DX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業や組織が業務プロセスを改善し、新たなビジネスモデルを構築することを目指す取り組みのことです。DX導入には、「業務効率化」「新しいビジネスの創出」「レガシーシステムからの脱却」などの多くのメリットがあります。本記事では、DXの導入に成功した企業の具体的な社名を出しながらDX導入事例をわかりやすく紹介していきます。
DXとは?
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、企業や組織がデジタル技術を利用して業務プロセスを改善し、新たなビジネスモデルを構築することを意味します。
DXとよく混同される単語として、IT化があります。IT化は、情報技術(IT)を用いて業務を効率化・自動化する取り組みのことです。DXとIT化との違いを、目的や成果の測定、具体的な事例といった切り口で以下の表にまとめました。
DX | IT化 | |
意味 | デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織文化、顧客体験を変革する取り組み | 情報技術(IT)を用いて業務を効率化・自動化する取り組み |
目的 |
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技術の活用 | AI、IoT、ビッグデータ、ブロックチェーンなどの最新技術を活用 | ITシステムを導入 |
影響範囲 | 企業全体や業界全体 | 個人の業務 |
成果の測定 |
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主な事例 |
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IT化はDXを実現するための手段であり、DXの前段階の施策です。DXの事例として、DVDのレンタル事業からストリーミングサービスへとビジネスモデルを変革したNetflixの事例があります。「新規顧客獲得」「売上増加」「顧客満足度の向上」を目指すのであれば、IT化ではなくDXに取り組まなければいけません。次の章で、DXの具体的な事例について解説します。
DXの企業事例7選
ここからは、DXの事例を7つ紹介します。
- ソニー損害保険
- 日本交通
- クボタ
- ユニメイト
- トライグループ
- 長谷工コーポレーション
- スペースリー
それぞれのDX事例について詳しく解説します。
DX事例①ソニー損害保険
引用:AIを活用した運転特性連動型自動車保険「GOOD DRIVE」販売開始 | 2019年度 | ニュースリリース
ソニー損害保険は、AIを導入して自動車保険のビジネスモデルをデジタル化しました。ソニー損保の提供する自動車保険では、保険に加入している人の運転スキルや運転傾向を基に事故リスクを算出することが課題となっていたのです。この課題を解決するために、「GOOD DRIVE」と呼ばれるAIを活用したスマートフォンアプリを開発しました。
「GOOD DRIVE」は、スマートフォンのジャイロスコープや加速度計を活用して運転中のデータを収集し、このデータを基に運転者の事故リスクを算出することができます。この算出した事故リスクが低い場合には、保険料のキャッシュバックが行われます。
「GOOD DRIVE」の開発で、保険会社が事故リスクを計算できるようになった以外にも、サービス利用者もスマートフォンアプリを通じて自分の運転の評価を確認できるようになりました。
結果として、実際の事故リスクの減少効果もあるDX成功事例となりました。ソニー損保のDX事例である自動車保険のCMは以下から確認できます。
DX事例②日本交通
日本交通株式会社はタクシー事業を展開しており、DXの一環としてAIを用いた廃車予測システム「AI配車」を開発しました。日本交通株式会社では、季節や地域によるタクシーの需要の変動を把握して適切に配車を行う「稼働率」に課題を抱えていたのです。この課題を解決するために、日本交通のDX事例では交通事故や遅延、気象状況、地域、時間などの大量のデータを分析することができるシステムの開発を行い、稼働率の向上を実現しました。
また、このシステム以外にもタクシー配車アプリ「GO」を導入し、アプリ利用者がアプリ上で乗車地点とタクシー会社を選び、簡単にタクシーを呼べる仕組みも作成しました。稼働率の向上だけでなく、顧客のカスタマーエクスペリエンスも向上させた事例です。
DX事例③クボタ
引用:Kubota
久保田株式会社は、海外にも販売子会社のある食料・水・環境に関わる製品を展開している企業です。久保田株式会社では、建設機械の修理は主に現地の販売代理店が担当しているため、サポートの質が各担当者の経験や技能に左右されるという課題を抱えていました。
また、建設機械の稼働率が低下すると利用者の収益が減少してしまうので、誰でも理解しやすく、個々の能力に依存しないトラブルシューティングのサポートが必要でした。
この課題を解決するために、このDX事例である久保田株式会社では「Kubota Diagnostics」を開発しました。このアプリは、3DモデルとARを使用した故障診断アプリです。
「Kubota Diagnostics」を導入することで、建設機械が故障した時のダウンタイムを短縮するだけでなく、カスタマーサポートの業務効率の向上やサービスエンジニアの育成にもいい影響が出ると考えられているDX導入事例です。
DX事例④ユニメイト
引用:PRTIMES
