PDFしか残っていない図面データを図化したいと考えていないでしょうか。
もし手作業で図化するのが面倒なら、AutoCADのPDF読み込み機能を活用するのが便利です。
この記事では、AutoCADで利用できるPDF読み込み機能の特徴や使い方をわかりやすく解説します。DWGファイルへの変換方法や、読み込めないときの対処法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
AutoCADのPDF読み込み機能とは
AutoCADに搭載されている「PDF読み込み機能」とは、閲覧用として利用されているPDFデータをAutoCADに読み込ませて下図として利用する便利な機能です。
またAutoCADに読み込ませたPDFは、ラスターイメージとして下図に使うほかにも、読み込んだ図面の線などを認識し、図化させることができます。
PDFに掲載されたオブジェクトの情報を読み込めるほか、ベクター図形としてそのまま利用できるのが魅力です。受け取ったPDFをAutoCADを使う業務に活用したいなら、ぜひPDF読み込み機能を活用してみてください。
また、PDF読み込み機能を活用するためには、AutoCADの導入が必要です。
これからAutoCADを導入する予定の方は、以下の記事をチェックしてみてください。
AutoCADのPDF読み込みを利用するシーン
AutoCADのPDF読み込み機能は、主に次のようなシーンで利用します。
- 過年度データのなかにPDFしか保存されていなかった
- 貸与されたデータがPDFだけだった
- 受け取った図面サンプルがPDFだった
過年度データを扱う設計業務の場合、古い過年度資料に図面データが保存されていないことがあります。また、AutoCADといったソフトがない時代である手書きの図面を受け取ることも少なくありません。
ほかにも、セキュリティの関係上、オリジナルのCAD図面を送付できないメーカーがあるなど、現在でもよくPDFの図面しか入手できない場合が多々あります。
そこで役立つのがAutoCADのPDF読み込み機能です。
ほかのCADソフトには搭載されていない場合が多いほか、読み込み精度も優れています。
AutoCADのPDF読み込み機能は無料体験版からでも利用できます。
実際に機能を試してみたい方は、以下のページから体験版をインストールしてみてください。
AutoCADのPDF読み込み機能を使う方法
AutoCADでPDF読み込み機能を使う方法を画像付きでまとめました。
本記事では参考として、上記のPDFの図面を利用して、読み込み機能を操作してみます。
手軽にPDF読み込みができるので、ぜひ機能の使い方を覚えてください。
タブから起動する
マウス操作でAutoCADのPDF読み込み機能を使いたいなら、タブから起動できます。
上画像と同じように「挿入>読み込み>PDF読み込み」をクリックすると、ファイル読み込みのポップアップが表示されます。
次に、読み込ませたいPDFを選択すると、以下のポップアップが表示されます。
まずが初期から設定されている状態のままOKをクリックしてみます。
すると、次の図面がワークスペースに挿入されました。
もともとのPDFと相違ない品質の図面が簡単に挿入されました。
ぜひ手元にあるPDFを読み込ませてみてください。
コマンドラインから起動する
PDF読み込み機能はワークスペースの下側に表示されているコマンドラインから起動できます。
まずはコマンドラインに「PDFIMPORT」と入力してください。
すると、上画像のようにアンダーレイの選択およびファイル選択の項目が表示されます。
参考として2つの使い分けを以下にまとめました。
アンダーレイ | ファイル | |
概要 | すでに挿入されているPDFであり、背景として利用されているもの | 新たにPDFを読み込みするもの |
利用シーン | ラスターイメージとして挿入したPDFを図化したい | 新たにPDFを図化したい |
今回は、新しくPDFファイルを読み込ませるという方法を利用します。
コマンドラインに表示されている「ファイル」をクリックしてください。
この後の流れは前述した「タブから起動する」と同様です。
PDFデータそのままの図面がAutoCADに導入されます。
AutoCADで読み込んだPDFを別の拡張子に変換する方法
AutoCADのPDF読み込み機能で挿入した図面は、以下に示す別の拡張子などに変換できます。
- DWG
- DXF
参考として、拡張子を変換する方法を以下にまとめました。
- 「PDF読み込み」を使ってPDFをAutoCADに挿入する
- 「ファイル>名前を付けて保存」を選択する
- 保存ポップアップに表示されている拡張子(DWGなど)を選択する
- ファイル名と保存場所を決めたら「保存」をクリックする
この手順で簡単にPDFファイルを別の拡張子に変換できます。
