人気のCADソフトであるAutoCADは、あらゆるCAD業務に適用可能な能力を備えており、その使い方への深い理解が求められます。中でも3Dモデリング機能については高い水準を実現しているため、うまく機能を理解し、使いこなしたいところです。
この記事では、そんなAutoCADが有する3Dモデリング機能の概要について解説しながら、3Dモデリングを行う際の手順や注意しておきたいポイントを紹介します。
AutoCADとは?
AutoCADはAutodesk社が提供している、世界で最もポピュラーな汎用CADソフトの一種です。2Dと3Dの両方に対応しており、設計から施工、竣工後の維持管理に至るまで、長期にわたって活躍できる設計データを作成できる点が強みです。
海外はもちろん、国内でもあらゆる業界で人気の高いCADソフトであり、これからCADソフトを使いこなしたいという初心者の方にも安心してすすめられる製品と言えます。AutoCADは定期的にアップデートが行われ、機能面の改善や新機能の追加なども行われているなど、将来性にも優れているところが評価されているソフトです。
AutoCADにおける3Dモデリングについて
AutoCADは以前、AutoCAD LTと呼ばれる2D図面作成に特化した廉価版の製品がありましたが、現在はこれが廃止され、2Dと3Dの両方が使える通常版のAutoCADが主流です。2Dと3DはAutoCAD上ではワンタッチで切り替えることができるため、スムーズに作業を進められます。
また、AutoCADはデフォルトで2Dと3Dの両方の機能を使用できますが、アップグレード版のAutoCAD Plusを導入することで、3Dモデリング機能を強化することができます。
AutoCAD Plusは、建築や設備設計、土木など全部で7つの業界に特化した、別個のツールセットを有しているのが特徴です。各業界に合わせてツールセットを使い分けることで、本来のAutoCADでは実現できなかった高度な処理も実現ができるようになります。
既存のAutoCADでは満足できなくなった場合、導入を検討してみましょう。
AutoCADの3Dモデリングは難しい?
これまで2D CADしか触ったことがない、あるいはCADソフトを触るのが初めてである場合、AutoCADを使った3Dモデリングには少し苦労してしまうこともあるかもしれません。3Dモデリングが2D図面作成と異なる点としては、
- 座標軸の違い
- 空間の概念の有無
という2つがあるため、これに対処しなければならいからです。
3つの座標軸に慣れる必要がある
まず、AutoCADの3Dモデリングにおいては2Dの際のx軸とy軸に加え、奥行きをもたらすz軸の概念が加わります。これによって何が変わるかというと、まず作成している図形の形状を逐一さまざまな角度から確認しないと、意図しているように設計できているかがわかりません。
正面ばかり見ていると奥行きがうまく表現できていないかもしれませんし、奥行きを気にしていると今度は正面のディテールが崩れている、ようなこともあります。
座標軸の概念を理解し、上手に3Dの感覚を掴みながら作業を進められるようになることが、AutoCADを使った3Dモデリングにおいて重要です。
空間内の定位が困難
AutoCADの3Dモデリングは、2Dのディスプレイ上で立体物を扱うため、現実世界のように空間を把握することが難しいのも覚えておくべきでしょう。
地上からどれくらいの距離があるのか、上下左右の正しい方向はどっちかなど、まるで宇宙空間のように無限に続く立体空間上で作業を行うので、位置感覚や方向感覚がおかしくなってしまいやすい問題を抱えています。
ツールなどを活用しながら、逐一現状の確認を行うことで空間を正しく把握する工夫が必要です。
AutoCADで3Dモデリングを行うメリット
上記のように、3Dモデリングには2D図面作成にはない難しさが含まれている一方、AutoCADを使った3Dモデリングにおいては以下のようなメリットも期待できます。
モデリングツールが充実している
まず、AutoCADはモデリングに使用するツールが非常に充実しています。あらゆる図形の作成に使えるのはもちろん、ディテールをこだわるための機能群も備わっているので、高度な3Dモデリングを行えるのが強みです。
全てのモデリングツールを一度に使いこなすのは難しいですが、一つずつ使いこなせるようになれば次第にプロレベルの3Dモデリングが実現するでしょう。
ビジュアライズツールも豊富
AutoCADはただ3Dモデリングを実行するだけでなく、作成した3Dモデルを仕上げたり、シミュレーションにかけたりするのに役立つ機能も備わっています。レンダリングを実行してフォトリアルな3Dモデルに仕上げたり、照明の塩梅を調整して、時間経過でどのようにオブジェクトの様子が変わるかを調べたりすることが可能です。
