AutoCADで3Dモデルを作成するときに、モデルを回転させながら作業をするのが面倒に感じている方も多いでしょう。もしAutoCADで3Dモデルを作成する手間を減らしたいなら、ビューポートを活用するのがおすすめです。
この記事では、AutoCADのビューポートの役割や操作方法、使い方についてわかりやすくまとめました。表示されない場合の対処法も解説しているので、作業効率化の参考にしてください。
AutoCADのビューポートとは?
AutoCADのビューポートは、ひとつの図面を複数の視点で表示する機能です。
例えば、次のようなビューで3Dモデルを同時に表示できます。
- 上下方向
- 側面
- 斜め方向
さらに、ビューポート内では自由に画面の方向を変更できるのが特徴です。
「全体イメージを確認しながら細部の形状を編集したい」「モデルを一方向から編集するとき別方向からのデザインに変化がないかチェックしたい」など、さまざまな用途で利用できます。
AutoCADビューポートのモデル空間・レイアウト空間での違い
AutoCADのビューポートは、3Dモデルを編集するモデル空間、印刷などに利用するレイアウト空間で使い方や用途が違います。参考として2つの違いを下表にまとめました。
モデル空間 | レイアウト空間 | |
用途 | モデル編集のために利用する | 印刷といった出力のために利用する |
利用シーン | ビュー(窓枠)を追加して複数の視点から3Dモデルをチェックできるようにする | 印刷のために縮尺の異なるビューポートを配置して、図面を整理する |
機能の位置 | 表示>モデルビューポート>ビューポート環境設定 | レイアウト>レイアウトビューポート>矩形 |
それぞれ利用する目的や機能の位置が異なります。
AutoCADでは同じ「ビューポート」という名称がついていますが、役割が違うと覚えておきましょう。
AutoCADを使った3Dモデルの編集に興味がある方は、以下の記事をチェックしてみてください。
基礎的な操作手順や機能情報をまとめています。
AutoCADビューポートの基本的な操作
AutoCADに搭載されているビューポートの機能は、主に以下に示す3つの方法で操作できます。
- ズーム
- パン(視点移動)
- ローテーション(回転)
ズームは画面の拡大・縮小の機能であり、マウスホイールを使ってビューポート内の表示サイズを変更できます。またパンは画面をスライドさせる機能であり、マウスホイールをクリックした状態でマウスを動かすことで視点の移動が可能です。
もうひとつローテーションは、3Dモデルを回転する機能です。
3Dモデルを編集する際に頻出する機能であり、画面右側に表示されている「オービット」を選ぶことで画面上のモデルを回転できます。
AutoCADビューポートの使い方
AutoCADのビューポートについて、モデル空間での使い方と、レイアウト空間での使い方をそれぞれまとめました。画像付きで手順を解説しているので、操作方法がわからないとお悩みの方は参考にしてみてください。
本項目では、上画像の3Dモデルをベースとしてビューポートを設定していきます。
モデル空間におけるビューポートの使い方
AutoCADのモデル空間のビューポートは、画面右下にある歯車マークから「製図と注釈」を起動し「表示>名前の付いたビュー」で操作できます。プルダウンの項目をクリックすると、下画像のような一覧が表示され、クリックした位置に合わせてビューが自動で変更されます。
また、ひとつの図面を複数のビューポートで閲覧したい場合には、同じく画面右下にある歯車マークを「製図と注釈」にして「表示>モデルビューポート>ビューポート環境設定」から変更できます。例えば、3分割右という項目をクリックすると、以下の画面に切り替わりました。
それぞれのビューポートを自分好みの向きに変更すれば、ひとつの図面を編集した際に連動して形状などが変化されます。
ちなみに、ビューポートを複数画面に表示する機能は「製図と注釈」のモードでしか表示されません。「3D基本」「3Dモデリング」など、3Dモデルを作成・編集する画面には項目がないので、一度「製図と注釈」に切り替える必要があります。
レイアウト空間におけるビューポートの使い方
AutoCADのレイアウト空間でビューポートを設定する際には「レイアウト>レイアウトビューポート>矩形」を選択して、任意で枠を配置していくのが特徴です。
矩形の枠は、任意のサイズで設定できるのはもちろん、あらかじめ作図を決めた図面オブジェクトを配置しておくことで、ビューポートに変更することができます。参考として、任意の位置でAutoCADのレイアウト空間に3つのビューポートを配置してみました。
ちなみにAutoCADのレイアウト空間でも図面の編集が可能です。
ただし、レイアウト空間は異なる縮尺の図面を掲載するほか、印刷が主目的の空間ですので、レイアウト空間上で編集することはおすすめしません。
レイアウト空間で編集をすると、図形がズレたり縮尺を書き換えてしまったりと、ミスが多くなりやすいので、なるべくモデル空間上で図面を編集するようにしてください。
