなら、セミナー等に参加して基礎知識を身に付けることが大切です。オンライン・オフラインで次のようなセミナーにも参加できるので、ぜひチェックしてみてください。
AutoCADのレイアウトについてまとめ
AutoCADのレイアウト機能を使えば、成果品として納品する図面を簡単にまとめることが可能です。また、モデル空間で作成したオブジェクトを自由に配置できるほか、サイズ調整なども簡単に進められます。
図面を作成する際には、同じオブジェクトを複数の図面にまたがって表示させる場合もあるので、手軽に図面を配置できる便利な機能を活用してみてください。