AutoCADが一台あれば、3Dモデルの運用に関する大半の業務を賄えます。
データ共有機能に優れる
AutoCADが評価されている理由の一つに、データ共有が行いやすいという強みがあります。多くのCADソフトはAutoCADとの互換性を踏まえてCADソフトを開発しているため、ファイルに互換性がなく作業が進まないという心配がありません。
また、AutoCADは専用のクラウドストレージを有しており、関係者間で作成した3Dモデルをオンラインですぐに共有することができます。クラウドストレージからデータをダウンロードするだけでなく、データに対するフィードバックなどもすぐに行えるため、生産性向上に役立つ機能です。
AutoCADで3Dモデリングを行う際の手順
続いて、実際にAutoCADを使って3Dモデリングを実施する場合、どのような手順を踏む必要があるのかについて解説します。
基本となる図形を作成する
まずは、平面図で3Dモデルにしたい図形を描きます。基本となる図形を平面で描いてしまうことで、余計な情報を増やす心配がなくないため、いきなり3Dモデルから作るよりも正確かつ効率的に作成することが可能です。
また、平面図を3Dモデルに変換する際、奥行きの概念が発生することで想定していたような形ならないことも多々あるものです。試行錯誤を重ねて、理想的な3Dモデルに変換するための最適な平面図作成ができるよう練習してみましょう。
作成した図形を3Dにおこす
平面図形を描いたら、次にそれを元にして3Dモデルを作成します。図形の3Dモデル化は、「回転」ツールなどを使って実行します。図形において軸となる線を描き、それを中心にして図形を動かすと、図形をずらした部分が立体化され、3Dモデルに変換されるという仕組みです。
3Dモデルの作成方法にはさまざまなアプローチがありますが、シンプルなモデルを作成したい場合や、規則性があるモデルを作成する場合、このようなツールをうまく活用することで、効率的で正確な3Dモデルを生成できます。
図形を3Dモデルかできたら、あとはディテールを「修正」ツールを使って整えたりするだけで、理想的な3Dモデルに仕上げられるでしょう。
3Dモデリングに役立つAutoCADの主な機能
AutoCADは難易度の高い3Dモデリングを簡単に行えるようにするための機能に優れています。以下は3Dモデリングに関連した代表的な機能です。
豊富な画面操作機能
AutoCADは、3Dモデルをいついかなる場合でも確認できるよう優れた画面操作機能を備えています。例えばViewCubeと呼ばれる機能は、立体物の頂点や面、エッジを模したアイコンを操作し、いつでも視点を切り替えられるため、非常に便利です。
また、その下にあるナビゲーションバーを使用することで、ズームや画面移動など、やや手間のかかる作業をワンタッチで行えるため、作業が複雑化してしまっている場合でも安心です。
ワークスペース
ワークスペース機能は、モデリングに必要なツールを一箇所にまとめてくれている便利なスペースです。
3D作業に必要な機能しかスペース上には表示されないので、3Dモデリング業務の際にはコマンド操作などで実行するよりも、このワークスペースを使った方がツールの呼び出すなどは重宝することもあります。
AutoCADで3Dモデリング実施時の注意事項
AutoCADを使った3Dモデリングは非常に魅力的である反面、以下のような注意事項にも気をつけておく必要があります。
3Dモデリングの動作要件を確認する
まず、AutoCADの3Dモデリングは2D図面作成時の要件に加えて、以下の動作要件を満たす必要があります。グラフィック周りの負荷が2D作成よりも大きくなることから、3Dを扱うと途端に動作が重くなる可能性があることは覚えておきましょう。
メモリ | 16GB以上のRAM |
ディスクの空き | 6GB以上の空き容量 |
ディスプレイカード | 3840 x 2160 (4K)以上のTrue Color対応ビデオディスプレイアダプタ、12GB以上のVRAM、Pixel Shader 3.0 以上、DirectX対応ワークステーションクラス グラフィックスカード |
段階的にスキルを身につける必要がある
AutoCADには豊富な3Dモデリングツールが備わっていますが、いきなり全てのツールを使いこなして、プロレベルのモデルを作れるようになるわけではありません。
まずは1つずつ操作方法を覚えて、段階的に高度な作成が行えるよう練習を重ねましょう。
AutoCADの3Dモデリングについてのまとめ
この記事では、AutoCADの3Dモデリングとはどのような業務なのか、活用のメリットや機能と合わせて紹介しました。3DモデリングはCAD運用における基礎とも言えますが、実際には扱う情報量が多いことから、スキルのいる業務です。
まずは初歩的なタスクからこなしていき、徐々にレベルを上げ、AutoCADのポテンシャルを引き出せるようになりましょう。