AutoCADの使い方をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
基本ツールの使い方などをわかりやすく解説しています。
AutoCADのビューポートでよくあるミスの対処方法
AutoCADのモデル空間で作成した3Dモデルをレイアウト空間に反映するとき、表示していたビューポートの範囲がズレてしまうといったミスがよくあります。
参考として、AutoCADのビューポート利用時に起こりやすいミスと、その対処方法をわかりやすくまとめました。よく起こるトラブルですので、AutoCADのビューポートを操作する前にチェックしておきましょう。
ビューポートに表示していた3Dモデルを見失った
上画像のように、ビューポート内に表示していた3Dモデルが見えなくなってしまい、どの位置にあるのかわからなくなるケースがあります。その際には、マウスホイールをダブルクリックしてください。
AutoCADの場合、モデルを見失ったときの対処として、マウスホイールのダブルクリックで、モデルの全景を映し出せるように設定されています。上画像で見えていなかった状態でも、ダブルクリックをすれば、すぐに以下の画像の表示へ戻してくれます。
マウスホイールで拡大・縮小をしすぎたり、パン(移動)でスライドさせすぎたりすると起こるトラブルなので、ぜひ試してみてください。
ビューポートがロックされて操作できなくなる
AutoCADのレイアウト空間にあるビューポートは、誤って操作することを防止するために、自動でロックがかかるように設定されています。しかし、改めて操作をしようとすると、ロックの影響で再編集ができなくなることが少なくありません。
もしロックを解除したいのなら、次の2つの方法を試してみてください。
- 「レイアウト>レイアウトビューポート>ロック」にあるロック解除を使う
- ビューポートの枠を右クリックしてロック解除の項目を選ぶ
AutoCADのビューポートがロックされていると、位置をずらしたい場合などに編集できなくなるのがネックです。ロック解除の機能を把握していないと、一度削除して再編集する手間がかかるため、ぜひトラブル解決に役立ててください。
ビューポートが表示されなくなった
AutoCADのビューポートを編集しているとき、急にビューポートの中身が表示されなくなることがあります。主な原因を以下にまとめました。
- ビューポートの設定が非表示に変わっている
- レイヤーを非表示にしている
前者の場合、AutoCADのビューポートを右クリックした中に表示の設定が用意してあります。
非表示になっている場合には、表示に変更することで表示されない問題を解決できます。
後者の場合は、画層レイヤーをチェックしなければなりません。
ビューポートを含むレイヤーが非表示だとワークスペース上にビューポートが表示されなくなります。
AutoCADにおける機能の使い方やエラー対策を学びたいなら、一度AutoCADの操作に関するセミナーを受講するのがおすすめです。専門の講師からAutoCADのノウハウを学べます。
AutoCADのビューポートのメリット
今までAutoCADのビューポートを利用してきたことがないという方向けに、ビューポートを使うメリットを整理しました。業務効率化に役立つ機能ですので、メリットを理解したうえでAutoCADに取り入れてみてください。
全体像を把握しながら図面を作成できる
3Dモデルを作成する際には、詳細部にこだわることはもちろん、全体像がうまく整っているのかを把握することが重要です。このとき、1画面のビューポートで編集をした場合、細部を編集して全体を確認するという手間のかかる作業が発生します。
一方で複数のビューポートを用意し、全体を映した画面と、編集したい範囲を映した画面を同時に表示してすれば、わざわざスクロールして画面を変える必要がなくなります。確認にかける時間をたんしゅくしやすくなるため、ぜひ複数の画面で編集をしてみてください。
確認ポイントを複数の視点からチェックできる
設計業務をするときには、1箇所だけでなく複数箇所のポイントを確認しながらオブジェクトを配置することがよくあります。
例えば、橋梁といった構造物を3Dモデルとして設計する際には、他の構造物との干渉や現況地形への擦り付けなどを同時にチェックしなければなりません。
従来、3Dモデルの形状を決めるために何度も試行錯誤をしながら作成をしますが、AutoCADのビューポートを活用すれば、その確認を一度で終えられます。
干渉チェックをしたい視点、擦りつけの視点にビューポートを合わせるだけで、1画面でチェックを完了できます。何度も画面の切り替えをするのが面倒だと感じている人は、AutoCADのビューポートを活用して、チェックの手間を減らしてみてはいかがでしょうか。
AutoCADのビューポートについてまとめ
AutoCADのビューポートは、3Dモデルを編集する際の効率を高めるほか、印刷用のレイアウト空間を整えるために役立つ機能です。
簡単な操作で複数の画面を表示でき、今よりも高い業務効率を実現できます。
まだAutoCADのビューポートを利用したことがないという方は、この機会にビューポート機能に触れてみてください。