PDFを図化してDWGやDXFに変えたいという場合には、上記の手順を試してみてください。
AutoCADのPDF読み込みができない場合の対処法
AutoCADのPDF読み込みを利用する際に、突然エラーが発生したとお悩みの方もいらっしゃるでしょう。参考として、PDF読み込みができない原因や対処法をまとめました。
「オブジェクトが読み込まれませんでした」と表示された場合
PDF読み込み機能を使ったときに「オブジェクトが読み込まれませんでした」と表示された場合には、次の原因が考えられます。
- スキャンしたPDFにはジオメトリが含まれていない
- PDF読み込み機能の設定を間違っている
なかでもよくある間違いが、ジオメトリのないデータをオブジェクトとして図化する方法です。
もしスキャンして読み込んだPDFをAutoCADに反映したいなら、表示されるポップアップのラスターイメージにチェックを入れてください。
ジオメトリのないデータの場合は、アンダーレイとしてAutoCAD上に挿入できます。
PDFに表示されている通りに図面が読み込まれなかった場合
AutoCADにPDFを読み込ませたとき、途中で線が切れていたり、塗りつぶしになっていたりと、イメージ通りに図面が表示されないことがあります。
これはもともとのPDFデータの品質が悪い場合に起きる症状です。
特にPDF出力された図面の画質を落としてある際に起きやすく、そのままだと図面として利用できません。
そのような際には、自身でデータ修正や補正をすることが大切です。
また専用の補正システムやサービスを活用し、読み込み後の図面データの品質を高めなければなりません。
AutoCADのPDF読み込み機能の注意点
AutoCADでPDF読み込みをする際には、3つのポイントに気を付けなければなりません。
間違いの多い項目であるほか、業務にも影響するポイントですので、PDF読み込み機能を使う前にチェックしておきましょう。
フォントの機能が分解されている
AutoCADのPDF読み込み機能は、PDFの図面を図化する際に役立ちますが、一緒に表示されている次のフォント情報をうまく反映できません。
- 図面に表示されているコメント
- オブジェクトに表示されている寸法
PDF読み込み機能で読み込ませた数値は、数値情報ではなく線や円といった図形の情報に書き換わっています。この状態で縮尺を変更しても数値情報が変わらないことに注意してください。
フォントとしての機能を持たせたい場合なら、縮尺を合わせたのちに新たにコメントや寸法を挿入しなければなりません。
曲線の表示がおかしくなる場合がある
AutoCADのPDF読み込み機能を利用すると、もともと曲線だった図形が角ばって表示されるケースがあります。
角ばって表示されるのは、AutoCADといったCADソフトに搭載されている次のような模様や記号などで起きやすく、キレイな見栄えの図面になりにくいのがデメリットです。
- 擁壁を表す円形模様
- ハッチングで表示した曲線や円形
- CADの機能で挿入できるオリジナルの記号
もともとCADで使われていた機能にはうまく対応できないので、改めて自分で模様や記号を付け足す必要があると覚えておきましょう。
合わせて、AutoCADハッチングの方法に興味をお持ちの方は、以下の記事をチェックしてみてください。画像付きでハッチング機能の使い方を紹介しています。
縮尺を任意で調整しなければならない
PDF読み込み機能で挿入された図面データは、PDFに表記されている縮尺とは違うものに変わります。そのまま利用すると、まったく異なる寸法で図面を作成することになるため、事前に縮尺調整をしなければなりません。
参考として、縮尺調整の手順を以下にまとめました。
- AutoCADに挿入されたPDFに表示されている寸法を測る
- 図面上でPDFに表示されている寸法と同じ長さの線を挿入する
- 「ワークスペース>右クリック>縮尺変更」を選択して縮尺を揃える
例えば、1000と表記された寸法を実際に計ってみると、2000と表示されていたとしましょう。
2つの差は2倍なので、2分の1にしてしまえば縮尺が調整されます。
縮尺調整はミリ単位で実施しなければならないので、一度縮尺を調整したら、別の部分の寸法も計測してみて、正しい寸法が表示されるか確認してみてください。
AutoCADのPDF読み込みについてまとめ
PDFしか図面の情報がない場合には、AutoCADのPDF読み込み機能を使うことで簡単に図化できます。ジオメトリのあるデータの場合、高品質な読み込みができるのはもちろん、スキャンされたジオメトリのないデータもラスターイメージとして挿入が可能です。
またPDFの図面データをDWGやDXFといったデータに書き換えられるため、変換が必要な人にもAutoCADの活用をおすすめします。数ステップで簡単に実行できる機能なので、この機会に活用してみてはいかがでしょうか。