株式会社ユニメイトは、レンタルユニフォーム・販売の総合ソリューションカンパニーです。今まで、レンタルユニフォームを利用するときのレンタルユニフォームのサイズは、クライアント企業の従業員自身による自己申告で決定されていました。
しかし、自己申告でユニフォームの貸し出しにはサイズミスによる返品や交換コストや労力が非常に大きいという課題を抱えていたのです。この課題を解決するために、このDX事例ではAI画像認識技術を活用した自動採寸アプリ「AI×R Tailor(エアテイラー)」を開発しました。
このアプリは、アプリ利用者の背面と側面の写真、身長、年齢、体重、性別などの基本情報から、利用者にあったサイズを示します。これにより、クライアント側のサイズ交換の作業負荷とコストを削減するだけでなく、サービスのコストを下げる効果も期待されているDX事例です。
DX事例⑤トライグループ
トライグループは、「家庭教師のトライ」などの教育事業を展開している企業です。このDX事例であるトライグループは、「Try IT」というオンライン授業サービスを開発して、試験前に効果的に学習できるシステムを提供しました。
スマートフォンやタブレットでも利用できるので、結果として会員登録数は100万人を超えるサービスとなり、特に試験前には多くの人が利用しています。
この事例は、オンライン授業に特化した新たな教育ビジネスの創出に成功したビジネスモデル創出のDX事例となります。
DX事例⑥長谷工コーポレーション
引用:長谷工コーポレーション
長谷工コーポレーションは、マンションの「設計」「施行」「管理」「リフォーム」「大規模修繕」「建替え」まで手掛ける大手ゼネコン会社です。長谷工コーポレーションは、マンション購入を検討している見込み顧客へのセールスタッチに課題を抱えていました。
そこで、このDX事例である長谷工コーポレーションは、新築分譲マンション探しを支援する「マンションFit」をLINEアプリ上で開発しました。
①家族構成
②年齢
③自宅・勤務先の最寄り駅
④世帯年収
⑤現在の居住形態
以上の簡単な質問に回答するだけでその人に合った物件がレコメンドされるサービスです。アプリ利用者が気軽に自分に合った新築マンションを探せるので顧客満足度が向上する以外にも、長谷工コーポレーションが潜在需要の掘り起こしができるという効果があったDX導入事例です。
DX事例⑦スペースリー
株式会社スペースリーは、誰でも手軽にかんたんに制作・編集・活用できる360°VRコンテンツを提供している会社です。物件探しの際には内覧することが一般的ですが、実際の物件に赴くには時間も労力もかかるので手間だと感じる人もいます。
このDX事例では、そのような課題を解決しました。「スペースリー」を利用することで、ブラウザ上から物件をVRとして内覧することができます。顧客の物件探しの時間や労力を削減しただけでなく、不動産会社の立ち合いコストも削減できたDX導入成功事例です。
DXを導入するメリット
DXを導入するメリットは以下の3つです。
- 業務効率化
- 新しいビジネスの創出
- レガシーシステムからの脱却
それぞれについて解説します。
①業務効率化
DXを導入する最大のメリットは業務効率化です。DXを導入する前の企業の多くは、紙ベースでの業務が行われていました。この業務をデジタル化することで、情報の共有、検索、分析が簡単にできるようになり、業務効率化効果があります。
また、人間が行うルーティンワークをAIやロボットプロセスオートメーション(RPA)が行うことで、人間は本質的な業務に集中することができます。先ほど解説した株式会社ユニメイトのDX事例は、業務効率化事例と言えるでしょう。
②新しいビジネスの創出
DXを導入することで新しいビジネスの創出が可能になります。例えば、IoT(Internet of Things)を活用することで物理世界のデータをデジタル化する事例もあります。
- Netflixのビジネスモデル変革事例
- Airbnbによる宿泊業界の変革事例
- Amazon Goによる小売業の再定義事例
- IBMのビジネスモデル変革事例
- UberやGrabによるタクシーサービスの変革事例
- トライグループのオンライン授業の事例
また、AIを用いることでユーザーの行動データから新しいサービスを展開することもできます。先ほど解説した日本交通のDX事例やトライグループのDX事例は、新しいビジネスの創出事例なので、参考にして組みてください。
③レガシーシステムからの脱却
DXを導入することで、企業のレガシーシステムから脱却することもできます。レガシーシステムは、古い技術やプラットフォームを使って構築されたシステムのことです。
レガシーシステムを利用し続けると運用やメンテナンスにコストがかかるという課題があります。このような課題を抱えても新しいシステムに移管することができない企業様も多いです。
DX導入としてレガシーシステムをクラウド化やマイクロサービス化することで、システムの柔軟性やスケーラビリティが向上します。結果として、新たな技術を導入するコストが下がったり、ビジネスモデルに合わせて柔軟にシステムを変更できるようになったりします。DXのメリットをもっと強く感じたい方は、DXの研修を受けられるのもおすすめです。
DXの導入事例についてまとめ
本記事では、DXの基本知識からDXの導入事例、DXを導入するメリットについて解説しました。DX導入には、業務効率化以外にもメリットがあります。「DXで新規顧客獲得をしたい」「DXで売上増加を目指したい」「DXで顧客満足度の向上を目指していきたい」という企業様は、DXを導入した事例を参考にして、DX導入を検討してみてください。
